『重亭』のカキフライとオムライス

この冬はカキフライをよく食べた。洋食屋でもトンカツ屋でもカキフライをよく食べた。デパートのテイクアウトや近所のスーパーの惣菜屋でもカキフライをよく買った。トンカツ屋で、これほどトンカツを注文しなかったことは過去になかった。生はあまり好きではないので、専らフライばかりだった。いままでこんなに続けてカキフライを食べたことはなかったので、自分の嗜好の変化に驚いている。あるいは、単にワンパターンになっているだけなのだろうか。

先日、トンカツ屋ではなく、洋食屋のカキフライを食べたくなって、『重亭』に行った。ハンバーグで有名な『重亭』で、このブログに書いたこともある（→そのときのブログはこちら）。

いつもの「ハンバーグ」ではなく、「カキフライ」を注文する。今日はカキフライを食べに来た。それに、カキフライの季節の終わりは近い。あと１か月余りのうちに食べられなくなるのだ。

１５分少々で料理が運ばれてくる。タルタルソースはかかっておらず、『重亭』名物のソースがかかっている。付け合わせは、パセリにキャベツ、マッシュポテト、洋食屋で定番のナポリタン。付け合わせのナポリタンはけっこう楽しみなので、いつも食事の中盤まで残しておく。

衣はやや薄く、どんなカキなのか形がわかる。トンカツ屋の卵型のカキフライと違って、昔、実家で食べたようなタイプのカキフライだ。衣の油が香ばしく、中身のカキはプリプリに身が詰まっていて弾力があった。衣がカキの風味を邪魔せず、磯の香りがする。カキの滋味が体に染みわたるような美味しさだった。

この日、私は、カキフライの受け手にライスを選ばず、オムライスを注文した。私はいつも『重亭』ではハンバーグかポークチャップかオムライスでローテーションを組むように注文しているが、この日は奮発してしまった。このオムライスが絶品だ。よくチキンライスがケチャップべったりだったり、乾燥しすぎていたりすると閉口するが、それがない。その塩梅が素晴らしく、味も嫌みがない。具もしっかり入っていて、細切れの牛肉がとても美味しい。ソースもケチャップではなく、デミグラスソースというのが私の好みだ。

オムライスなのでおかずの受け手にはならず、それぞれ単独で味わった。最初にキャベツを食べてしまう。その後、カキフライを２個食べ、オムライスを半分食べる。マッシュポテトはその間に食べる。そして、カキフライを１個食べ、残り半分のオムライスを食べ終わった後に、ナポリタンを食べる。その後、最後の２個のカキフライを食べる。

それにしても「カキフライ」と「オムライス」なんて。こんな贅沢が許されるのだろうか。しかし考えてみると、今シーズン、最後のカキフライだったかもしれない。「迷ったら、注文しろ」だ。そう自分を納得させ、店を後にした。