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アラーニャ&ゲオルギューの『ラ・ボエーム』


今日は通勤のときプッチーニの『ラ・ボエーム』を聴きながら車を走らせた。通勤オペラだ。オペラとしてはそれほど長くないので(1時間45分くらい)、行き帰りで聴き通せるかと思ったら、じっさい全曲ちょうど聴き終えて、もう一回一枚目の冒頭を聴くくらいの時間が残った。



ラ・ボエーム』は、プッチーニのオペラの中では、『トスカ』、『蝶々夫人』と並んで、もっともよく聴かれている屈指のオペラである。ストーリーを少しだけ書くとこんな感じだ。

クリスマス・イブのパリ、カルチェ・ラタンの古いアパルトマンの屋根裏部屋。詩人のロドルフォと画家マルチェッロが寒さに震えながら仕事をしている。寒さが厳しい冬のため、暖をとるためにロドルフォが自分の書いた原稿を暖炉にくべる。そこへ、(クリスマス・イブで)質屋で換金なんかできなかったと嘆きながら哲学者コッリーネがやってくる。暖炉の中で燃えている台本を見て、「火の中でドラマが燃えている」、「さあ第二幕だ」なんて3人でハイになっている。そこへ音楽家ショナールが肉、菓子、ワイン、葉巻を携えてやってくる。思いがけない差し入れに一同、大騒ぎとなる。そんなとき、大家が家賃の催促にやって来るが、ワインをふるまい、おだて、調子に乗って罵倒し、ついには追い返す。盛り上がった勢いで、みんなで外出しようという話になるが、ロドルフォだけ原稿を書くと言って家に残る。そこにお針子のミミが蝋燭を借りにやってくる。そして、自分の鍵を落としてしまう。暗がりの中、落とした鍵を二人で探す手と手が触れ合い、二人は恋に落ちる。


そんなわけで、第一幕が賑やかにはじまるのだが、最後はプッチーニらしい悲劇で幕を閉じる。女性を不幸に落とすプッチーニのオペラを敬遠するファンや音楽家も少なくはないが、これはあくまでもフィクションなので、プッチーニのオペラ、私はわかりやすくて好きである。これは、簡単に悲劇の予測がつく韓国ドラマを突っ込みつつ夢中で見てしまう心境に近い。


私が『ラ・ボエーム』がすきなところは、19世紀のパリの雰囲気の中で、若者たちの自由な生活ぶりが生き生きとした生命力を持って伝わってくる点だ。タイトルそのまま、という感じなのだが、カルチェ・ラタンでのボヘミアンな生活の貧しくても夢のある暮らしが、プッチーニ流の素晴らしい音楽作りのなかで自在に描かれている。


悲劇的なストーリー、魅力的な登場人物、燃えるような音楽、プッチーニ節全開のオペラである。


『冷たい手』、『私の名前はミミ』といった名アリア、マルチェッロの別れた恋人のアリア『私が街を歩けば』、コッリーネのアリア『古い外套を』など独唱も素晴らしく、オペラを初めて聴く人がこれを聴いたら、とりこになるに違いない。


Puccini: La Boheme

Puccini: La Boheme


CDは、ロベルト・アラーニャテノール)によるロドルフォと、アンジェラ・ゲオルギュー(ソプラノ)のミミによるコンビで素晴らしい録音が残されている。歌が上手いだけでなく演技も巧く、しかも美男美女というこの二人はこの録音の少し前に結婚したくらいで、集中力が高く、魂のこもった歌を聴くことができる(現在は離婚)。アラーニャは若く情熱的な詩人を、ゲオルギューは貧しくても純真で高貴な心を持つお針子を、演じている。どちらもいまより若く、プッチーニをやるのに一番いい時期だったのではないかと思えるような熱演を聴かせてくれる。


指揮はイタリア人のリッカルド・シャイー、演奏はスカラ座なので、これ以上ない陣容と言える。


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