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『はふう聖護院』のサーロインステーキ

先日(まだ秋だった。1ヶ月以上前の話だ)、京都の聖護院の秋の特別拝観に行ったついでに、肉料理の名店『はふう聖護院』に行ってきた。『はふう』は、肉料理の名店で、各種グルメガイドの常連。聖護院店は、聖護院の西に、本店は京都御所の南にある。



秋晴れの一日。


 


特別拝観の後。不動明王をはじめとする仏像と素晴らしい仏縁を結んだ後に、肉なんて。あっさりしたものの方がふさわしいのではないか。良いのだろうか。良いに決まっている。


私は一人なので、カウンターに案内される。


コートを預け、カウンターに座り、メニューを眺める。995円の日替わりランチから、3,000円程度のビフカツ、ステーキ丼、1,580円のハンバーグ、1,750円のエビフライのランチ。いろいろある。私は4,500円の特上サーロインのランチを注文した。4,700円のフィレステーキと迷ったが、フィレよりは脂身が多い肉を食べたい気分だったので、サーロインを選んだ。


4,500円と言うと、居酒屋で飲み放題込みの値段である。普段のランチなら1,000円でも高いが、なかなか京都まで来ることはないので、私は数千円の節約よりも、一時の経験を買う。普段は安く済ませているし、聖護院のお不動さんにお参りしてきたので、たまに贅沢しても罰は当たらないだろう。


注文して、料理がすぐに出てくるわけではないので、辺りを見回す。そうやっている間に私のサーロインステーキが絶妙な火加減で焼かれているはずだ。


客は、一人客、カップル、地元の人、日本人観光客、外国人など様々だ。隣の二人客は、医学用語が自然に登場するその会話から、医師だろうか。ここは京大医学部付属病院が近い。また、見るからに高そうなスーツを着た男性客と、羽振りがよさそうな女性客。また、私の分身を見ているような普段着姿の男性の一人客。ランチは日替わりが1,000円程度からあるとはいえ、安い店ではないので、全体的には、お金を持っていそうな客が多い。私を除いて。


私は開店して間もないので、待たずに案内されたが、その後、次々に客が入り、2〜3組ほど並んでいる。平日なのに。観光シーズンでもあり、人気店なのだ。



そのうち私の料理が運ばれてくる。というかカウンター越しなので、「はいどうぞ」と言う感じで、目の前に置かれる。ランチの詳細は、生野菜のサラダ、付け合わせのパスタ、切り干し大根の小鉢(日替わりか?)、味噌汁。切り干し大根というのが京都らしい。そしてそれが薄味なのにきちんと出汁の味が生きていて京都らしかった。



肝心のステーキは、西洋料理のメインで出てくるタイプのステーキだ。鉄板焼きのステーキではなく、厨房で調理された状態で出てくるステーキだ。外側はしっかり焼き目がつけられている。中身は中心に向かうほど赤い。しかしきちんと火は通っていて、中心部まで温かい。絵にかいたようなミディアムの焼き加減。私はレアとかあまり好きではなく、ミディアムかミディアムウェルくらいを好む。このくらいが一番好きだ。


薬味は、酸味のあるポン酢ベースのソースと、マスタード、岩塩を好みに応じてつける。どれも甲乙つけがたい。素材が生きる形となっている。そして上に乗っているガーリックチップ。仕事のある日なら取り返しがつかないことになってしまうが、その日は休みで、ガーリック全然OKである。私はガーリックチップを載せた状態の一切れを、ポン酢の皿に投入して、ソースを肉に絡めて口に運ぶ。食材のうまみが口の中で弾ける。マスタードをつけるとドイツ風。ドイツの古い街のビアホールで食べる肉みたいだ。岩塩。これも合う。手で塩をつまんで揉むようにして、肉にふりかける。絶妙。


柔らかい肉は人を幸せになる。火に当たった外側の少しばかりの歯ごたえと、ぐにゅっとした中心部の柔らかさが絶妙なハーモニーを奏でる。適度にサシが入っていて、全然脂っぽくない。そして肉自体の甘さを感じる。良い肉を使っている。


さすがに4,500円払うだけあり、値段相応の肉。考えてもみれば、4,500円と言えば、鉄板焼きでステーキを食べるよりは安い。チェーンのステーキの店でも良い肉を選ぶとそれくらいする。4,500円と言うと高く感じるが、内容的には良心的なのかもしれない。


130グラムくらいでそれほど大きくないが、とても満足した。私はその日の幸福なランチを終えて、京阪電車の神宮丸田町の駅に向かった。


【はふう聖護院】
住所/京都府京都市左京区聖護院山王町8
営業時間/11:30〜13:30 17:30〜21:30
定休日/火曜日