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ユリアンナ・アヴデーエワとブリュッヘン・18世紀オーケストラのショパン

2012年に録音されたアヴデーエワショパンのCDを聴いている。指揮はフランス・ブリュッヘン、オーケストラは18世紀オーケストラだ。


このCDの特徴を一言で述べるのなら、歴史的なピアノとオリジナル楽器オーケストラの共演でかつ空前絶後の名演ということになる。


Chopin: Piano Concertos Nos. 1

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この演奏でアヴデーエワは、スタインウェイヤマハのピアノではなく、ショパン没年の銘器「1849年製のエラール」を使用。楽譜には、ヤン・エキエル校訂のナショナル・エディションを採用している。ショパン国際コンクールの覇者が、モダンピアノを使用して演奏する機会は多いはずだし、ファン(リスナー)からはそういう演奏を望まれているはずだが、アヴデーエワはそういう道を選ばない。私もこのCDが発売されたとき、意外で、もう少し言うと少々、残念に思ったものだった。しかい聴いてみてそんな予想は見事に裏切られた。凄い演奏だった。仮にモダンピアノの録音であれば、ショパンコンクールのライブ録音という素晴らしい演奏が残されている。違ったアプローチからショパンに迫ってみたいという気持ちは一流の演奏家として当然持っているはずのものだ。そしてその結果、この演奏は違ったアプローチからの最高峰の演奏となっている。


収録される1番と2番は、2番から先に演奏される。よく似たタイプの2曲だが、このCDではより大きな規模の一番を後ろに持ってきている。演奏を聴いてまず感じるのが、オーケストラパートの味わい深さだ。ピアノパートに比べ、面白くないといわれることの多いオーケストラパートで、しかも古楽器オーケストラであるのに意外だった。個々のパートが溶けあうのではなく、それぞれの色を主張し合っており、並走する走者が横一線に並ぶようなスリリングな演奏となっている。各パートの競演によるなんとも豊かな響き。密度が濃く、「解像度高め」の演奏となっている。オーディオファンの人があれば、このCDは是非揃えておいてほしい。音がすこぶる良い。


アヴデーエワのピアノは、テクニックは完璧で、テンポも心地よく、古い楽器の限界を感じさせない。気持ちを持っていかれるような没入感はアヴデーエワならではの長所だ。とりわけ第1番の第2楽章の美しくも儚い旋律。恐るべき表現力。忘我の境地に至るように音楽の流れに身をゆだねる。他の楽章もすべて素晴らしく、全体的には叙事詩のように壮大でロマン溢れる熱演となっている。


また協奏曲の演奏としてもブリュッヘンの音楽作りと完璧に調和し、これ以上注文の付け所のない演奏となっている。


ショパン国際コンクールのライブCD