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ルガンスキー&サカリ・オラモのP協奏曲全集


ラフマニノフのピアノ協奏曲は全部で4曲ある。叙情的で甘く、ドラマチックな名曲揃いで、それぞれが特徴的でキャラが立っており、ピアノ協奏曲というジャンルにおける傑作だ。クラシック音楽ファン以外にも聴いて欲しい作品である。


私は、クラシック音楽を聴き始めた頃は、2番が圧倒的に好きだったが、そのあと、4番、1番、3番という順番で好きになり、いまではどれも同じくらい好きな曲だ。つくづく、素晴らしい曲ばかりだと思う。


今回紹介するのは、ロシアのピアニスト、ニコライ・ルガンスキーソリストに迎えたピアノ協奏曲全集である。全集セットというのが最近では珍しい。素晴らしい出来栄えの演奏で、揃えておいて損のない全集である。


Rachmaninov: Piano Concerto 1-4 Paganini Rhapsody

Rachmaninov: Piano Concerto 1-4 Paganini Rhapsody


ルガンスキーの繊細なタッチと高度な技巧によって描き出される立体的な造形が見事。緻密に細部まで描き出す。本当に巧いピアニストだ。さらに彼はロシア人である。ラフマニノフをロシアのピアニストが演奏すると聞くと、期待は高まる。ルガンスキーはそんな期待ににこたえる。繊細なテクニックとスケール感。ロシアン・ピアニズムの正統的な継承者と納得させる快演。


指揮とオーケストラも素晴らしい。オラモの丁寧な音楽づくりが随所に出ている。歌うところではテンポをグッと落とし、意外にも感情過多でポエティックだ。まるでベートーヴェン交響曲を演奏するような気持ちの入れ込みようで、バーミンガム市響の実直な響きに彩りを与えている。


第1番。チャイコフスキー的な痛快な作品、若さの発露と、粋なオーケストレーション、メロディの爆発が肝。ラフマニノフが、生涯、仮にこの曲1曲だけしかピアノ協奏曲を残さなかったとしても、ピアノ協奏曲の名曲の書き手として記憶されただろう。


第2番。ベートーヴェンの『皇帝』や、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番と並んで、もっとも有名なピアノ協奏曲かもしれない。雄大な自然を感じさせる名曲で、トルストイの長編小説のように壮大な作品。厳かな自然や、甘美な青春のように、クラシックの取っつきにくさから甘さまで、触れ幅は最大で、ギャップが激しく、訪れる感動もすごい。長いので、聴き終えた後の満足度も高い。


第3番。2番に次いで有名な名曲。夏に飲むラガー・ビールのように爽快。4曲のなかでは一番長いが飽きさせない。こいうったテクニカルな曲を巧いピアニストで聴く幸せは何物にも代えがたい。


第4番。一般的な知名度は低いが、はまる人はとことんはまるだろうなという曲。切ない名曲だ。ラフマニノフの熟達したオーケストレーションを最新の素晴らしい録音で聴けるのは嬉しい。


この全集には、ピアノ入りの管弦楽曲として、「パガニーニの主題による狂詩曲」も収録されている。4曲のピアノ協奏曲と並ぶ名演だ。さらには、「コレッリの主題による変奏曲」、「ショパンの主題による変奏曲」といったピアノ独奏曲も収録されている。


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