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バレンボイムのブラームス交響曲全集


9月も上旬が過ぎたというのに、日中は30度を超え、暦上での秋を少しも実感できない毎日が続いている。暑い。それでも朝方は日差しが弱まり、真夏の朝通勤のために乗り込んだ車のシートに体を収めたときに感じたような、むっとするような熱気がなくなってくることに気付くと、いよいよ、遠くない秋の訪れを予感する。


真夏向きのクラシック音楽というのもあるにはあるはずだが、音楽祭や野外コンサートを除けば、クラシック音楽にとって、夏はオフシーズンだ。秋から冬にかけて楽しむ娯楽・文化という気がする。


秋になって、私が一番聴きたい作曲家はブラームスだ。木の葉が落ちる寂しい曇天の日に、ひとりで聴きたいと強く願う。ブラームスの音楽は分厚く、しかも暗い情熱(欲望)が潜んでいるので、夏にはあまり聴きたいとは思わない。好きな作曲家だから、もっとも似合うシーズンに聴きたいと思う。それが秋だ。(秋が深まり冬になると今度はシベリウスを聴きたくなる。)ブラームスの似合う季節が近づいている。


ブラームス:交響曲全集

ブラームス:交響曲全集


バレンボイムとシカゴ響による交響曲全集は1曲1曲を見ていくと、ブラームス交響曲としてベストの演奏とは思わないが、全体としてみれば、レベルも高く、安心して聴くことができる全集だと思う。ずいぶん前に買ったCDだが、いまでも時々聴いている。


この演奏をひと言でいうと、「フィナーレを盛り上げる」わかりやすい音楽作り。テンポ設定以外には奇をてらったところがなく、楽器をきちんと鳴らし、クライマックスではテンポを速めて聴き手の興奮を呼び起こす。一定しない大胆なテンポ設定については、指揮者の意図と聴き手の期待が一致すれば最高なのだが、いつもそうなるわけではなく、そんなときには違和感を感じる。しかしシカゴ響の圧倒的な演奏能力によって描き出されるブラームスの巨大な音の建造物の前には、そうした懸念はどうでもよくなってくる。


どの曲の演奏もレベルが高いが、今は1番の出来が傑出しているように思う。この曲ではシャルル・ミュンシュとパリ管による名盤がとくに有名だが、雰囲気が似ている。2番は唯一、夏にも聴ける交響曲だと思っている。ブラームスの4曲の交響曲の中に2番があるのは大きい。偉大なベートーヴェンの影に怯え最初の交響曲を書くまでに長い年月をかけたブラームスが憑き物がとれたみたいに短期間で書き上げた名曲。ポジティブなメッセージに溢れており、私は一番好きだ。3番と4番は甲乙つけがたい。3番はよく歌うことで、この名曲の哀愁に満ちた美しさを描き出す。4番は第3楽章のパッサカリアが凄い熱演。手に汗を握る演奏だ。


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