大植英次×ヒラリー・ハーン×パガニーニ・ヴァイオリン協奏曲第1番
1979年生まれのアメリカ生まれの天才ヴァイオリニスト、ヒラリー・ハーンの新譜はパガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番だ(シュポア:ヴァイオリン協奏曲第8番も収録)。
10月25日発売だが、輸入盤は既に発売されているので、私は盆休み前に手に入れた。
協奏曲のCDだけあってソリストが注目されるのは仕方がないが、オーケストラは、大植英次・大フィル音楽監督が振る、スウェーデン放送交響楽団による演奏だ。
これだけで、「買い」の要素満点だ。
このCD、私がいまいちばん愛聴しているCDだ。
「悪魔に魂を売り渡した」とも噂された超絶技巧のヴァイオリニストだったパガニーニの曲だけあって、ヴァイオリンの表現が凄い。
難曲として知られ、数多くのヴァイオリニストがこの曲に取り組んでいるし、録音も沢山ある。
しかしこのCDの圧巻はこの難曲を、いとも簡単に弾いているように聴こえる、ヒラリー・ハーンの余裕だ。
演奏のタイプを分類すると、彼女の演奏はテクニカルでスマートだ。
情緒に訴えてくるタイプではない。
素人の私が聴いてもわかるくらい、他の演奏家と比べてもテクニックがずば抜けている。
どこまでも伸びていくような高音。
超絶技巧とスピードに破綻しないテクニック。
アッサリ系の演奏だが、私はこういう演奏が大好きだ。
でもテクニカルな演奏にありがちな冷たい印象がなくて温かいのだ。
そういう意味で、稀有な名演といえる。
◇ ◇ ◇
ヒラリー・ハーンは度々、来日しているので聴きに行かれた方は多いと思う。
私は一度しか実演に接したことがないが、CDでも聴く限りでも、新譜リリースの度にスケールが大きくなっていくのが感じられる。
音楽家として非常に充実した歩みを見せている。