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新梅田食道街『スエヒロ』のステーキ


グランフロント大阪みたいな新しい商業施設もできて、梅田でランチを食べるとき、1,000円台後半から2,000円くらい普通にかかってしまう店が増えてきた。梅田に行く度にそういう店ばかり選んでいるのは、財布に優しくない。しかし、昔ながらの、庶民的で、安い店もまだ残っている。


梅田の南部にダンジョンのような広大な地下街を形成している大阪第1〜第4ビルにも安く食べられる、古い店が残っている。梅田の中枢、JR大阪駅と阪急梅田駅の間にある『新梅田食道街』(「食堂」でなくなぜか「食道」)も安く食べられる店が結構ある。私はそうした昔からの食堂や食堂街に、昭和の名残を感じる。まるでエアーポケットのように、都会に、「昭和」が残っている。


新梅田食道街は、JR環状線の高架下に位置する食堂街で、発祥はなんと戦後すぐ。ラーメン、居酒屋、焼き鳥、うどん、寿司、おでん、エスニック、ショットバーまで、一通り、揃っている。観光客向けにも、大阪名物のお好み焼きやたこ焼きなどの「粉もん」、串カツがある。食べるもの、食べるところで迷ったら、まずここに来れば、大体の選択肢がある。私も梅田でサラリーマンをしている時には、よく通っていた。新梅田食道街は、サラリーマンのオアシス、庶民の味方だ。


先日、梅田のヨドバシカメラに行った帰りに、久しぶりに新梅田食道街の『スエヒロ』で食事をした。ステーキ店の『スエヒロ』は、高価なメニューもあり、夜は本格的なステーキハウスだが、昼なら1,000円少々で食べられる。



『スエヒロ』の入り口。看板に「ビフテキ・欧風料理」と書かれている。「ビフテキ」というのが、レトロな感じがする。21世紀の言葉遣いではない。「昭和」である。「欧風料理」というのも良い。今なら、一回りして「洋食」だろう。


カウンターもテーブルもあり、一人客でも、「お好きな席に」と言われるので、私はいつも広いテーブルを選ぶ。最近の店は、効率を重視するのか、一人なら第一にカウンターを案内される店も多いが、そういう効率性を求めていないのが良い。


よく一人で人気の店に行くと、平日でどうみても開店直後で空いているのに、カウンターを案内されることが多く、客の回転とか経営の効率性とか、「この店はそういう方針なのだな」と思うことがあるが、『スエヒロ』はそういう店とは対極に位置する。一言で言うと、余裕がある。昼でもそれほど混雑しないということもあるが、ガツガツしていないところが、この店の魅力の一つだと思う。



温かいスープが嬉しい。調子に乗って、昼からワインを注文している。スープを肴にワインを飲んでいると、すぐにメインの皿が運ばれてくる。



私はステーキのランチを注文した。日替わりランチは、900円からだが、ステーキのランチはこの店では高価な部類に入る。それでもビーフステーキが、1,350円である。


肉と生野菜、ポテトサラダという、シンプルな盛り付け。肉は分厚いものではないが、一枚肉のしっかりとしたステーキである。鉄板焼き屋みたいな柔らかい霜降りのステーキではなく、歯ごたえのある赤身肉だ。しかしヨーロッパのビストロの気取らないランチメニューのように、オーソドックスで飽きない味だ。



ソースは、和風の照り焼きみたいなソースだ。ご飯にいったんおいて、食べる。ご飯についたソースで、ご飯も進む。肉と米を一緒に食べる。口の中でステーキ丼になる。ステーキと米の相性は最強である。


食べ終わると、もう他に特にすることはない。コーヒーが出たり、デザートがあったりするわけではないので、コートを着て、鞄を肩にかける。鞄から財布を出す。


狭いところで慌ただしく食べるのではなく、広い席を案内され、しっかり味わって食べる。ワインを飲んでもそんなに時間はかからない。待っている人もいない。空いているのに、好きでカウンターを選ぶ客もいるようだ。どちらにしても、選択肢がこちらにあるというのが良い。


『スエヒロ』は、接客もアットホームで、厨房の手際も良い。サッと店に入って食べ終わるとサッと出られるような雰囲気だ。そして私が立ち去った後の席には、次の一人客が向かっていく。

【スエヒロ】

住所/大阪府大阪市北区角田町9-25 新梅田食道街 1F
営業時間/[月〜金]11:00〜22:40(L.O.22:00)
[土]11:00〜22:10(L.O.21:30)[日・祝]11:00〜21:40(L.O.21:00)
定休日/無休