USHINABE SQUARE

クラシック名盤・名曲と消費 生活 趣味

小澤征爾・奇蹟のニューヨーク・ライヴII


このCDに収録されているのは、2010年12月のサイトウ・キネン・オーケストラによるニューヨーク公演の二日目に演奏された『幻想交響曲』だ。先日、このブログで書いたブラームス交響曲第1番に続く、第二夜の演奏である(→小澤征爾・奇蹟のニューヨークライブⅠ)。


奇蹟のニューヨーク・ライヴII ベルリオーズ:幻想交響曲

奇蹟のニューヨーク・ライヴII ベルリオーズ:幻想交響曲


この演奏を、一言でいうと実直な演奏である。緻密な楽譜の読みに基づいた、大変に見通しの良い音楽づくりで、奇を衒ったところがなく適度に抑制が効いていて、この変態的な『幻想交響曲』をよくもここまで「模範的」で優等生的に仕上げたものだと感嘆するような演奏となっている。


聴く前は、いわば復活公演となったこの特別な舞台もあって、なんとなく凄絶な演奏を想像してしまうが、この演奏を聴く限りでは、そういうものは薄い。もちろん、いつもにプラスアルファして気持ちが入り特別な燃焼を見せているののだが、それ以上に感じるのは、全盛期同様のパフォーマンスを発揮する指揮者と、一流のオーケストラが、複雑怪奇な曲を巧みに料理していくプロフェッショナルな仕事ぶりだ。音の厚みに線の細さをやや感じるものの、最初から最後まで丁寧で一切の手抜きのない、巧くて安定感のある音楽の運びを実感できる。


過去の名盤と比べてみると、この曲ではシャルル・ミュンシュによる名盤が良く知られていて、その名盤では曲と心中するかのような憑かれた演奏だったが、小澤さんとサイトウキネン・オーケストラのこの演奏はそういったタイプの演奏ではない。しかし、スタンダードな熱演として、変な癖もなく、きわめて流れの良い音楽となっている本録音は、はじめてこの曲を聴く人に対しても安心してお勧めできる内容となっている。


人気ブログランキングへ
ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村 クラシックブログへにほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へにほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ