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滋賀の旅・2015夏(3)


旅行の最終日は前日と同じように湖北の仏像巡りにあてた。


 


朝は健康的に空腹で、朝食がとても美味しい。3日間、天気にも恵まれた。


■医王寺


朝食後、拝観を予約しておいた医王寺に向かう。道中、距離としては木之本町からそれほどでもないが、道も狭くなり、山深くなっていった。行く途中に野生の猿を一匹、鹿を一頭見かけた(鹿は車にひかれていた)。途中につり橋があり、「医王寺参道」という案内板があった。車を置くスペースが全然ないため、仕方がなくそのまま直進すると、橋が見えてきた。その橋を渡り、左に曲がると道が二方向に分かれている。その分かれ道の間の土地に医王寺はあった。



到着すると、世話役の方はまだ来られていなくて、電話をかけると、「15分くらいで行きます」とのことだった。待っている間、お堂の前の立札の説明を読んだり、写真を撮っていると、10分くらいで来られた。




お堂の鍵を開けてもらい、中に入る。そして厨子を開けていただく。端正でなんとなく内気、涼しげな表情の仏像だ。この仏像は、もともとこの地方の仏像の特徴を備えてはいるが、明治20年に、当時の住職が長浜の骨董品市で見つけてきたものだ。以来、この土地をその涼しげなまなざしで見つめてきたのだろうか。


■黒田観音寺


次に予約していた黒田観音寺に行くには時間がまだ早かった。せっかくの旅行なのでスケジュールがタイトになりすぎるのも避けたかった。



琵琶湖の北に余呉湖という小さな湖がある。そこに行ってみた。車を停められる駐車場があったのでそこに停めて、湖畔を散策した。余呉湖は賤ヶ岳などの山々に囲まれた小さな湖で、古来より語られてきた言い伝えに羽衣伝説がある。現在はバス釣り、ワカサギ釣りも有名である。



風もなく水面が空を綺麗に反映している。波もなく穏やかだ。とくに予備知識もなしに立ち寄ったが、よかった。仏像に気持ちを奪われ過ぎていたのかもしれない。自然が良かった。黒田観音寺からは10分ほど。余呉湖畔を歩き、車に戻り、伝えていた時間に間に合った。



お世話の方は、先に来られていた。そして鍵を開けて下さる。厨子を開けていただくと、圧倒的な存在が姿を見せた。仏像は十一面観音あるいは千手観音という説もあるが、准胝観音とされている。確かに頭に十一面がなく、手の数も少ない。すごい仏像。優美とか流麗とかではないが、生命力というか、この土地に根をはっているような、力強さを持っている。大きさも2メートル近くと大きく、いいものを拝ませてもらったという気持ちだった。


お世話をされている方は、お寺を掃除したり、仏像の周りを綺麗にしたり、文字通り、仏像のお世話をされているのに、逆に「仏さまが地域を見ていて下さるので」と話されていた。今回訪問した他のお寺でも同じような話を伺った。こういうものこそ本物の信仰だと思う。


■石道寺


石道寺は、予約なしで拝観できる。もし初めて琵琶湖の北部の仏像巡りをする人があれば、こちらの他には、向源寺、己高閣・世代閣、高月観音の里歴史民俗資料館が予約なしで拝観できるので、おすすめだ。そうした「アポなし歓迎」の仏像を中心に、2つか3つ予約拝観の仏像を入れると、有意義な旅行ができるのではないだろうか。


大きな県道から一歩集落に入っていくと、次第に道は狭くなっていく。田園風景の中、緩やかな傾斜を描く細い道を登っていくと、舗装されていない広大な駐車場に出る。ここは紅葉の名所でもあるので、秋になるとこの駐車場がいっぱいになるのだろうか。道中、車同士が離合するのに苦労しそうだ。



石道寺は「ザ・山寺」という雰囲気のお寺である。同じく山の中にあるお寺としては、奈良の仏隆寺などの雰囲気が最も近い。こちらの仏像は井上靖が小説『星と祭』の中で、「村の娘さん」と称えた。色彩がかなり残り、素朴な美しさを持った仏像だ。仏に性別はないが、あきらかに女性寄りで、事実、唇が、口紅を塗っているかのように紅い。


「怨念」。私が、この地方の仏像を見るときに必ず浮かぶ言葉だ。近くには賤ヶ岳があり、しばらく行けば関ヶ原がある。戦の巻き添えとなって焼かれた仏像も多かったはずだ。廃仏毀釈で処分されてしまった仏像も多い。そんな中、時には背負って逃げたり、土に埋めて隠して、集落で仏像を守ったという話をよく聞く。目の真にある仏号は、普通では考えられないような数奇な運命を辿って、ここにあるのかもしれない。様々な人々の怨念に満ちた歴史がなぜか仏像の顔に出る。すごい顔をしている、何とも言えない表情をしている仏像が大変多い。実際に行ってみて、何回か、そういう実感をするから、この仏像巡りという趣味はやめられない。


■ランチ〜長浜



仏像巡りに区切りをつけ、長浜の市街地までドライブする。この辺にしかないチェーン店のパスタの店で昼食を取った(おいしかった)。



駅前のパーキングに車を停めて街に繰り出す。


 


昔何度も来たことのある長浜だが、ここ数年で随分変わったのではないか。駅前は小奇麗になったが、駅前の風情のあった商店街は姿を消した。黒壁スクエア周辺は観光地として洗練され、センスの良い店が増えた。



長浜では、『海洋堂フィギュアミュージアム』に寄った。今回の旅行は、宿坊や仏像で、子供にとっては渋すぎたかもしれないので、最後には子供が楽しめるところに行ってあげようと思っていた。入館料は大人800円と高いが、就学前の子供は無料。さらに入館記念として海洋堂のフィギュアを人数分もらえる。


 

 


海洋堂フィギュアミュージアム』は、土産物や海洋堂のフィギュアを購入できる無料コーナー(売店)と、有料のコーナーがある。以前に来たときは売店だけで済ましてしまったが、800円支払って、全部見てみてよかった。さすがお金を撮るだけあって、見ごたえがあった。フィギュアというよりは、ジオラマの展示で、よく作り込まれていた。




正直言ってあまり期待せずに行ったが、行ってみてよかった。もちろん、子供は大喜びで、まるでルーブル展みたいな大きな展覧会で絵ごとに並んで几帳面に鑑賞する大人みたいに、丹念に一つ一つのケースの展示を鑑賞していた。


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