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京都・『ルーブル美術館展』と『マグリット展』


只今、京都市美術館で2つの特別展、『ルーブル美術館展』(以下、『ルーブル展』)と『マグリット展』が開催されている。とはいっても、『ルーブル展』は、来週日曜日には終わってしまう。私は9月の初頭に行ってきたが、終わってからブログに書くのも意味がないので、終わるまでに記録を残しておきたいと思う。



平安神宮の鳥居を挟んで、東側に京都市美術館、西側に京都国立近代美術館がある。今回の展覧会が行われているのは、京都市美術館の方だ。



朝の開館すぐというわけではなかったが、近辺には目立った混雑は見られなかった。私は『ルーブル展』だけ前売り券を事前に買っていったが、チケット売り場でも特に並んでいなかった。むしろ、セット券が安く販売されていたので、買わずに行けばよかった。


■『ルーブル展』


まずは『ルーブル展』の方に向かう。そういう順序にしたのは、美術史の流れに沿った方が自然だからだ。


会場には並ばずには入れたが、中は結構混んでいる。鑑賞できないほどの人出ではないが、ずっと数珠つなぎになっている。平日でそれなので、休日や、ましてや連休などは大変なことになっているのかもしれない。客層は高めで、年配の夫婦が多い。


この展覧会は、公式サイトでは以下のように紹介されている。

◇史上空前!風俗画の歴史を一望する珠玉のコレクション、約80点が来日
◇待望の初来日! フェルメールの《天文学者
レンブラントルーベンスドラクロワ、ミレーなど、各国・各時代の巨匠の名画が集結
◇現実と虚構が入り混じる、「風俗画」のおもしろさ


フランソワ・ミレー、ルーベンスレンブラント、ヤン・ステーン、ゲインズバラ、ランクレ、カミーユ・コロー、ブーシェなど、美術史の教科書に出てくるような名画の数々。このクラスの絵画は、ヨーロッパの大きな都市に行けば見られるが、日本の美術館では絶対に見ることができない。


ルーブル美術館の無数のコレクションの中から、国、時代を超えて、風俗画というジャンルで集められた、素晴らしい展示に、私は一瞬ここが京都であることを忘れかけた。また京都市美術館の重厚な内装も、雰囲気づくりに一役買っているようだった。


フェルメールの『天文学者』は、ドイツのフランクフルトの「シュテーデル美術館」にある『地理学者』と比較して語られることの多い作品だ。明らかに対をなす作品ではないが、「書斎の学者」という主題を取り上げた作品として、どちらも光を放っている。私が好きなのは今回展示されている『天文学者』の方だ。画面左側から光が差しているのがまずフェルメールらしく、タッチの繊細さも比類がない。仕事に没頭する学者の表情から何かを読み取ることはできず、それが絵画の神秘性を高めている。部屋や衣類における明暗の表現などはフェルメールならではで、やはり原画の情報量というか、威力は絶大である。


フェルメール一枚を見るために行ったとしても損がないし、上記の通り、それ以上の展覧会だった。


■『マグリット展』


ルーブル展』の混雑から、こちらはどうかと心配したが、全然問題なかった。空いていた。客層は若い人が多く、若いカップルもいたが、一人客も多かった。


この展覧会の見どころについては、公式サイトでは以下のように紹介されている。

◇2002年以来、実に13年ぶりとなる、本格的な回顧展(東京では13年ぶり、京都では44年ぶり)。
◇2009年、ブリュッセルにオープンした「マグリット美術館」による全面的な協力によって実現。
◇ベルギー王立美術館、マグリット財団の協力により、世界10か国以上から代表作約130点が集結。


空いていることもあって、絵の前で独り占めできる時間も多く、ヨーロッパの「ルーブル美術館」や「ナショナル・ギャラリー」などの巨大ミュージアムではない、地方の美術館で鑑賞しているみたいな雰囲気がよかった。だが、展示は一流。本格的な回顧展で、ベルギーに行けば常設展で鑑賞できるのかもしれないが、日本にいながら、質、量ともにこれくらいマグリットの作品に触れることができるとは。本当に貴重な機会だ。


メタファーとアイロニー。知的なゲームを楽しむような感じで、タイトルとモチーフの距離感を探りながら、会場を歩いた。マグリットは私は高校生の頃から好きで、親に頼んで画集を買ってもらったことを覚えている。シュール・レアリスムの画家の中では、私はダリよりもマグリットの方が好きだった。ダリは超人的というか突き抜けすぎていて、マグリットの方に共感できる気がしていたのだった。


原画で見る『ピレネーの城』は、やはりよかった。長辺が2メートをる超える大きな作品で、見上げた。海から離れた空中に巨大な岩が浮かんでいて、その岩の上には城がある。マグリットの創作の年表でいうと「石の時代」の作品で、他にも同様のモチーフを描いていた。いったい、何の意図で、こんな絵を何作も描いたのか。解釈というよりも、感性に浸ればよいのかもしれない。


『光の帝国II』も好きな絵だ。家の明かりと街灯が明かりが闇を照らしている。その部分は夜であるのに、空には青空が広がっているという、幻想的な絵だ。このモチーフも連作されている。


マグリットの人生を受け止めるような本格的な回顧展で、とても見ごたえがあった。


 


私はあまり展覧会のグッズなどは買わない方だが、絵ハガキを3枚、『天文学者』のマグネットを買った。マグネットは早速、冷蔵庫に貼った。


◇  ◇  ◇


美術館は意外に体力がいる。疲れる。リラックスするつもりで来たはずが、結構、歩くし、頭も使っている。



帰りは、東山三条の『一澤帆布』に立ち寄って、祇園まで歩いた。そして、川端四条の「南座」の前の洋食店『菊水』で、洋食を食べて家に帰った。鯖寿司やにしんそばの店も捨てがたかったが、今日は頭が洋風になっていた。

ルーヴル美術館展 日常を描く―風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄
会場/京都市美術館 〒606-8344 京都市左京区岡崎円勝寺町124(岡崎公園内)
会期/2015年6月16日(火)〜9月27日(日)
開館時間/9:00〜17:00

マグリット展 René Magritte

会場/京都市美術館 〒606-8344 京都市左京区岡崎円勝寺町124(岡崎公園内)
会期/2015年7月11日(土)〜10月12日(月・祝)休館日 毎週月曜日
 ※ただし、7月20日(月・祝)、9月21日(月・祝)、10月12日(月・祝)は開館
開館時間/9:00〜17:00


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