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アラウの『悲愴』・『月光』・『熱情』


昔買って飽きるほど聴いたCDがある。そのCDを久しぶりに聴いてみようと思って、手に取った。たぶん5年は聴いていない。そのCDとは、クラウディオ・アラウによるベートーヴェンピアノソナタ集だった。


ベートーヴェン:「悲愴」

ベートーヴェン:「悲愴」


ほんの軽い気持ちだったが、まるで魂を持っていかれたかのように、やられてしまった。こんなに凄い演奏だったのか。通勤の車中、興奮した。


このCDには『悲愴』、『月光』、『熱情』の三大ピアノソナタに『テレーゼ』を加えた4つのピアノソナタが収録されている。


堂々としたテンポ設定に、よく響く力強い和音。小賢しさはどこにもない。飾り気もない、王道の演奏がそこにはあった。この、20世紀のはじめの方から終わりのころまで長く生きたチリ出身のピアニストから聴かれるのは、ドイツ人よりもドイツ人らしい、正統派のドイツの響きだった。教養小説のような格調の高さと、リスト直系の確かなテクニック。私は『悲愴』に泣き、『月光』の世界観に浸り、『熱情』に圧倒された。『テレーゼ』は非常にエレガントだ。この久しぶりに聴いた演奏で、ベートーヴェンピアノソナタの素晴らしさを再確認した。ベートーヴェンはこんなにも偉大で誇り高い音楽を書いたのか。


アラウが死んでから20年以上が経つが、現在、これほど立派なベートーヴェンを弾くピアニストが他にいるだろうかと考えて、しばらく考え込んでしまった。それくらいのレベルにある。


私自身、最近、ほとんどアラウを聴くことはなかった。現役バリバリの人気ピアニストに比べれば、おそらくCDもそれほど売れていないだろう。しかし本当に素晴らしい演奏は歴史を超える。本物の芸術は普遍的なものだ。アラウによるベートーヴェンピアノソナタ集を聴いてそんなことを思った。


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