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ドイツのオーケストラ・ランキング20


このブログでは過去に、『現役指揮者ランキング』、『現役ピアニストランキング』などのランキング企画をやってきた。今後も、クラシック音楽に関するランキングを様々なテーマでやりたいと思っているのだが、自己リストがなかなかまとまらず、大したペースではできていない。


今回のテーマは、『ドイツのオーケストラ・ランキング』。この企画はだいぶ前からやろうと思っていて、いったんはリスト化したのだが、各オケに関するコメントがなかなか書けなかった。一度も聴いたことがないオーケストラに対してコメントを書くのは困難だ。でもせっかくリストを作ったことだし、公開を迷っているうちに音楽監督や首席指揮者が変わってしまうこともよくあるし(ミュンヘン・フィル、シュターツカペレ・ドレスデンは変わってしまった)、オーケストラの名前だって変わることもありうるので、現時点で公開することにした。いつものように、何の権威もないランキングです。

≪選定のポイント≫
・実力、知名度、人気をもとに、最後は私見で選ぶ。
・オーケストラのカッコ内は2012年6月現在の音楽監督あるいは首席指揮者。
・CDの紹介については、そのオーケストラの音の特質がよくわかるものの中で、出来るだけ新しいものか、代表的な名盤を選んだ。


1.ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(芸術監督・首席指揮者:サイモン・ラトル


1位はベルリン・フィル。世界最高の演奏能力を持ち、いつの時代にも世界一のオーケストラの座をウィーンフィルと争っている。音の特徴としては、ドイツらしい重厚さばかりではなく、表現力が大変に豊かで、現代のトレンドを先取りするかのような最新鋭のサウンドが聴きどころ。カラヤンの頃のゴージャスなサウンドや、ラトルの捻りの効いた計算ずくの音楽作りも素晴らしいが、私はアバドが芸術監督を務めていた時代のすっきりとした響きが一番好きだったりする。



2.シュターツカペレ・ドレスデン(首席指揮者:クリスティアンティーレマン


1548年にザクセン選帝侯モリッツが創設した宮廷オーケストラが前身という、世界最古のオーケストラ。個人的には一押しのオーケストラ。世界の最高のオーケストラはシュターツカペレ・ドレスデンかもしれない。一度聴いただけで忘れられない思い出になる。骨董品のように価値があって、漆のように艶があって、絹のように滑らかな響きがある。来日公演の時のコピーに『黄金の宮廷サウンド』と書かれていた。まさにその通りの上質な音。


R.シュトラウス:アルプス交響曲、4つの最後の歌

R.シュトラウス:アルプス交響曲、4つの最後の歌


3.バイエルン放送交響楽団(首席指揮者:マリス・ヤンソンス


バイエルン放送協会所属のオーケストラ。新しいオーケストラではあるが、現在、世界でも有数の実力を持つオーケストラであると同時に、来日公演のチケットが高価なオーケストラである。実力的には、ベルリン・フィルにも引けを取らない。南ドイツらしい明るい音色を特徴とする、現代的なサウンドが、傑出した音楽センスの持ち主でありながら有能なビジネスマンでもあるヤンソンスのもとで日々鍛えられている。



4.ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団(首席指揮者:ロリン・マゼール


晩年のチェリビダッケの薫陶を受けた、素晴らしいオーケストラ。ベートーヴェンブルックナーブラームスなど、ドイツの王道に強みを発揮する。ミュンヘン・フィルのサウンドを特徴づけるとすれば、弦セクションの鍛えられた響きだろう。ものすごい精度で揃う響きには厚みがあって、艶もある。前・首席指揮者のティーレマンのように弦の扱いの巧い指揮者が振ると、あまりの美しさに夢見心地にさせられる。


ブラームス:交響曲第1番

ブラームス:交響曲第1番


5.シュターツカペレ・ベルリン音楽監督ダニエル・バレンボイム


ベルリン国立歌劇場オーケストラで。18世紀に設立されたプロイセン王立宮廷楽団として設立された、歴史のあるオーケストラ。現在、ヨーロッパを代表する、売れっ子オーケストラのうちのひとつである。そのうえ、音楽監督はやり手のバレンボイムである。


ベートーヴェン:交響曲第4番&第5番《運命》

ベートーヴェン:交響曲第4番&第5番《運命》


6.ライプツィヒ・ゲヴァントハウス(カペルマイスター:リッカルド・シャイー


1743年に創立の、世界最古のコンサートオーケストラ。このオーケストラで、メンデルスゾーンマタイ受難曲を復活させた。特徴は分厚く重々しい音色。この、時代の年輪を感じさせるような厚みのある音色に、現在のカペルマイスター、シャイーは、都会的なセンスを加えることに成功している。


ベートーヴェン:交響曲全集

ベートーヴェン:交響曲全集


7.北ドイツ放送交響楽団(首席指揮者:トーマス・ヘンゲルブロック)


ハンブルクにある、ドイツを代表するオーケストラ。ギュンター・ヴァントが首席指揮者を務めた9年間が最も幸せな時だった。この時期、モーツァルトベートーヴェンブルックナーブラームス交響曲の素晴らしい名盤を残した。北ドイツ特有のやや沈んだ、重々しい音色が特徴。ヴァントの後は、長期政権とはならずに、エッシェンバッハ、ドホナーニらが続いて、現在はヘンゲルブロックが首席指揮者を務める。


ブラームス:交響曲全集[1995年~1997年ライヴ]

ブラームス:交響曲全集[1995年~1997年ライヴ]


8.ドイツ・カンマーフィルハーモニーブレーメン音楽監督パーヴォ・ヤルヴィ


1980年にユース・オーケストラとして誕生したが、ヨーロッパ各地での公演や音楽祭への出演の成功により、常設オーケストラとなる。規模の小さい室内オーケストラだが、演奏の斬新さと注目度の高さは世界レベル。彼らが録音したベートーヴェン交響曲チクルスは、大評判となった。は当代きっての名指揮者パーヴォ・ヤルヴィのもとで、充実の時を過ごしている。


ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」&第8番

ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」&第8番


9.ベルリン・ドイツ交響楽団(首席指揮者:トゥガン・ソヒエフ


第二次大戦後、アメリカ軍による占領地の放送局のオーケストラとして設立されたが、その後、豆理科からの資金提供がなくなったのを契機に、ベルリン・ドイツ交響楽団と改称し、現在に至る。フリッチャイマゼール、シャイー、アシュケナージらが首席指揮者を務めた。


マーラー:交響曲第3番

マーラー:交響曲第3番


10.マーラー・チェンバー・オーケストラ(音楽監督ダニエル・ハーディング


創立の立役者はクラウディオ・アバド。前身はグスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラという名称で、常設オーケストラではないプロジェクトチームのような存在だったが、1997年にそのOBたちによって誕生したのが、このマーラー・チェンバー(室内)・オーケストラだ。


Symphony No 4

Symphony No 4


11.バイエルン州立歌劇場管弦楽団音楽監督ケント・ナガノ


16世紀の宮廷オーケストラを前身とする古いオーケストラで、現在もドイツを代表する歌劇場オーケストラでもある。キャンセル魔だったカルロス・クライバーとステディな関係にあり、数多くの名盤を生み出したことでも知られている。現在は知性派のケント・ナガノ音楽監督を務めている。


ベートーヴェン:交響曲第4番 [Import]

ベートーヴェン:交響曲第4番 [Import]


12.Hr交響楽団(首席指揮者:パーヴォ・ヤルヴィ


最近までフランクフルト放送交響楽団と称していたため、そちらの名称の方になじみがある。はまったときにはベルリン・フィルに並ぶ演奏能力を持っている。フランクフルトは、東西ドイツ統一まで、経済と金融の中心地であった。そんなこともあるのか、ベルリン・フィルやシュターツカペレ・ドレスデンなどの超一流オケではないHr響に、都市の持力というものを感じる。現在、パーヴォ・ヤルヴィがこのオーケストラと勢力的に仕事をしているが、エアリフ・インバルの時代もすごかった。実はインバル時代が黄金期だったのかもしれない。


ブルックナー:交響曲第7番

ブルックナー:交響曲第7番


13.シュトゥットガルト放送交響楽団(首席指揮者:ステファヌ・ドヌーヴ)


過去には、チェリビダッケネヴィル・マリナーなどの偉大な指揮者が首席を務めた。オーケストラを大きく変えたのは前・首席指揮者の才人ロジャー・ノリントンだ。ノリントンはオーケストラに対し、モダン楽器によるピリオド奏法を徹底した。ベートーヴェン交響曲全集を録音したのを皮切りに、そのスタイルをロマン派以降の作曲家にまで拡大していった。このアプローチによるチャイコフスキーマーラーブルックナーは、いままで聴いたことがないようなほどの澄んだ響きで、他の演奏とは全く違う、新しい地平を切り開いた。



14.ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団(首席指揮者:イヴァン・フィッシャー)


ベルリンを拠点とする世界的オーケストラとしては、ベルリン・フィル、ベルリン・ドイツ、シュターツカペレ・ベルリン、ベルリン放送響、そしてこのベルリン・コンツェルトハウス管を加え、5団体が存在する。前身は旧東ドイツの『ベルリン交響楽団』。余談だが、現在のベルリンにも『ベルリン交響楽団』という名称の団体があるので大変紛らわしい(首席指揮者:リオール・シャンバダール)。東ドイツ出身の巨匠・クルト・ザンデルリンクが長く首席指揮者を務めた。



15.ドレスデンフィルハーモニー管弦楽団音楽監督・首席指揮者:ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス)


1870年に最初のコンサートを開いた。同じように深みのある音色のシュターツカペレ・ドレスデンと比べても、時代に取り残されたかのような、骨董品のような響きはドレスデン・フィルの方に強く残っているかもしれない。各国のオーケストラにインターナショナル化の波が来ても、ドレスデン・フィルのサウンドはいつまでたっても昔のままだ。一向に洗練されないこの重厚なサウンドは一聴の価値がある。


Syms 1/3

Syms 1/3


16.南西ドイツ放送交響楽団(首席指揮者:シルヴァン・カンブルラン)


南西ドイツ放送所属のオーケストラ。現代音楽を得意としており、首席指揮者の人選でも現代音楽を振れる指揮者がついている。ミヒャエル・ギーレンによるブルックナーブラームスはこのオーケストラの鋭利な特質がよく出ている。


Gielen Conducts Mahler Symphonies 1-9

Gielen Conducts Mahler Symphonies 1-9


17.WDR交響楽団(ケルン放送交響楽団)(首席指揮者:ユッカ=ペッカ・サラステ


ケルンに本拠を置く西ドイツ放送局所属のオーケストラ。ドホナーニ、ズネニェク・マカール、ベルティーニら過去の首席指揮者の中に、日本人の若杉弘を見つけることができる。


シベリウス:ヴァイオリン協奏曲

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲


18.MDR交響楽団音楽監督:準・メルクル)


ライプツィヒに本拠を置く中部ドイツ放送協会(MDR)所属オーケストラ。前身であるライプツィヒ放送交響楽団ライプツィヒ放送フィルが合併して設立。ハインツ・レーグナーやヘルベルト・ケーゲルなどの旧東ドイツの名指揮者が演奏に熱狂的なファンも多い。


ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」

ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」


19.ザールブリュッケンカイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団(首席指揮者:カレル・マーク・チチョン)


前身であるザールブリュッケン放送響は戦前の創立だが、2007年に合併して現在の名称となる。日本でもおなじみのミスターSこと、スクロヴァチェフスキがきわめて真っ当なドイツ音楽を聴かせてくれたことで、日本人にとって親しみを持てるオーケストラのうちの一つだ。


ベートーヴェン:交響曲全集

ベートーヴェン:交響曲全集


20.バンベルク交響楽団(首席指揮者:ジョナサン・ノット


1946年、ドイツの敗戦により行き場を失ったプラハ・ドイツ・フィルハーモニーを中心に結成された、バンベルクを拠点とするオーケストラ。巨匠オイゲン・ヨッフムが晩年を共にしたオーケストラであり、このコンビによる録音が多数残されている。



以下は次点。


・ベルリン放送交響楽団音楽監督:マレク・ヤノフスキ)

・ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団音楽監督マルクス・シュテンツ)

ハンブルク交響楽団(首席指揮者:ジェフリー・テイト

ハンブルク・フィルハーモニカー(音楽監督シモーネ・ヤング

・ヴッパタール交響楽団(音楽総監督:上岡敏之

ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団(首席指揮者:エイヴィン・グルベルグ=イェンセン


ハンブルク・フィルの音楽監督シモーネ・ヤングは女性指揮者で、ブルックナー原典版を取り上げたりと、意欲的だ。ヴッパタール響の上岡敏之は、来日公演できわめてテンポの遅いブルックナーを披露し話題となった。ハノーファー北ドイツ放送フィルは、大植英次が終身名誉指揮者を務めていることでも知られる。ここに挙げた以外にも聴き逃せないオーケストラがドイツにはたくさんある。