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イヴァン・フィッシャー&ブダペスト祝祭管の9番『新世界より』と8番


クラシック音楽をはじめて聴き始めた中学生の時、「楽友」(注・音楽を一緒にやっていた仲間ではない/クラシック音楽のカセットテープを貸し借りしていた友達)が遊びに来た時に持ってきた『新世界より』。その曲を聴いたとき、「世の中にはこんなに勇ましくも美しい音楽が存在するのか」と思い、魂を持っていかれたようになった。同じような音楽体験としては、私はチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を初めて聴いたとき、「なんて素晴らしい曲なんだ」と思ったが、『新世界より』も相当にそう思った。


この曲は、第一楽章から激しく、途中には中学生の身近な「遠き山に日は落ちて」のメロディも入っていたし、フィナーレはメランコリックな中に勇敢な盛り上がりがあって、一度にこの曲のファンになった。


その後、クラシック音楽から離れ、いろいろな音楽を聴き、ジャズにハマり、サラリーマンになって再びクラシック音楽に夢中になった時、『新世界より』も当然聴いたが、そのときは既に飽きていた。しかしその後、何回かコンサートでの聴き、様々な録音を聴き比べるようになって、「本当に良い曲だ」と思っている。今でも時々聴く。


そんな多数の録音の中、私の中で燦然と輝いているのがこちらのCDだ。それはウィーン・フィルでもベルリン・フィルでもなく、ハンガリーのオーケストラによるものだ。


ドヴォルザーク:交響曲第8番&第9番

ドヴォルザーク:交響曲第8番&第9番


ブダペスト祝祭管弦楽団は、古い団体の多いオーケストラ界のなかでは新しい団体で1983年設立の民間のオーケストラである。ハンガリー人の指揮者のイヴァン・フィッシャーが設立し、現在も音楽監督を務めている。演奏のレベルは非常に高く、実力的にはヨーロッパのオーケストラの中でもトップレベルである。特色は、ソリスト級の奏者を揃えている点で、そういう点でいうと、日本のサイトウキネン・オーケストラと近い。ただしサイトウキネンと違い、常設オケである。


中欧には、全盛期にはウィーン・フィルと並ぶと言われたチェコ・フィルを筆頭に、各国に伝統あるメジャー・オーケストラがあり、ハンガリーにも国立オーケストラがあるが、21世紀のトップレベルのオーケストラというと、昇り調子でもあり、ブダペスト祝祭管がまず筆頭に上がる。音楽監督のイヴァン・フィッシャーがやり手で才能もあり、演奏レベルの非常に高いモダンでスマートなオーケストラという印象を私は抱いている。たびたび来日しているが、私は予定が合わず、まだ聴いたことがない。


そんなブダペスト祝祭管のドヴォルザークの『新世界より』は、まず音楽との距離感が良い。近い国だがお国ものではないだけに、少し客観的な臨み方で、力の出し入れが絶妙で、センスを感じる演奏となっている。あっさり気味の音色ながら、縦の線がきれいに揃っている精度の高い演奏で、雰囲気重視ではなく、これはリアリズムの演奏で、ドボルザークの感じた望郷の気持ちが鮮明に伝わってくる。


特筆すべき点は、若さが迸るような溌剌とした演奏となっている点である。まるで初めて弾く曲のように、聴き手にとっては初めて聴く曲のように新鮮である。こういうところがあるから、このオーケストラのファンになってしまう。


8番も『新世界より』に負けない内容だ。完全燃焼。何度も繰り返し聴きたい。この調子で7番も録音してくれたら良かったのにと思う。


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