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ビル・エヴァンス『ライブ・アット・トップ・オブ・ザ・ゲイト』


ビル・エヴァンスの新しいアルバムをAmazonで注文していたのが、先日やっと届いた。30年も前に死んだジャズ・ピアニストの新しい録音が発掘されるあたり、このピアニストの衰えない人気を物語っている。


ライブ・アット・トップ・オブ・ザ・ゲイト (Live at Top of the Gate) [2CD] [日本語帯・解説付/輸入盤]

ライブ・アット・トップ・オブ・ザ・ゲイト (Live at Top of the Gate) [2CD] [日本語帯・解説付/輸入盤]


ビル・エヴァンスは1980年に死んだ、おそらく史上最も人気のあるジャズ・ピアニストで、演奏スタイルは端正かつ内省的で、メロディはリリカル。親しみやすい音楽でありながら、やっていることは異様に深い。私がジャズを聴き始めた頃、2番目に買ったジャズのアルバムが『ワルツ・フォー・デビー』というCDだったし、ジャズから遠のいてクラシック音楽の深みにはまった時期、再びジャズも聴き出した時、これまで一貫して、ずっと鑑賞の中心に位置しているアーティストである。


ビル・エヴァンスの良さを一言でいうと、「入りやすく深い」ということに尽きる。ジャズの入門からマニアまで、夢中になり得るし、相当なマニアになっても、予測の一歩先を行くコード進行やありえない和音に唸る。


そのビル・エヴァンスの新しいアルバムというのは『トップ・オブ・ザ・ゲイト』というアルバムで、1968年10月23日にニューヨークのクラブ「トップ・オブ・ザ・ゲイト」で行われたライブを音源としている。全部で2回のセッションが、曲の進行順もそのままに2枚組のCDに収録されている。昔の音源であるというのが信じられないほど、音質はよく、生々しい。


私は、このアルバムの、1曲目の『エミリー』の最初の数音を聴いただけで、すっかり心を奪われてしまった。変わらないビル・エヴァンス。「リリシズム」という言葉の意味をよく知りたかったら、ビル・エヴァンスのピアノを聴いたら良い。どんな辞書よりも真に迫った解釈を実感できるはずだ。なんてね。それにしても、どうしたらこんなに愛おしい音が出せるんだろう。


『ラウンド・ミッドナイト』の暗さ。『マイ・ファニー・バレンタイン』の内省的な表現。


『ゴーン・ウィズ・ザ・ウィンド(風と共に去りぬ)』で、ずたずたに分解されたように見えながら実はしっかりと収斂する展開は、キュビズムの絵画を見るようだ。


当夜のセカンド・セットでは、よりリラックスした雰囲気で、親密な音楽を聴くことができる。ファースト・セットでも披露した『エミリー』はより緩いが、アドリブはさらに自由自在だ。そしてシャンソンの名曲にしてジャズの不朽のスタンダードナンバー『枯葉』を聴くことができる。『サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム(いつか王子様が)』は、ぐいぐい引っ張るエヴァンスが頼もしい。強面な一面も見せる。


死後30年以上も経っているのに、まさかこんなに素晴らしいアルバムに新たに出会えるとは想像できなかったので、テンションが上がっている。


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