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唐招提寺と茶粥の旅


今日は休みだったので、子供を保育園に送った後、奈良の唐招提寺まで行ってきた。


むかし一度行ったのだが、10年間にも及ぶ金堂大修理がちょうど始まった頃で、目当ての金堂は白いシートに包まれていた。インターネットもいまほど盛んでない時代で、修理などの情報が不足していたので、わざわざ電車を乗り継いできたのに、よりによってこんな時に修復をしている運命を呪った。「徒労」とはこういうことを言うのだろう。しかもこの工事は長期である。10年とは。「あと10年近くも待たないといけないのか、その時に私は関西にまだ住んでいるだろうか」と思ったものだった。


が、10年はあっという間で、いまでも関西に住んでいて、いまのところ他府県に引っ越しする予定もない。10年は意外に早いし、変化していない相変わらずなことも多い。


そんなわけで、もう一度訪れたかった唐招提寺まで行ってきた。保育園の門を出て車のエンジンをかけて走り出し、ショパンスケルツォ4曲を通しで聴いて、即興曲を3曲聴いて、ポロネーズを1曲聴いて、ポロネーズを聴き終わるころに、唐招提寺の南大門が見えてきた。


唐招提寺・金堂



入場料は、600円。あのとき無情にも白いシートで覆われていた金堂は長期間に及ぶ修復を経て、完全に蘇っていた。というかパワーアップしているんじゃないかと無責任にも思った。実質的に初めて見たのだが、南大門から見える金堂の姿は、私が好きな奈良の風景のベストワンになってしまった。


金堂の中には、右に薬師如来立像、中央に盧舎那仏坐像、左に千手観音立像が並ぶ。博物館で見る仏像もよいが、仏像は元の場所にあってこそだと思った。私は信心深い方ではないが、手を合わせたくなった。こういうのって無意識だ。しばらく見とれた。


唐招提寺・講堂



講堂には本尊弥勒如来坐像、持国天立像、増長天立像が立つ。仏教と仏像について以前に本の知識を入れたことがあったが、全部忘れてしまっていた。こんなときに後悔する。そしてまた勉強しようと思うのだが、そんな気持ちは家に着く頃にはすっかり忘れている。でももう一度学んでみたいという気持ちにさせられる。「日本が唐にならって近代的な律令国家となろうとしていた時代の積極的な空気と、古代人の旺盛な生命力が感じられる」なんて言ってたりして、何とか言葉にしたいと思うのだが、不勉強にして、感動がうまく言葉にならない。


唐招提寺・御影堂〜開山御廟



御影堂に向かう途中には松尾芭蕉の句碑がある。

「若葉して御目の雫拭はばや」(芭蕉


御影堂には、芭蕉も拝した鑑真和上坐像が収蔵されている。年に数回だけ公開される。境内のいちばん奥、北東には鑑真の墓所、開山御廟がある。ここはひんやりとしていて静謐な空気が流れている。ここだけがゆっくりと時間が流れるようだ。深い緑色の苔が美しい。寒いなと思ったら、池に氷が張っていた。寒さを忘れて境内を歩きまわっていた。



■茶粥を食べる


昼食は奈良ロイヤルホテル内の『竹の家』という和食料理店で、茶粥を食べた。野菜の天麩羅や煮物、漬物がつく茶粥御膳、1,500円。よく関西では「奈良にうまいものなし」(失礼!)と言われるが、この店は大変に洗練されているし、味もよかった。



まずは湯葉のお造り。湯葉ってけっこう好きだ。海のない奈良県ではこんなお造りが最適。上品で、冷たくて、背筋も伸びる。



茶粥。伝統的な茶粥ではなく、(これでも)現代風にアレンジされている。私が過去に初めて食べた茶粥は伝統的すぎて味がなくて、「(今後は)茶粥はもういい」と判断したが、今日のは食べやすかった。右下に写っているのが餡(タレ?)。取り皿に移した茶粥に好みの分量の餡を落として混ぜると、味に変化が出てくる。薬味もいっぱいある。ちりめん山椒で上品な味にしたり、大根おろしでさっぱり食べたり、バリエーションが豊富だ。「わ〜い今日は茶粥だ!」というほどおいしいわけではないが、日頃は肉食や刺激的な外食が多いので、おだやかで自然な味でよかった。


時間があったのでここから近くの薬師寺東大寺も見て回ることもできたのだが、唐招提寺で充実してしまったので、帰ることにした。そして帰るとすっかり仏像と仏教の勉強をするという気持ちは忘れて、雑誌を読んだりテレビなどを見ている…。


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