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心斎橋『ニシモト』の「洋食弁当」


何年ぶりになるだろうか。先日、久しぶりに心斎橋の『ニシモト』に行った。心斎橋界隈には、美味しい洋食店が多く、ざっと挙げるだけでも『洋食KATSUI』、『御堂筋ロッヂ』、『乃呂』、『ばらの木』、『SANGEN』、『明治軒』など、迷ってしまうくらいだ。エリアをもう少し広げると、千日前の『重亭』、『はり重グリル』、『北極星』も、洋食を食べたいときに候補に挙がって来る。


どうしてその日『ニシモト』を選んだのかというと、『ニシモト』の「洋食弁当」を久しぶりに食べてみたくなったからだ。


洋食というと、サラダとスープが出た後、白い皿にハンバーグやビーフカツなどのメイン料理と付け合わせが美しく盛り付けられている、そんなイメージがあるが、『ニシモト』の特徴は、料理が重箱に収められていることだ。もちろん皿に載っている普通のメニューもあるが、名物は「お弁当」形式の「洋食弁当」だ。持ち帰りができるわけではないが、わざわざ重箱に入れられている。提供の仕方が違うだけなのに、その違いはとても面白い。「皿」が外に何かを訴える、開かれたものであるのならば、「箱」は、その枠内で世界が完結している、閉ざされたものだ。なんとなくそう感じた。洋食弁当。惹かれるものがある。


『ニシモト』は御堂筋から行くと、八幡町交差点を東に進み、心斎橋筋商店街を超えた一つ目の四ツ辻にある。創業昭和9年の老舗で、自社ビル「ニシモトビル」の3階に位置する。私は、開店直後に訪れたため、誰一人、先客はいなかった。「どちらでもどうぞ」と言われたが、私は窓際のカウンター席に座った。机の上にアンティーク風のランプが置かれていた。眺望は素晴らしいとは言えないが、心斎橋の路地が見えた。働いている人たち、歩いている人たちが見えた。そのうち雨が降ってきたのも見えた。


肝心の洋食弁当は、日替わりのサービスメニューなら、800円くらいからある。その他の洋食弁当は特別洋食弁当と名付けられ、その価格帯は、大きく分けて3段階ある。まず、ハンバーグやエビフライなどの一品に加えてオムレツが付くセットで、こちらは1,000円くらいから。次に、メインが二品となると、1,600円くらいの価格帯。一番高価なのは、ビーフカツが入ったもので、2,000円強となる。


私は、エビフライとハンバーグの洋食弁当を注文した。エビフライとハンバーグというのは洋食の王道だと思う。エビフライがコロッケに変わるとちょっと違うし、ハンバーグがトンカツに変わってもまた違う。エビフライとハンバーグというのが王道。主観というか、偏見に過ぎないかもしれないが。



最初に運ばれてくるのはサラダとスープだ。多くの店では、サラダがメイン皿に乗っている店が多いが、私はできれば別々が好きだ。サラダはサラダだけ、スープもスープだけで味わいたい。私は、先にサラダを食べて、その後にスープを飲む。



重箱は二段に重ねられている。本当にお弁当みたいだ。上段におかずがあり、下段はご飯である。



丁寧に上段を持ち上げて、下段の御飯と左右に並べる。重箱の中に収められた洋食の姿は、素朴だが美しいと思う。



ハンバーグは昔、駅前のレストランで食べたようなシンプルな味だ。肉を売りにする洋食屋によくあるようなタイプの「ザ・肉」みたいなものではなくて、昔食べたハンバーグの味だ。ソースも変に凝ったものではなく、スタンダードなデミグラスソースで、マッシュルームも混じっているし、子供の頃からよく知っているようなハンバーグの味だ。意外にこういうものを求めると、最近少ないのかもしれない。そこが貴重だ。


エビフライは、それほど大きなものではないかったが、新鮮な魚介類の弾力があった。衣の厚さも丁度良かった。トンカツ屋のエビフライとは違うタイプのエビフライだ。タルタルソースもたっぷりかかっている。こういうところをケチっていないのが良い。


それと嬉しいのがオムレツだ。具は細かい玉ねぎが入っているだけのシンプルなオムレツで、ケチャップもかかっていないが、とても美味しかった。自分で注文しておいて何だが、ハンバーグとエビフライだけでは、メインが強すぎるというか、猛烈すぎる。激しい。そこにオムレツが入ると丁度良い。すべてが丸く収まる気がする。


「定食」でなく、「弁当」というのが上品な感じだ。重箱に収められた洋食。こういうものを求めていたのだった。

【洋風料理ニシモト】

住所/大阪府大阪市中央区心斎橋筋2-2-1 ニシモトビル 3F
営業時間/11:00〜15:00 17:45〜21:00
定休日/月曜日(祝日の場合は火曜日)