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DENONプリメインアンプ/USB-DAC『PMA-50』


DENONのプリメインアンプ、『PMA-50』を買った。



私はクラシック音楽ブログを書いているくせに、最初の子供が生まれてから最近まで、音楽を聴くのはほとんどiPodかカーオーディオだった。最初は時間的な問題が大きかったが、徐々にスペース的な問題が大きくなっていった。子供のものがだんだん増えてきて、私のオーディオスペースは浸食されていった。スピーカーはスタンド付きだが、暫くのあいだアンプと接続していなかった。2人目が去年生まれて、その傾向は続くと思ったが、省スペースで、筋の良い製品を見つけたのでこの度、購入した。オーディオ製品を買うのは本当に久しぶりだ。


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『PMA-50』は、去年の発売以来、売れに売れ、今では落ち着いているが、それでもよく売れている。特徴は、

  • 入力段階からスピーカーの手前までデジタルで処理を行う、フルデジタルアンプであること。
  • DSD5.6MHz、PCM192kHz、24 bit対応USB-DAC機能を搭載している。
  • 省スペースで縦置き可能。
  • 高品質なヘッドホンアンプ搭載。


他にもいろいろあるが、大きな特徴は上記の4点ほどだと思う。何より私にとって魅力的だったのはコンパクトなことで、これなら私の狭いオーディオスペースでも邪魔にならない。


早速、CDを用意して聴いてみた。


◇  ◇  ◇


■ビル・エヴァンス『ワルツ・フォー・デビイ』


ワルツ・フォー・デビイ+4

ワルツ・フォー・デビイ+4

  • アーティスト: ビル・エヴァンス,スコット・ラファロ,ポール・モチアン
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2014/10/08
  • メディア: CD
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最初にCDプレイヤーのトレイに載せたのがこのCDだった。まるでジャズ・バーで聴いているような臨場感。知的でリリカルなビル・エヴァンスのピアノと、スコット・ラファロの歌うようなベースが絡み合う。大人しく丁寧だった音楽の運びが次第に熱を帯びていき、燃焼する、非常にライブらしい録音となっている。その場の空気さえも収録されているような圧倒的な雰囲気が再現されている。私がもともと持っていたアナログのプリメインアンプと比べると、当初は低音が不足気味かと感じたが、全体のボリュームを上げると低音もじゅうぶん鳴る。「低〜中」優先でなく、全体をフラットに響かせるタイプで、味付けの問題だ。量は適切なレベルだが、質は高い。キレがある。


■キース・ジャレット・トリオ『ウィスパー・ノット』


ウィスパー・ノット

ウィスパー・ノット

  • アーティスト: キース・ジャレット・トリオ,キース・ジャレット,ゲイリー・ピーコック,ジャック・ディジョネット
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2013/05/01
  • メディア: CD
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上記と同じくピアノトリオの演奏で被ってしまったが、違ったタイプの演奏なのであえて挙げた。躍動感が凄い。キース・ジャレットのピアノはこんなに躍動的だったのかと、衝撃を受けた。自然に体が動いてしまいそうなほど、気持ちを持っていかれる。このアドリブ、アイディアは、普通じゃない。常人のものではない。もちろんベースのゲイリー・ピーコック、ドラムのジャック・ディジョネットも当代を代表するミュージシャンである。三者の演奏レベルの異様なほどの高さを実感する。いままで聴いてきたシステムも悪くはないが、このシステムは、全体がフラットで見通しがよいため、周辺でこんな音が鳴っていたのかという新たな発見がある。


クッキン

クッキン

  • アーティスト: マイルス・デイヴィス,レッド・ガーランド,ジョン・コルトレーン,ポール・チェンバース,フィリー・ジョー・ジョーンズ
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2014/10/08
  • メディア: CD
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ダウン・ホーム +6

ダウン・ホーム +6


そのほか、マイルス・デイヴィス『クッキン』、ズート・シムズ『ダウン・ホーム』を聴いた。ホーン入りの演奏もなかなか聴かせる。このシステムは、ジャズ喫茶で聴くような大音量を得意としないが、これまで聴こえなかったような細かいニュアンスが良く伝わってくる。サイズを考えると健闘していると思う。


◇  ◇  ◇


書き忘れたが、スピーカーはビクターの10年くらい前のウッドコーンの3WAYのスピーカーを使用している。ビクターのウッドコーンは、2WAYのものやフルレンジスピーカーは評判になったが、3WAYはあまり評判にもならず、実際それほど売れなかったスピーカーだ。ビクターもいまやケンウッドと統合して、スピーカー部門はかなり縮小してしまったが、このスピーカーは飾らない自然な音色を持っており、買った当初から気に入って使用していた。最近は良いスピーカーがたくさん発売されているが、これを手放す気にならない。


■サー・ロジャー・ノリントン『モーツァルト交響曲集』


モーツァルト:交響曲集 (19曲) (Mozart : Essential Symphonies Vol.I-VI / Norrington) [6CD Box]

モーツァルト:交響曲集 (19曲) (Mozart : Essential Symphonies Vol.I-VI / Norrington) [6CD Box]

  • アーティスト: モーツァルト,サー・ロジャー・ノリントン,SWRシュトゥットガルト放送交響楽団
  • 出版社/メーカー: HAENSSLER
  • 発売日: 2009/01/09
  • メディア: CD
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デジタルアンプとウッドコーンの組み合わせには、古楽器やピリオド奏法が合うのではないかと考えた。その通りだった。加飾の少ないシンプルな響きにこのシステムは合う。楽器の音色が溶けあうのではなく、並行し、時には対立するようなパッセージをよく再現している。高音から中音、低音までまんべんなく同じレベルで鳴らす様は清々しいほど潔い。


■デビッド・シフリン『モーツァルト・クラリネット協奏曲/クラリネット五重奏曲』


Mozart: Clarinet Concerto; Clarinet Quintet

Mozart: Clarinet Concerto; Clarinet Quintet


この演奏は、通常のクラリネットよりも音程の広いバセットクラリネットを使用し、その音色が聴きどころとなっている。この演奏に慣れると他のクラリネットでは物足りなくなってしまうという名盤のうちの一枚だ。もともと木管楽器とウッドコーンスピーカーの相性は抜群だが、デジタルアンプの先鋭さによってさらに魅力的なサウンドになったように感じる。シフリンの醸し出す、太い音色は、高級なウイスキーを飲んだ後の長い余韻を思わせる。


■マリス・ヤンソンス『ベートーヴェン交響曲全集』


ベートーヴェン交響曲全集

ベートーヴェン交響曲全集

  • アーティスト: マリス・ヤンソンス,バイエルン放送交響楽団,ベートーヴェン,クラッシミーラ・ストヤノヴァ,リオバ・ブラウン,ミヒャエル・シャーデ,ミヒャエル・ヴォッレ,ミヒャエル・グレーザー
  • 出版社/メーカー: ナクソス・ジャパン(株)
  • 発売日: 2012/12/01
  • メディア: CD
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もう少しオーケストラの規模が大きくなるとどうか。アンプのサイズから言って、やはり不足感を感じるのではないか。しかしその予想は裏切られた。意外にも、立派に鳴らすのである。当然、サイズの制約はあるが、ボリュームを多少大きくすると、オーケストラの広がりが感じられるようになる。例えば『英雄』の冒頭。まるでサントリーホールやシンフォニーホールの良い席で聴くような素晴らしい音響。その上、デジタルアンプなのですべての音が平等に出る。サウンドが立体的で、オーケストラの配置がわかるようだ。


R.シュトラウス:アルプス交響曲、4つの最後の歌

R.シュトラウス:アルプス交響曲、4つの最後の歌


ブルックナー:交響曲第5番

ブルックナー:交響曲第5番

  • アーティスト: ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団ヴァント(ギュンター),ブルックナー,ヴァント(ギュンター),ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
  • 出版社/メーカー: BMG JAPAN
  • 発売日: 2006/12/06
  • メディア: CD
  • 購入: 3人 クリック: 6回
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さらに大規模なオーケストラとなるとどうか。リヒャルト・シュトラウスの『アルプス交響曲』やブルックナーの5番を聴いたが、全然問題なかった。まるで海外有名オーケストラの来日公演を聴いているような音の筋の良さに加え、スケールも出ている。全体的に、誇張された音ではなく、自然でシンプルな音であることが、クラシック音楽には向いているように感じた。


◇  ◇  ◇


OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜(通常盤)

OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜(通常盤)


邦楽も聴いた。新しいシステムで聴く極上のヴォーカルはそれだけでワクワクする。ヴォーカルもこのシステムは得意だ。山下達郎は私が日本人アーティストでひょっとするといま一番好きかもしれない。声質も、声量も、言うことない。曲も良い。才能の塊のようなアーティストで、こんなに良い曲を幾つも書いて、こんなに巧く歌えたら人生楽しいだろう。巧いなあ巧いなあと感動しながら聴いた。


GOLDEN BEST

GOLDEN BEST

  • アーティスト: 井上陽水,忌野清志郎,奥田民生,星勝,佐藤準,鈴木茂,久石譲,矢野誠,井上陽水奥田民生,川島裕二,高中正義
  • 出版社/メーカー: フォーライフ ミュージックエンタテイメント
  • 発売日: 1999/07/28
  • メディア: CD
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井上陽水。カラオケで同じ部屋で歌ってくれているような近さ。久しぶりに聴くと、井上陽水は浮世離れしていて知的で優雅で個性的でとても良かった。


evergreen

evergreen


懐かしい一枚を取り出してきた。これは昔よく聴いた。昔聴いたCDを再び聴くというのもオーディオを新調した時の楽しみの一つだ。このアンプはいわゆるドンシャリではないので見栄えはそれほどよくないが、バランスが取れている。


◇  ◇  ◇


まだ買って間もないが、下記に印象を簡単にまとめてみた。

  • フラットな音作り・加飾のないシンプルなサウンド
  • 意外なパワー
  • ヘッドホンも高音質


フラットな音作りという点では、ジャズやクラシックには向いていると思う。高音から低音までしっかりと音が出ている。しかし、ズンズンとベースを響かせたいと思うと苦労するかもしれないが、幸運なことに、私は低音ズンズンのサウンドが好きではない。また、アナログのアンプとのサウンドの傾向に違いはあるが、これはこれで愛せるものだ。


ボリュームを上げるとパワーがあるというのも意外だった。じゅうぶんメインとして使える。


ヘッドホンも高音質だった。ヘッドホンもそれに併せて新調したので、それについてもまた書いてみたい。


以上、べた褒めとなってしまったが、オーディオは上を見るとキリがないものだ。もし自分がオーディオに夢中になったらと考えると怖さを感じる。カメラどころの話ではなくなってきて、車がもう一台買えてしまう。私の場合、どこかで諦めるか上がりにするほうが、時間的にも、スペース的にも、経済的にも、正解だと思う。


問題はどこで上がりにするかだが、私はこの『PMA-50』で上がりにすることに決めた。


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*1:画像はAmazonより

*2:画像はAmazonより