熊野三山の旅(2)
普段は朝起きるのが辛いのに、休みや旅行中はどうしてこんなに早く目覚めるのだろうか。しかも体が軽く、目覚めると同時に頭も回転している。不思議だ。
旅館やホテルでは食べきれないくらいの朝食が出る。食べられるだけでやめておけばよいのに、出されたものは大体食べてしまう。「干物バイキング」が珍しくて、ほとんどの種類の干物を炙る。おかずもつまみになりそうなものばかり。朝から一杯やりたいくらいだった。朝食から普通にマグロがあるのが那智勝浦町らしい。
■大門坂駐車場〜大門坂
ホテルをチェックアウトして、那智大社の方に向かい、大門坂の手前にある、大門坂駐車場まで車で行った。熊野那智大社へは車ですぐ近くまで行くことができるが、「神社に横付けして」サッと参拝だけして帰るというのもあまりに味気ない。子供が小さいので沢山は歩けないが、熊野古道を少しは歩いてみたかった。特に大門坂は熊野古道のハイライトである。
大門坂を歩く場合、大門坂駐車場から、熊野那智大社の参道の入り口まで約一キロ。石段の数は全部で257段。257段というとそれほどでもないが、傾斜がかなり急で、また古道の名の通り石段も整備されたものではない。しかも苔むしており滑りそうになるので距離以上に大変だった。単純に石段の数で比べると、室生寺に比べて少ないが、真夏日でしかもカンカン照りだったため、室生寺に行った時よりもずいぶん消耗した。真夏だったため、歩いている人も少なかった。夏休み期間中というのに、大門坂には子供の姿がなかった。やはりそれなりにハードなのかもしれない。あるいは、子供と一緒に熊野古道を歩くということ自体がマイナーなレジャーなのかもしれない。歩いている子供は私のところ以外には誰もいなかった。
写真を撮る余裕がなく、後で見返してみると、この辺りの写真が一番少なかった。でも大門坂は、「古道ムード」満点だった。体力的にハードだったが、精神的には元気になった。歩いてみてよかった。
大門坂を登り切った後に、さらに467段の石段を登ることになる。その467段はそれほどきついものではなかったが、大門坂でやられてしまっていた。参道は土産物屋や茶店が立ち並んでおり、普通だったら目移りして楽しいのだろうが、クタクタでそれどころではなかった。
■青岸渡寺
西国三十三カ所の一番札所であり、熊野那智大社のすぐ横にある。さすがに一番札所なので、さぞかし「仏グッズ」が溢れているかと思いきや、控えめな品揃えだった。
青岸渡寺から那智の滝に向かう道を歩く。青岸渡寺の三重塔と那智の滝が一枚の写真に収まる、絶好のビュースポットがある。
■那智の滝
こういう大きな滝を見たことがなかったので感動した。滝の前にたどり着く暫く前から見えるし、音も聞こえてくるのだが、実際に対面すると想像をはるかに超える迫力である。霊験あらたかな、という感じ。思わず拝んでしまう気持ちになる。昔この滝を見た人の気持ちになると、こんな立派な滝があったら、それは信仰の中心になるし、社の一つも作りたくなるだろう。
昼食は行きに目星をつけていた茶店で軽く済ませる。その茶店は那智の滝が見える立地にあった。店内にクーラーがなかったが、窓が全開になっていて、風が通る。その風が違う。明らかに大阪の風とは違い、涼しかった。
■十津川村に泊まる
那智勝浦を後にして、二泊目の宿泊先の十津川村に向かう。去年から秘境の温泉地に興味があって、去年は龍神温泉に行ったが、今年は十津川温泉にした。
十津川村は想像以上に山々に囲まれたところだった。コンビニは一軒もなかった。夜に外に出ると、完全な暗闇で、これほどの暗闇を久しぶりに見た。遠くに見えるトンネルの灯りが不気味だった。
昨日とは打って変わって、山の幸の食事だった。アマゴの刺身なんて初めて食べた。鮎の塩焼きは定番だが、結構身が大きくて、食べ応えがあった。大和鶏の鍋。山の幸の数々。普段質素に暮らしている分、たまに贅沢をすると人間が堕落していく気持ちになる。そんなことを思う必要はないのだが。