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ショスタコーヴィチ再入門


井上道義さんとサンクトペテルブルク響のショスタコーヴィチの演奏会を聴いて以来、ショスタコーヴィチの音楽が頭から離れない。


私は昔、クラシック音楽を聴きはじめたすぐ後にショスタコーヴィチに夢中になったが、その後、ベートーヴェンブルックナーなどの、ドイツ・オーストリアクラシック音楽を聴くようになって、ショスタコーヴィチから離れてしまっていた。井上道義さんはショスタコーヴィチの魅力について「複雑なところ」とインタビュー記事で明快に答えていた。先日の演奏会後のスピーチでは、「昔は嫌だなあと思っていたが、なぜか夢中になった」とマイクを握りしめた。その後、全曲演奏会という破天荒なプロジェクトを成功させるまで至り、いまでは彼のプログラムの中心にある。


クラシック音楽を聴き始めたころ、私は、ショスタコーヴィチの作品に特有の独特で謎めいたメロディが好きだった。


そこで今夜のブログは、これからショスタコーヴィチを聴いてみたいという人のことも意識しながら、過去に夢中になった楽曲を紹介し、これから聴いてみたい曲を挙げることで、再びショスタコーヴィチに接近していく自分の記録としたい。


■舞台管弦楽のための組曲(ジャズ音楽集)


私が最初に夢中になったように、ショスタコーヴィチの入門にはまずこの音楽が良いと思う。 理由は「聴きやすい」点。ジャズ 音楽集としてCDが発売されている。舞台管弦楽のための組曲の第2ワルツは映画『アイズ・ワイド・シャット』でもテーマ曲として使用されたポピュラーな楽曲で、哀愁漂う名曲である。哀愁の漂う曲でありながら、この曲を際立たせているのは、知的で謎めいている点だ。ショスタコーヴィチの作曲家としてのポテンシャルの異様な高さを物語る名曲である。


ショスタコーヴィチ:ジャズ音楽集

ショスタコーヴィチ:ジャズ音楽集


交響曲第7番


2番目に聴くなら、交響曲が良い。ショスタコーヴィチ交響曲を初めて聴くなら、もっともポピュラーな5番ではなくて、7番が良いと思う。圧倒的な音の洪水に溺れる。今回、7番をもう一度聴いてみて、改めて、凄まじい曲だと思った。この密度の音楽。普通ではない。芸術にとって当り前なことが保障されない体制、自由に作品を書くことが許されないソ連という特殊な環境で、こんな巨大な作品を書いたショスタコーヴィチは異才という他ない。


ショスタコーヴィチ:交響曲第7番

ショスタコーヴィチ:交響曲第7番


交響曲第5番


もちろん5番も素晴らしい。日本では時に『革命』という標題で呼ばれるが、この「革命」というはまったく根拠のない標題で、この名前を聴くと、違和感がすごい。そんな標題で呼ばないでほしいと個人的に思っているが、そんな私の違和感に配慮することなく、かなり頻繁に使用されている。



弦楽四重奏曲


かなりディープである。音楽史的にはベートーヴェンの同ジャンルと並ぶ傑作とされている。はっきり言ってとっつき辛い。難解であるがテンションは異常に高い。私も挑戦したが、作品群の輪郭すらつかめていない。しかし無人島にひとつ持っていくなら、案外こういうCDなのかもしれない。これから末永く付き合っていきたい。


Shostakovich The String Quartets : Emasrson String Quartet

Shostakovich The String Quartets : Emasrson String Quartet


■ヴァイオリン協奏曲第1番


ヴァイオリン協奏曲の傑作のうちの一つ。ベートーヴェンブラームスのヴァイオリン協奏曲とは全く違った匂いを放つ傑作。超絶技巧を要する難曲だが、それが癖になる。例えば、ヒラリー・ハーンのような優れたヴァイオリニストが弾くと、一流アスリートの人間離れした身体能力を目にするような感じがする。


メンデルスゾーン&ブラームス:ヴァイオリン協奏曲

メンデルスゾーン&ブラームス:ヴァイオリン協奏曲


交響曲4番


7番や5番に次いでポピュラーなのは10番だが、4番がすごい。音的には7番のような感じだが、メッセージはもっと不可解で、マーラー的にドロドロした魑魅魍魎の世界。4番がマーラー的で、5番がベートーヴェン的。6番は「田園」的。7番は音の洪水で、8番は深刻。まっすぐ進化していないところがショスタコーヴィチの魅力の一つであると最近思っている。


ショスタコーヴィチ:交響曲第4番

ショスタコーヴィチ:交響曲第4番


交響曲全集


ショスタコーヴィチ交響曲は、5番のようにポピュラーな曲がある一方で、とっつき難いものが多い。15番などは最後の交響曲にふさわしく凄い曲だが、聴きやすい曲とは言えない。また、声楽入りの1113〜14番などもそうで、メッセージ性が強く、そのメッセージというのもソ連体制下で書かれたものなので、21世紀に生きる私はこの辺りは、いままで敬遠してきた。しかし聴かずに済ますのは勿体ない。現時点での私のショスタコーヴィチ再入門はこのあたりである。全集は様々な指揮者が取り組んでいる。きっと聴き飽きることはない。一生ものだ。


ショスタコーヴィチ:交響曲全集 (Shostakovish: Symphonies)

ショスタコーヴィチ:交響曲全集 (Shostakovish: Symphonies)

Shostakovich Complete Symphonies

Shostakovich Complete Symphonies

  • アーティスト: London Philharmonic Orchestra,Vienna Philharmonic Orchestra,Dmitry Shostakovich,Mariss Jansons,Berlin Philharmonic Orchestra,Philadelphia Orchestra,Bavarian Radio Symphony Orchestra,Oslo Philharmonic Orchestra,St Petersburg Philharmonic Orchestra,Pittsburgh Symphony Orchestra,Larissa Gogolewskaja,Bavarian Radio Male Chorus,Bavarian Radio Chorus
  • 出版社/メーカー: EMI Classics
  • 発売日: 2006/06/29
  • メディア: CD
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ショスタコーヴィチ:交響曲全集

ショスタコーヴィチ:交響曲全集


■その他の名曲について


あとは、ピアノ協奏曲第1番、チェロ協奏曲(2曲)、オペラ『ムツェンスク郡のマクベス夫人』が著名だが、私はほとんど知らない。弦楽四重奏交響曲全集を聴き終えたら、そのあたりに取り組んでみたいと考えている。


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