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日帰り名古屋の旅


名古屋に日帰りで行ってきた。仕事、ではなく、遊びで行ってきた。


何故わざわざ名古屋に。まず、新大阪から名古屋は新幹線で1時間くらいなので気軽に行くことができる。私のように、平日の休みに、子供を保育園に預けてから迎えに行くまでの時間で、じゅうぶんに行って、楽しんで、帰ってくることができる。


しかしなぜ名古屋に。大阪での名古屋のイメージというのは、何故か、良くはない。周りの人に聞くと、食べ物が合わない(もっと直接的に「まずい」と言われることが多い)。観光スポットが少ない。運転が怖い(大阪も十分怖いと思うが)。等々。また、田舎扱いしている。都市の規模としては、同じくらいのはずだ。とにかく、大阪では名古屋のイメージはそれほど良くない。だから、大阪の人で、休日にわざわざ名古屋に出掛けていく人は少ないのではないか。


文化の違い。と言ってしまえばそれまでだが、名古屋には大阪と全く違った文化がある。私のように生粋の大阪人でもなく、名古屋人でもない人間からすると、どちらの文化も興味深い。優劣はない。たった1時間新幹線に乗っただけで、こんなにも違う。文化の違いやギャップの楽しさは、歩いて、見て、何かを食べるだけで感じることができる。長々と書いてみたが、要するに、きしめん味噌カツを現地で食べたいというのが一番の理由だった。また熱田神宮にも行ったことがなかったし。



まず私は熱田神宮に向かった。名古屋駅名鉄に乗り換え、神宮前駅で降りて、熱田神宮の森を歩いた。暑い一日だったが、森の中は爽やかとはいかないまでも、少しはましだった。


私は熱田神宮の森の中にきしめんを食べられる店があることを知っていた。そのために朝食を抜いてきたのだった。その店の名は『宮きしめん神宮店』といい、南神池のほとりにある。露店に屋根を付けたような簡素な店で、熱田神宮の森と同化したように周囲に溶け込んでいる。



注文後前払い制で、料理が出てくるまで待つ。麺を湯がいて、具、出汁を入れ、最後に鰹節をかける。美しいきしめんが私の前にある。「席を離れるときはカラスに注意してください」という注意書きがあった。店の外を見ると、数羽のカラスが油断なくこちらを観察している。これは確かに注意が必要だ。私がお茶を汲みに行ったら、何をされるかわからない。


甘みのある大阪のうどんの出汁とも、濃い東京のそばの出汁とも違う、さっぱりとした出汁だ。平たいきしめんによく絡んで、旨い。本場はやっぱり違う。またロケーションが最高だ。なにしろここは熱田神宮の中なのだ。暑さも気にならなかった。私は、カラスに注意を払いながら、朝からきしめんをすする。



草薙神剣を祀ると言われる熱田神宮。鳥居をくぐり、いよいよその神域に足を踏み入れる。



平日の午前中なのでそれほど混んではいない。伊勢の内宮や外宮あたりが平日でも混んでいるのとは全然違う。一体どういう人がこんな平日にお参りに来るのだろう。と、すっかり自分のことを棚に上げている。


神明造の社殿。家内安全を祈願する。



熱田神宮は、私の印象では、伊勢の外宮のような雰囲気だった。内宮ほどの広大な森でなく、歩いた感じも似ているし、関係ないが駅からの近さも似ていた。清々しい気持ちになるというのは、内宮、外宮にも共通するものだった。


熱田神宮の参拝を終えた私は、名古屋駅に戻り、名鉄百貨店のレストランフロアに上った。そして、まだ12時前だったが、混みだしていた『矢場とん』に入る。『矢場とん』は私でも知っている有名店で、東京にも店舗があるが、大阪にはない。私は、名物メニューである「鉄板とんかつ定食」を注文した。



味噌カツは見た目ほど、くどくはないが、十分に濃い。コッテリ度でいうと、おろしカツ→ソースかつ→味噌カツの順になる。今の日本、名古屋に行かなくても、味噌カツを食べることができる。わざわざ名古屋まで行って、味噌カツを食べるというのは酔狂なことなのか。しかし、大阪でとんかつを食べるなら私はソースの普通のカツを選ぶ。しかし名古屋では自然と味噌カツを選んでしまう。味噌カツを選ぶことが自然だという空気がある。そしてその空気の中で食べると、その食べ方が一番おいしい。赤身の部分と味噌、脂身の部分と味噌、全然違う。味噌はそれぞれの部分の旨みを増幅させる。肉自体が分厚く、食べ応えがある。キャベツが下に敷かれており、鉄板で味噌もろとも焼かれるキャベツを食べていたら、アジアのどこかで鍋料理を食べているような感覚に陥った。


きしめん熱田神宮味噌カツときて、もうこの旅の目的はほぼ達成されたようなものだった。新幹線で来て、お金も時間も使うことになったが、後悔のないものだった。しかしまだ時間がたっぷりあった。私は時間があれば行ってみようと思っていた覚王山に行くことに決めた。大須や栄には行ったことがあったので、今回は行かなかった。地下鉄東山線で、覚王山で降りた。


覚王山は住みたい街ランキングでは上位に挙がる、名古屋では有名な高級住宅地だ。確かに大須とか栄とかとは雰囲気が違い、落ち着いた感じだ。美味しそうなケーキの店や紅茶の店を眺めながら、日泰寺まで歩いた。


日泰寺は、タイより送られた仏舎利(釈迦の遺骨)を安置するために作られた寺院で、○○宗など特定の宗派にも属さない単立寺院である。釈迦の遺骨。スケール大きすぎである。私は寺社参拝もライフワークにしているので、絶対に行かねばならない。



山門が見えてきた。


 


境内はとても広い。まるで引越しのために荷物をすべて出した後の部屋のようだ。私は歩きだったが、車も沢山停めるスペースがある。私は本堂の参拝を終え、仏舎利を探した。どうも日泰寺は敷地が二つに分かれているようである。仏舎利は本堂とは別の敷地の方にあるようだった。


いったんお寺を出て、5〜10分くらい歩いたところにある。坂を上ったり下ったりした後、幹線道路を渡る。違うお寺を訪れるようである。同じお寺にいるというテンションが持続しない。覚王山は高台に位置していたのかもしれない。仏舎利のある敷地までの道は、 適度にアップダウンがあり、多少疲れを感じる。



仏舎利を納めた奉安塔。真贋不明のものが多い中、これは歴史学的にも由来のはっきりしたものらしい。いわば保証書付き。正規販売店で買った高級舶来時計みたいなものだろうか。日本全国に舎利塔はたくさんあるが、釈迦の遺骨を納めているというのは日泰寺ただ一つと言われている。私がここにいるとき、ほかの観光客はゼロだった(本堂の方には何組かいた)。仏舎利という大変なものがここにあるというのに、お寺の人もおらず、人とも会わなかった。少々、気味が悪かった。日本は、大乗仏教だし、宗派だとか、檀家だとか、いろいろあるし、第一、ここは観光で行くところではないのかもしれない。近くに大通りがあり、車の音だけが聞こえていた。


日泰寺から覚王山駅の辺りまで歩いて戻ってきたあと、駅近くのスターバックスに入った。一見すると何の職業かわからないような、業界人みたいな人や、モデルみたいな人や、マックブックエアーを広げている、デザイナーみたいな人もいた。さすが日泰寺。よく知らないのにそう書いてみた。


その後、私は名古屋駅まで戻り、手羽先と味噌カツサンドを土産に買って、新幹線に乗った。子供の迎えの時間にも間に合った。そして子供に「今日、名古屋に行ってきたよ」と言うと、「ふ〜ん」という、言葉が返ってきた。


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