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知られざる傑作・ピアノ協奏曲第1番


ポーランド系ドイツ人の作曲家、シャルヴェンカは19世紀を代表するヴィルトゥオーソ・ピアニストであり、ピアノ教育においても優れた業績を残した人物である。彼が書いた、ピアノ協奏曲第1番がすごい。一部、マニアックな人気のある同曲ではあるが、一般的には「マイナー曲の代表」のような知名度に甘んじている曲である。


マイナー名曲。「歴史に埋もれた名作」。「知られざる傑作」。そのフレーズがロマン派である。まだ見ぬ(聴かぬ)名曲への飢えが、マイナー名曲探求の旅へと駆り立てる。


私はピアノ協奏曲が好きなので、そのジャンルを中心に探しているのだが、マイナー名曲探索は、徒労に終わることが多い。何しろ「傑作」よりも「普通の曲」の方が膨大にあるので、時間の浪費でしかなかったこともある。ある曲が歴史に埋もれ、どうしてマイナーなままであったのか考えてみると、その理由は一言で言って「特徴が薄かったかから」ということに限る。ショパンっぽかったり、リストに似ていたりして、別に、その作曲家でなくてはならない強烈な個性が薄い場合が多い。マイナー名曲を探して聴いた後に、失望して、「別にこれを聴かなくてもよかった」という感想を抱くのが一番最悪なパターンである。


しかし、中にはとんでもない傑作を発見することがあるので、やめられない。そんなふうにして出会った、シャルヴェンカのピアノ協奏曲第1番は、率直に言って、とんでもない傑作だった。まず、特徴的なのがアルカンのピアノ曲にも比肩する技巧の高さ。そしてメロディは耳に残る美しさだ。コアなファンが多いのもわかる傑作だ。


Piano Concerto No 4

Piano Concerto No 4


全3楽章構成の曲で、主題の統一もきちんと図られていて完成度が高く、全曲にわたって、哀愁の漂う、ロマンチックな旋律の嵐で、興奮する。この感じは、ドイツ風の王道、ブラームスとも違うし、ロシアっぽいラフマニノフとも違う。基本的には重厚なんだけど、鮮やかというか軽やかというか。この舞曲風な感じは何なのだろう。


そこで思い出すのがアルベニスのピアノ協奏曲第1番だ(→アルベニスのピアノ協奏曲第1番についての記事はこちら)。こちらも甘美な旋律を特徴とするピアノ協奏曲のマイナー名曲だが、アルベニスのピアノ協奏曲がスペイン風であるのならば、シャルヴェンカの曲はポーランド風だ。ショパンの哀愁を個人的なものではなくてもう少し外面的にした感じ。


勇壮な第1楽章も、激しくまとまる最終楽章も素晴らしいが、もっとも優れているのは第2楽章だ。シャルヴェンカは中間楽章に、緩徐楽章を設けるのではなくて、やや早めのテンポのスケルツォを置く。その音楽は、諧謔とアイディアに満ちた、流麗なパッセージが、気持ち良い。こんな音楽は他に聴いたことがない。どうして歴史に埋もれてしまったのか、まったく理解できないほどの名旋律だ。


CDは種類がそれほどないのだが、これ1枚あれば足りるという名盤が残されているのが幸いだ。現代のヴィルトゥオーゾ・ピアニストである、マルク・アンドレ・アムランが至高の録音を残している。


器械的には完璧。ピアノマシンのような凄味。鮮やかな表現力はまるで鋭利な刃物のよう。一体どんな指をしているんだろう。これは人間業ではない。超人的ともいえる凄まじい技巧に、こちらは完全に置き去りにされる。


シャルヴェンカは全部で4曲のピアノ協奏曲を残している。いずれ、他の曲についても紹介してみたい。


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