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ユリアンナ・アヴデーエワ


先日、NHKN響アワーで、ショパンコンクールの覇者、ユリアンナ・アヴデーエワN響と共演してショパンのピアノ協奏曲第1番を演奏した映像を見た(指揮はシャルル・デュトワ)。最近、演奏会に行くことがなかったので、音楽は耳で聴くばかりだったが、映像で見ると伝わってくる情報が段違いに多い。ときには演奏会に足を運ばないと、と思った。


アヴデーエワのスタイルは、とてもはっきりしている。うまいだけのピアニストではなかった。強靭な音を持っている。解釈はポピュラーなアプローチではなく個性的だが、確信に満ちている。そして解釈に基づいて曲をまとめ上げる構成力が素晴らしい。感情移入も見事だ。弱音が言葉にできないほど美しい。また、少々のミスでは動じない。堂々としたステージマナー。コンクールの出場者(優勝者)にして、すでにスタイルを確立していて、さすがに優勝者だと思い知った。一言でいうと、玄人の演奏家である。感動的で見事な演奏だった。


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ユリアンナ・アヴデーエワは、2010年に開催された第16回ショパン国際ピアノコンクールの優勝者だ。


ショパン生誕200年のメモリアル・イヤーに、マルタ・アルゲリッチ以来、45年ぶりという女性優勝者で、ロシア人で、しかも美人ということもあって(ちなみに既婚。既婚ということで少し残念に思うのはなぜだろう)、不況に苦しむクラシック音楽界にとって嬉しいニュースとなった。


コンクールの期間中は、ピアノ協奏曲第1番が作曲された場所に行ったり、ショパンの心臓が安置されている聖十字架教会を訪れたり、ショパン博物館を訪れたりと、ショパンの音楽に向き合う真摯な姿勢も伝えられた。こういう精神が音楽性となって出てくる。コンクールでもあるレベルを越えると、審査員の好みになり、そうなると音楽性が勝負を決める。技術的には高度だと言われる日本人ピアニストが全員、決勝に残れなかったのはそんな部分に手掛かりがあるのか。


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YOU TUBEショパンコンクールの映像にリンクしています。ショパンコンクールの公式サイト(→こちら)では出場者の全演奏を見ることができます。)

ショパン・幻想曲(op.49)


■ワルツ(op.34-1)


■バラード第4番(op.52)


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「今回のコンクールのレベルの高さには驚きました。どなたかが言ったのですが、『審査』をしたのではなく、『発見』をしたのだという印象を持ちました。」とは、審査員を務めたマルタ・アルゲリッチの一言。


ただ、私はどうしても前回のコンクールの覇者ラファウ・ブレハッチと比べてしまう。ブレハッチの実演に初めて接した時、これは大変なピアニストが出てきたものだと思った。ブレハッチなら、アルゲリッチが出場した大会を除いて、いつの大会に出ていても優勝しただろう。まるでショパン本人が弾いているようで、そんなショパン弾きは他にはいない。破格の才能を持ったピアニストだと、私の中では最上位にいる。


ショパン・コンクールはクラシック音楽のコンクールの中でもっとも有名なタイトルだが、過去の優勝者すべてが歴史に残るピアニストになっているわけではない。例えば、内田光子氏が2位になった1970年の大会で彼女を抑えて1位になったピアニストについて言及する人は現在ほとんどいない。ブーニンが優勝した1985年の大会でジャン=マルク・ルイサダは5位だった。だから大会の順位が音楽家の才能を決めるものではないということを誰でも知っている。アルゲリッチポリーニやツィマーマンやブレハッチのような本物の天才が、毎回毎回、出てくるわけではないということもよくわかった。クラシック音楽という世界は厳しい世界だ。


とはいえ、現役のチャンピオンの実力はテレビでもわかるほど、やはり凄まじかった。瞬間最大風速がいま来てますという感じだ。


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