USHINABE SQUARE

クラシック名盤・名曲と消費 生活 趣味

天王寺『双葉』


大阪風のうなぎ(まむし)の本場・大阪でも、大阪風のうなぎを食べられる店は意外に少ない。大阪風のうなぎとは、第一に、直焼きのうなぎである。第二に、ご飯の間にもうなぎが挟まっているとさらにポイントが高い。この二大特徴を兼ね備えた店こそ、「ザ・大阪のうなぎ屋」だと勝手に解釈しているが、そういう店は意外に少ない。


うなぎを食べようと思って、例えばデパートのうなぎ屋などに入ると、大抵は江戸前のうなぎである。したがって、大阪風のうなぎを食べようと思ったら、探して出掛けていかなければならない。昔、千日前に『いづもや』という店があって、その店はまさに大阪風だったが、その『いづもや』はもうない*1


『双葉』はもともと阿倍野筋にあったが、天王寺駅前の開発に伴って移転し、現在はあべのキューズモールの地下の「ヴィアあべのウォーク」にテナントとして入っている。中に入ると、それほど広い店内ではないのだが、老舗らしく、静かで落ち着いた空間となっている。



店内ではその日に使用するうなぎの産地が明示されている。どこだったか覚えていないが、国産だった。


私は2,160円の上鰻丼を注文した。店主がうなぎを焼いている姿が見える。出てくるまでやや待たされる。作り置きでなかったことに好感が持てた。やっぱり大阪風のうなぎは、焼きを楽しむものなので、その都度、焼いてほしいので、その点、よかった。


「上」のうなぎは半身である。これだけだと少なく見えるが、ご飯の間に、一切れ挟まっている。上に乗ったうなぎは香ばしかった。直焼きだけあって、蒸し焼きするよりは脂が強く、積極的に攻めてくる感じである。江戸前のうなぎとは明らかに違うものだ。御飯にタレがしっかりとかかっている点も大阪風の特徴である。変に甘くなくて、コクのあるタレだ。


中のうなぎはパリパリとした触感はないが、ふわっと柔らかい。米の熱で蒸されている。こうした違った触感を楽しめるのは大阪風のうなぎの特徴だ。


おいしいうなぎを食べた時の幸せな気持ち。うなぎは同じ店でも、出来不出来があるし、仕入れによっても差が生じるし、季節によってもムラがあるので、難しい食材・食べ物だと思う。しかし「当たり」のうなぎだった時は本当に幸せな気持ちとなる。それはうなぎとの出会い。まさに一期一会。


天王寺周辺はビルが濫立し、食べるところも無数にあって、デパートやホテルのレストランにも、新しく別のうなぎ屋が出来たりしているが、『双葉』のような、伝統的な味と老舗の雰囲気を残した店は、格別の存在感を持っているように思える。

【双葉 (ふたば)】

住所:大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1-6-1 ヴィアあべのウォーク ノースエリア B1F
営業時間:11:00〜21:00(LO20:30)
定休日:火曜

*1:住吉と船場にはまだある