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『欧風料理もん』


ビーフカツで有名な『もん』に行った。『もん』とは神戸三宮にある『欧風料理もん』のことだ。


三宮や元町で食事をするとき、この界隈はおいしい、魅力的な店が大変多いので、私はまるで梅田のヨドバシカメラのおもちゃ売り場に初めて連れて行ってもらった子供のようになる。目移りして選べない。洋食にしても、中華にしても、寿司でも、うどんでも、イタリアンでも、あるいは奮発してステーキを選んでも、どこに出しても恥ずかしくない名店が揃っていて、できれば昼なら昼食、夜なら夕食を2回食べたいくらいである。なのに迷いは最善の選択を妨げる要因となり、気付けばチェーン店のラーメンを食べたりしている自分に愕然とすることがある。迷いに迷って微妙すぎるおもちゃを選ぶ子供と一緒だ。血迷って、後悔する。


血迷ったり、また違うジャンルの美味しい店に行くこと数度。私は『もん』にしばらくぶりに行った。



この店は、私が昔、兵庫県で仕事をしていた頃から、時々行ったことがある。普段通っていた定食屋よりは敷居が高く、値段も高価だったので、若いときは、少し緊張しながら行っていたことを思い出す。いまは全然緊張しない。美味しいビーフカツを食べられる期待感で、心が躍っている。


入ってすぐにカウンターがあり、その後ろに仕切られたBOX席が3組。空いている時間なら、一人でもBOX席に案内される。2階と3階にも席があるが、私は行ったことがない。


店の感じは、ビストロ風で、やや年季が入っているように見える。震災後に移転しているが、昔からそこにあるような風情がある。北野の異人館の応接間のような落ち着きがある。大阪で言うと『レストラン乃呂』の雰囲気が似ている。


私はビーフカツを注文する。この店でビーフカツ以外のものを注文したことがない。他のメニューも絶対に美味しいのだろうが、ビーフカツのおいしさを知ってしまった私は他のものを注文する気にならない。2,400円。セットメニューはほとんどなく、トンカツのみセットにできる。他のメニューはセットにできない。ライスが附いていないので、単品で注文することになる。ライスは250円。



メイン料理にはサラダがつく。唯一のセットメニューであるトンカツのセットならスープがつくが、単品の皿にはスープがつかない。



これが『もん』のビーフカツ。まず、衣がおいしい。擬態語で言うと、「カリッ」とか。「サクッ」ではく「ザクッ」。一体、どんな材料を使って、どういうふうに揚げているのだろうか。皆目、見当がつかない。よくあるトンカツやビーフカツとは全然違う。衣は薄いわけではないが、くどくもない。まるで胡麻油みたいな独特の香ばしさもあって、まさにワン&オンリー。


付け合わせの野菜はジャガイモとホウレン草のソテー。野菜はニンジンやインゲンの時もあったので、日替わりだろう。それにナポリタン。このナポリタンは洋食屋の定番で、きっと作り置きだが、ちょっと嬉しい。小さな幸せという感じがする。



肉はステーキでも食べられそうな上等な肉で、もちろんナイフで容易に切れる。肉の断面はミディアムレアである。カットしたビーフカツを口の中に入れると、衣の香ばしさの後に、熟成肉みたいな旨みが来る。それがグミみたいに口の中で踊る。この美味しさは何度食べても感動する。久しぶりに行ったが変わらず美味しかった。もしビーフカツを食べたことのない人がいたら、初めて食べるビーフカツは『もん』にしてもらいたい。

【欧風料理もん】

住所:兵庫県神戸市中央区北長狭通2-12-12
営業時間:11:00〜21:00
定休日:第3月曜