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醍醐寺の桜


醍醐寺に桜を見に行ってきた。


例年、4月にはどこか桜を見に行っているはずだが、見頃でなかったり、行った場所がそもそも桜の数がそれほど多くなかったりして、「春に桜を見に行った」という印象がここ最近あまり残っていない。思い出してみると、何年か前に根来寺粉河寺に行ったのを覚えているのと、さらにそれより数年前に上賀茂神社で桜を見に行ったこと、同じくらいの頃に吉野に行ったことが記憶に残っているくらいだ。一昨年、去年と、どんな桜を見たのか覚えていない。


今年は桜をしっかり見たい。それも圧倒的な桜。圧倒的な桜を見たい。今、どこに行けば圧倒的な桜が見られるのか。吉野はまだ早いだろう。私はピーンときた。醍醐寺だ。「醍醐の花見」で知られる通り、豊臣秀吉が花見の一大イベントをやったくらいのところなのだ。圧倒的に決まっている。


京都の洛南にある醍醐寺は、西国三十三ヶ所の札所でもあり、素晴らしい仏像を擁する古刹だ。三宝院の庭園も素晴らしいし、霊宝館も見ごたえがある。私が醍醐寺を訪れるのは4回目となるが、桜の季節は初めてだった。


醍醐寺への経路は色々あるが、とりあえず家を出て、大阪からJRに乗り、山科駅で降りる。山科駅あたりからすでに目立つのが醍醐の桜目当ての行楽客だ。普段の山科駅とは思えないくらいの混雑だ。私は最近あまり人が大勢いる行楽地に出かけることがないので、既に圧倒されている。


バスはお寺のすぐ近くまで行けるが、京都市営地下鉄で醍醐まで乗る。醍醐駅で大量の人が降りる。まるで地下鉄梅田駅や難波駅みたいに大量に人が降りる。今日は日曜日だったかなと錯覚する。平日の午前である。


醍醐駅からは京都らしくない、現代的できれいに舗装された団地のなかの道を歩いて15分くらいで醍醐寺の総門が見えてくる。駅を降りて道に迷うことはない。醍醐寺への参道は、祭りに向かう列のように、人の波が出来ている。



総門を抜けて境内に入ると、まるで別世界だ。桜の馬場と呼ばれる参道は、右を見渡しても桜。左を向いても桜。上を見上げると桜。という訳で桜に圧倒される。こんなにも贅沢な場所があったのか。


私は1,500円支払って拝観券を買い(拝観券を買い求める列ができている)、歩き出す。左手に三宝院、右手に霊宝館があるが、ひとまず置いておいて、まずは伽藍に向かう。桜の馬場を歩き、仁王門を抜けて、伽藍に足を踏み入れる。



金堂を横手の桜越しに撮影する。金堂には、醍醐寺の本尊である薬師如来像が鎮座している。



醍醐寺五重塔は京都最古のもの。高さ38メートルで、同じ京都の東寺や法観寺のものよりも低い。「醍醐寺に五重の塔があったんや〜」と近くの人が話す声が聞こえる。五重塔と言えば、興福寺や東寺は有名だが、醍醐寺五重塔はあまり有名でないのかもしれない。しかし千年以上昔に出来た京都でも最も古い建物の一つだ。


「桜酔い」という表現をしたくなるくらい、境内は桜に満ちている。不動堂、祖師、観音堂など伽藍を歩き、仁王門まで戻って来る。観音堂では、御朱印の列が凄まじかった。お堂の中の納経所から堂内を縦断し、入り口のスロープ付近まで行列が伸びている。平日でこれだったら、土日はどうなるのだろうか。


そして私は最初はスルーした三宝院の門を抜ける。ものすごい人だかりである。日曜日のヨドバシカメラみたいな状態になっている。多くの人の目当ては、ある一つの桜である。



三宝院の前庭にある枝垂れ桜。別名、「太閤枝垂れ桜」。太閤秀吉が愛したという桜というイメージが脳裏に浮かぶ。



スーパースター級の桜。歴史的な桜。



三宝院の庭園。桃山時代風の庭園であり、「醍醐の花見」に際して、豊臣秀吉が自ら設計をした庭だと伝えられている。私はこの庭園が大変好きだ。




庭園の拝観を終え、再び「太閤枝垂れ桜」を目に焼き付ける。


もうかなりの桜を見たはずだった。一生分くらいの桜を見たかもしれない。しかしそれで終わらないのが醍醐寺であった。霊宝館をまだ見ていなかったので、霊宝館の方に向かう。私は霊宝館の仏像のファンなので、最後に取っておいたのだった。仏像は素晴らしかった。しかし桜が圧倒的だった。



霊宝館の敷地に足を踏み入れると、すぐに視界に入って来る枝垂桜。見事だった。しかしこれだけで終わらない。それはまだ序章だった。



醍醐寺の境内でも有名な通称「醍醐深雪桜」。「太閤枝垂れ桜」と並ぶツートップの「有名桜」だ。




霊宝館の背面の散策路にも素晴らしい桜が控えている。醍醐寺は本当にすごい。



醍醐寺の桜は、ソメイヨシノ、枝垂桜、山桜、八重桜など沢山の種類の桜が、それぞれ違った頃に見頃を迎えるので、3週間も楽しめるという。これほど桜を一度に見たのは初めてだ。圧倒され、目が回りそうだった。しかしそういう体験をしたくて、わざわざ電車を乗り継いで、醍醐まで来たのだった。充実した一日だった。


醍醐寺の桜は、プロ野球に例えるなら、オールスターだ。お祭りでありながら、レベルも高い。これは人が集まるわけだ。日本全国、いや世界中からこの桜を見るために醍醐寺に集結しているのだ。醍醐寺の桜は圧倒的だった。