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倉敷の旅


先日、倉敷に一泊二日の旅行に行ってきた。前職のときには仕事の出張で毎週のように岡山や倉敷に行っていたので、まさかプライベートの旅行で倉敷に泊まるなんて考えられなかった。



倉敷に着く前に腹ごしらえというわけでもないが、往きの新幹線では、駅の売店で「すえひろの天むす」を買った(「すえひろの天むす」は、私が好きな駅弁?テイクアウト?中食?のうちの一つだ)。ご飯が固めに炊いてある点と、一つ一つが小さいのでいくつでも食べられるのが高ポイントだ。塩味に胡椒がピリッと効いていて美味しい。



初めて倉敷を訪れたのは、もう10年近く前のことだった。盆休みのある日。青春18切符で西日本を周遊しようと思い立って、JRの駅でいつもとは反対方向に向かう普通電車に乗って、何時間もかけて最初に降りた駅が倉敷だった。よくもまあ、大人にもなってこんな冗談のような、スケールの小さな旅行を思いついたものだと思うが、それが最初の倉敷体験だった。暑い夏の盛り、駅前の通りをトボトボ歩いて行って辿り着いた白い壁や蔵がとても感慨深かったのが懐かしい。



その頃に比べると、やけに大きく感じる駅のビルはハリボテのようだし、商店街はシャッターが閉まり、チボリ公園も閉園してしまって、日本の地方都市の駅前の寂れ方を象徴するようだと、改めて思った。


郊外にショッピングモールがあって(多くはイオン)、駅前が寂れて、「なんとか銀座」とか名前の付いている商店街が「シャッター銀座」になっている。


それでも美観地区に行くと、かなりの賑わいで、やっぱり西日本では有数の観光地なんだと実感する。考えてみると、大阪からだと、新幹線で1時間、車でも3時間程度で着く距離にあるので、日帰り旅行にも手ごろである。



私は美観地区から少し入った、古くさびれた路地が好きた。古い街並みが博物館の展示のようにありがたく保護されているのではなくて、アンティークと日常が同居した状態で時を重ねたような通りがいくつも残っている。例えると黴のようでもあるし、生活の煤のようでもある。歴史と日常の匂いが強く残っていて、昔育った田舎を思い出す。古い家。分家と本家。田んぼ。神社の前の大きな階段。日本の昔の地方は確かこんなだったというような感覚をもつ。



途中で立ち寄った「アンティーク・エ・カフェ・フェリシテ」というカフェ。名物のスコーンは注文を受けてから焼いてくれる。そのため、15分くらいは待たされるが、その待ち時間を補って余りある感動が得られる。外側はカリッとしているのに中はふかふかで、ぜんぜん甘くない中に豊かな卵の匂いが感じられる。ブルーベリージャムとクリームチーズをつけて食べる。満足度はかなり高い。



■倉敷・菊寿し



美観地区からほど近いところにある。倉敷を代表する名店のうちのひとつ。菊寿し。瀬戸内海の旬が味わえる。メニューに金額は一切書いていない。その日のお薦めのお造りを頼んだら、サーモンとヒラメとシャコが出てきた。シャコは殻つき。さっきまで生きていたシャコなんてめったに食べられない。新鮮なシャコの造りは甘味がある。ヒラメも透き通るように白い。まず、これだけで2,000円は覚悟。


その後、寿司を握ってもらう。まずお任せで注文すると、エビ、タコ、ハマチ、アナゴ、数の子、ウニ、イクラが次々に登場する。まだまだお腹がすいているので、サヨリ、ママカリ、サワラ、マグロ赤身。最後に赤貝。高級ネタだが、注文してみる。水槽から貝をすくってその場で捌いてくれるので、身の握りだけでなく、ヒモの軍艦も食べられるのがうれしい。


さらに、ママカリの酢の物を注文したり、貝柱を焼いてもらったり、シャコの唐揚げを頼んだりして、これはひとり10,000円は超えるぞ、と思ったら、ひとりあたり7,000円でおつりが出た。


■美観地区のライトアップ


食べ終わって店を出ると、ちょうど美観地区のライトアップの時間だった。ライトアップというにはかなり控えめな明かりで、人出があったから良かったものの、人通りの少ない通りでは幽霊に遭遇しそうな雰囲気だった。



人恋しくて話しかけた人が、振り返るとのっぺらぼうだった、というようなこともありそうだ。ラフカディオ・ハーンの『怪談』の世界のようだと思った。


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