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神戸西元町・行列の名店『洋食の朝日』

神戸西元町にある洋食店。「行列」というキーワードと切っても切れない『洋食の朝日』。私は混雑や行列が苦手で(誰でもそうかもしれないが)、そうした店は避けていた。しかし先日、全く予定のない休日ができて、並んでみようという気になったのだった。平日の休みということもあり、もしかしたら空いているかもしれない、という淡い期待があった。


(↓お店が紹介されている『あまから手帖』のムック)



この店の行列について、行列が二重になっているとか、朝から混んでいるとか聞く。しかし混んでいる時は開店前を早めて入れてくれるということも何かで読んだ。それなら何時に行けばよいのだろうか。開店の11時に着く位が丁度よいだろうか。11時前に店の前に立つことを目標に私は家を出た。


梅田から阪急電車に乗り、久しぶりの休みで機嫌よくウォークマンで音楽を聴いていた。キンドルで本を読みながら車中、時間を過ごしていたら、阪急花隈駅で降りるはずが、間違って三宮で降りてしまう。次の電車はなかなか来ず、時間をかなりロスしてしまった。


店に向かう途中、すでに遠くで人だかりができていることに気付く。私は目を疑ったが、お店の行列に他ならぬものだった。平日の11時半(土日は営業していないということは後で知った)。店まで着くとすでに行列ができており、私の前には15人くらい。店の中にも待つスペースがあるはずなので一体何人待っているのか。私は最悪のタイミングで行ってしまったのか。


ここまで来て11時半。他の店を探すという選択肢はなかった。私は列の最後に並ぶ。しかしその後も次々に人がやってきて、やがて列は歩道の真ん中を開けて左側と右側の二列になった。列の進行は意外に進まず、時間が過ぎていく。店の前にベンチがあるが、そこまでが遠い。風が強く寒い日だった。ダウンジャケットのファスナーを首まで締めて風の当たる部分を少なくする。先客が少しずつ店に吸い込まれていく。そしてベンチに「昇格」し、ようやく店内に通される。店内にも4人ほど待つスペースがあり、そこからは早かった。中で待っている間に注文を聞かれる。私は朝、家を出た時からビフカツに決めている。1550円。ビフカツはきちんとした店で食べると2000円台が普通。『洋食の朝日』はきちんとした店なのに、これは破格の安さと言ってよい。ようやく順番がやってくる。店内は港町の洋風の食堂という風情で、何となく昔元町にあった『洋食いくた』みたいな感じだった。左手の奥に増築したようなテラス席があり、そこにはカウンター的に使えそうな、6人掛けの大テーブルがある。その席が空いたようで私はそこに通される。ついに席につくことができた。


わたしはダイバーウォッチをしていったので、ベゼルを回しておいて待ち始めた時間から時間を計っていたが、最終的には50分が経過していた。つまり、こんなに混雑していても50分待てばよいのであった。その価値があるかどうかを決めるのは料理だ。さて、どんな料理が出てくるのか。



既に注文を済ましていたこともあり、10分もかからずに料理が提供される。噂に違わず。これはみんなが「並んで当然」だ。将棋に例えると、洋食というジャンルにおいて、飛車・角クラスのビフカツを、桂馬くらいの価格で食べられるのである。神戸で食べるビフカツは本場なので、たとえ慎ましいビフカツであっても幸せなのに、これは大変豪勢なビフカツである。



ミディアムレアの断面が美しい。洋食の王様、ビフカツを箸を使って食べる贅沢。私は朝を抜いてきており、さらに50分の待ち時間のおかげでかなり空腹だった。そんな状態で人気店のビフカツを食べるときの幸せの度合いは50分の待ち時間を帳消しにするものだった。これが仮に2時間ともなれば決断に迷うが、50分ならば、立って本を読んでいれば我慢できるものである。私は読みかけの本がかなり進んだことを合わせても、納得した。私は食べ終わると、すぐに会計を済ませて店を出る。行列は相変わらず二列のままである。11時半に行っても、12時半に行っても、状況はあまり変わらないのかもしれない。しかしその先に、待ち時間を超えた満足度があることは確かだった。



その後、せっかくこの辺までに来たのだからと、関帝廟に行ったあと、本願寺神戸別院にお参りして、再び花隈駅から阪急電車に乗って大阪に帰った。

【洋食の朝日】

住所:神戸市中央区下山手通8丁目7−7
営業時間:11時00分~15時00分
定休日:土・日曜日