USHINABE SQUARE

クラシック名盤・名曲と消費 生活 趣味

京都国立近代美術館・『東山魁夷展』・会期終了間際の平日

京都国立近代美術館で行われている『東山魁夷展』に行ってきた。

 

8月29日から行われていたので、そのうち行けるだろうと思っていたら、もう会期終了間際。この三連休で終わってしまう。

 

東山魁夷といえば、私は以前に長野市の『長野県信濃美術館・東山魁夷館』に行って以来のファンで、画集も持っている。現在、私が一番好きな画家かもしれない。今回の展覧会は、彼の生誕110年という大規模な回顧展で、これは今回の機会を失したら、次はいつになるのかわからない。

 

kaii2018.

exhn.jp

私は金曜日が休みだったので、早起きして京都まで行ってきた。平日なのでそこまで混んでいないと予想していたが、万が一、チケット売り場が混雑していたら、出鼻をくじかれるので、私は予めローソンチケットでチケットを購入していた。

 

f:id:ushinabe1980:20181005110559j:plain

 

京都市営地下鉄東山駅で降りて地上に上がり、三条通を少し歩き、神宮道のところで左に曲がる。そうすると平安神宮の大鳥居が見えてくる。左右に割烹やうどん屋、和菓子屋、高級そうなマンションが整然と立ち並ぶ神宮道を北に向かって歩く。左手に今回の会場である京都国立近代美術館があり、右手には京都市美術館がある。京都市美術館は現在改装に向けた工事を行っている。

 

チケット売り場の人だかりはまばらで、行列にはなっていなかった。しかし土日祝の三連休はどうなっているのか想像がつかない。

 

東山魁夷展』は3階から始まる。階段で上るが、エレベーターの出口から入る入口と、階段から入る入口と、2ヵ所になっており、階段からの方は、狭いうえに、右に行くのか左に行くのかはっきりせず、最初の導線に躓いている印象で、団子状態となっている。しかし、そこを抜けると、混雑してはいるが、数珠つなぎというほどではなく、しっかりと絵と向き合って鑑賞することができた。

 

◇  ◇  ◇

 

展覧会の構成は、『1.国民的画家』、『2.北欧を描く』、『3.古都を描く・京都』、『4.古都を描く・ドイツ、オーストリア』、『5.唐招提寺御影堂障壁画』、『6.心を写す風景画』の全6部構成となっている。

 

まず入ってすぐの左手に『残照』がある。そして右を向くと『道』が見える。全部が有名作品と言っても過言でないほど、よく知られている作品ばかりだが、繊細な筆遣い、微妙な色遣いといい、実物大の大きさから得られる迫力といい、原画に触れることの経験の大きさを感じるものだった。どちらの絵も東京国立近代美術館の所蔵で、私にとっては原画は所見だった。

 

続いて『北欧を描く』、北欧シリーズでは、『映象』、『冬華』が心に残った。この日は一日、蒸し暑い日だったが、このエリアは心情的にとても寒く凍えるようだった。

 

『古都を描く・京都』シリーズでは、『花明り』の前でしばらく足を止める。円山公園の夜桜を描いたこの作品のように美しくて幻想的な桜は写真でも見たことがない。そして、光悦寺の茶室を囲む光悦垣を描いた『秋寂び』。『年暮る』では、京都の年の暮れの雪景色が描かれている。京都に住んでいた時、年末、こんな雪の時があったと思い出した。『東福寺庭』。私は趣味で写真をやるので、こういう構図がとても勉強になる。こういうふうに切り取るのかと。相当思い切っている。なのにこれ以上思いつかない。『散紅葉』。こちらも光悦寺の紅葉が描かれている。

 

『古都を描く・ドイツ、オーストリア』シリーズでは、私が特に好きな作品たちと出会う。私は日本の写真家が撮影した西洋の写真がとても好きで、それは理由が何なのかわからないが、同じように、日本の画家が描いた西洋の絵がとても好きだ。『晩鐘』、『窓』、『霧の町』『静かな町』。私の中では、モーツァルトの音楽が流れていた。

 

唐招提寺御影堂障壁画』シリーズは圧巻だった。何しろ唐招提寺の御影堂内部を再現してしまったのだ。まず、鑑真の故郷である揚州の風景を描いた水墨画は、初めて挑戦したということだが、初めて云々というレベルではない。同じスタイルである。真の巨匠は道具を問わない。鑑真が渡って来た海を描く『濤声』。そして『山雲』の前に立った時、私は美術館の中ではなく、霧の中、和歌山県の熊野あたりの山中にひとりぽつんと立たされているような錯覚を覚えた。圧倒的なリアリティを持った傑作で、自然の声を聞いたようだった。

 

これで3階の展示は終了となり、4階に階段で上る。

 

4階の展示は、これまでの展示と比べて数は少ないものだったが、『心を写す風景画』というテーマで、印象的な作品が多かった。『白馬の森』、『草青む』、『緑の窓』、『行く秋』、『木枯らし舞う』がよかった。

 

全体的を通してみると、私が好きな作品ばかりだったということもあるが、今年行った中で、ベストの展覧会に挙げたい。平日にしては混雑していたが、ゴッホ展や、フェルメール展、伊藤若冲展などのハイパー(スーパー)混雑の催しと比べると、全然ましだった。十分に足を止めて、時間をとって、絵に集中できる。しかしそれも京都での話。より多くの人が集まる東京ではその限りではないのかもしれない。

 

とても素晴らしい展覧会に、会期終了間際だったが、行くことができて良かった。しかしあまりにも素晴らしかったので、東京での展覧会にも行きたい気持ちになっており、困っている。