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サンクトペテルブルク・フィル大阪公演


サンクトペテルブルク・フィルの演奏会に行ってきた。満員ではなかったが、かなりの席が埋まっていた。

サンクトペテルブルグフィルハーモニー交響楽団・大阪公演

指揮:ユーリ・テミルカーノフ
ヴァイオリン:庄司紗矢香
管弦楽サンクトペテルブルグフィルハーモニー交響楽団

日時:2014年1月25日(土) 14:00 開演 13:00 開場
会場:ザ・シンフォニーホール

プログラム:
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
チャイコフスキー交響曲第4番


まずは前半。万雷の拍手に迎えられマエストロが登場する。すっかりおじいちゃんになっているが、眼光の鋭さは隠せないし、威厳たっぷりだ。そして振り下ろされる拳に呼応して(テミルカーノフは指揮棒を持たない)、最初の音が鳴り響いたとき、私は、「今日、来てよかった」と思った。地を這うような分厚い和音。この膨大な音の情報量はCDでは聴けない。


ソリストには庄司紗矢香さんが登場する。日本人ヴァイオリニストは世界的に活躍している人がたくさんいるが、いま現在の実力では庄司さんがトップではないだろうか。しかしそんな「日本人云々」は、クラシック音楽の本場で第一線で活躍しているヴァイオリニストに対して、失礼な話だったかもしれない。私が生で聴くのは、数年ぶりにもなるが、この充実ぶりは一体どうしたことだろうか。技巧の素晴らしさ、音色、ライブ感、3拍子揃った熱演だった。神童から大人へ、本物の芸術家だ。見事なヴァイオリンだった。圧倒的な演奏に接することができて、幸せな時間だった。第1楽章が終わったところで一部の観客が拍手をしてしまうハプニングもあったが、確かにあの燃焼ぶりを見たら、その気持ちを理解できないでもない。協奏曲というジャンルは、ソリストの充実(日頃の研鑽と当日のパフォーマンス)とオーケストラとのコンビネーション、体調、団員のモチベーション、また観客席の雰囲気、いろいろなものが当日の出来に作用するが、考えられる限りベストだった。終わった後は、本人も指揮者も大いに満足した表情をしていた。庄司さんのアンコールに、団員が目を閉じて聴き浸っている様子が印象的だった。


前半の興奮冷めやらぬまま、休憩を挟んで後半を迎える。今日は後半もチャイコフスキー・プログラムだ。傑作の森である後期交響曲の最初の曲、交響曲第4番だ。この曲ほど、録音に比べて生で聴く価値の高い曲はきっとそれほど多くない。第1楽章は深刻で、第2楽章はとても美しい。そして弦セクションが全部ピチカートで弾く第3楽章の面白さ。第4楽章の弾けぶり。私は5番が最も好きだが、ライブでは4番も相当楽しみなプログラムだ。


そしてその演奏は、相当なものだった。まず、金管の迫力は、これは国内のオーケストラでは聴けないレベルだ。威圧的で恐ろしい迫力だった。こういう普段できない体験ができるから、有力な海外オーケストラの来日公演には足を運びたいと思う(のだが、チケットが高価だったり、予定が合わなかったりしてよく断念する)。


テミルカーノフの音楽作りは、「楽譜に忠実で実直」というものではなく、テンポも自在にコントロールする「柔軟な」音楽作りで、ライブを得意とする指揮者ならではのものだった。指揮棒を持たずに、体の動きと、左右の手の動き、左手の指の繊細な動きで、オーケストラを掌握する。


オーケストラのサウンドも、器用で透明感のある音色や最近のオーケストラのトレンドとは一線を画した、いかにも伝統的なチャイコフスキーで、逆にそれが新鮮だった。特に、第4楽章のフィナーレでは燃えた。火花が散るような激しさで、それを束ねるマエストロはまさに豪腕。私は、久しぶりに襲われた音の洪水に、今でも頭がクラクラする。凄い演奏だった。


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