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ダニール・トリフォノフのショパン


佐村河内氏の事件が世間を騒がせているが、もうこういった嘘に付き合うのはこりごりである。クラシック音楽というジャンルにはモーツァルトをはじめ本物の天才作曲家がたくさんいる。天才肌の演奏家がたくさんいる。そういうものを聴いていきたいと思う。


ダニール・トリフォノフも天性の才能を持つピアニストだ。彼のショパンは凄い。これは聴く価値がある。


Mazurkas Op 56/Nocturne in

Mazurkas Op 56/Nocturne in


このアルバムは2010年のショパン国際ピアノコンクールのライブ音源で、プログラムのすべてが収録されているわけではないが、トリフォノフの良さを味わえるのに十分な量の演奏が収録されている。コンクールでトリフォノフは、イタリアのファツィオーリのピアノを使用したことでも話題となった。ファツィオーリというメーカーは1981年創業と、ピアノ製造の歴史は浅いが、第4ペダルを設置するなど独自の発明を行い、熟練した職人が手作業で造っている。新興メーカーながら現在では高級メーカーとして知られている。


最初の曲である「エチュード(Op.10-8)」を聴いたとき、このピアニストは只者ではないと感じた。もの凄い指の動きで、抜群に巧いピアニストだということがわかる。変な話だが、プロのピアニストにも巧いピアニストとそれほど巧くないピアニストがいて、巧くなくても立派な音楽をするピアニストもいるのだが、トリフォノフは明らかに前者。若くて巧い人はたくさんいるが、それにしても巧い。しかもそれでいてテクニック偏重を感じさせない個性がある。彼の作品への没入ぶりは普通でなくて、ある種の狂気が見える。トリフォノフの気持ちにシンクロして、私も作品に酔うように、のめり込む。


「ワルツ(Op.18)」も只者ではない。私はこの曲に飽きているが、この演奏は新鮮だった。


スケルツォ」の3番(Op.39)もかなりの出来だ。この繊細なタッチから大胆で豪快な音楽が生まれていく。


「アンダンテスピアナートと華麗なる大ポロネーズ」はこのプログラムの中の白眉だ。若いショパンが書いた傑作は、若いピアニストの演奏で聴くのに最適な曲で、私はこの曲ばかり何度も繰り返し聴いている。キラキラ光るタッチ。瑞々しい。最高の演奏で、聴衆の拍手も収録されている。奇跡のような演奏に巡り合えた興奮が感じられる。


CD全体を通してみれば、ごくたまにミスタッチが見られ、巧いのにどうしてと思うのだが、おそらく指が回りすぎるのだろう。しかしこれほど愉悦に富んでいて新鮮なショパンは初めてだった。審査員のアルゲリッチが称賛したのも納得できるパフォーマンスだ。最終的な順位は3位という結果だったが、その時彼はまだ19歳だった。今後の伸びしろという点で言っても、聴衆を沸かせたスター性という点で言っても大成功の舞台だった。翌年、トリフォノフチャイコフスキー国際コンクールの覇者となった。


トリフォノフ・プレイズ・ショパン

トリフォノフ・プレイズ・ショパン


こちらもライブ録音。コンクールライブCDに比べ音質がシャープになっているが、ファツィオーリの豊かな音色はきちんと収録されている。コンクールのCDは品薄で店によってはなかなか手に入らないので、こちらもおすすめだ。


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