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信州2012初秋(2)安曇野編


信州旅行の2日目は、『大王わさび農場』に行ってきた。


 


どこまで続くのか見通せないほど遠くまで広がる土地に、ワサビが栽培されている。畑というよりは水路で、隅々まで水路が掘られ、ワサビの一本一本にまで万遍なく水が行き渡るようになっている。そして、まだまだ強い日差しを避けるため、全体が黒いビニールシートで覆われている。シートによって、冷たい水の冷気が逃げないため、覆いの下は気温が低く、ワサビの栽培に最適な温度となっている。流れる水は冷蔵庫の中のミネラルウォーターのように大変冷たい。ワサビがこうやってできるというのを初めて知った。長いこと生きてきても知らなかったことってたくさんある。



水車。小川。澄みきった流れ。冷たい水。頭の中にベートーヴェン交響曲第6番『田園』が響く。この風景には『田園』の第二楽章が最も似合う。



多くの日本人が頭に描く「心の中の田舎」はきっとこんな風景のはずだ。


『大王わさび農場』は入場無料というスポットである反面、売店が充実している。わさびコロッケにわさびチキン。わさびソフトクリームが名物だ。私は普通のバニラのソフトクリームを食べた。わさびソフトクリームはツーンと鼻を刺す辛さらしい。


◇  ◇  ◇


私が信州に行くときに一番楽しみにしていることは蕎麦を食べることだ。水がおいしい土地は米と蕎麦がおいしい。


昼食は穂高にある、日本中に良く知られたお店『そば処上條』で食べた。メニューも豊富で、何を注文したらよいか迷う。また、もともとはペンションであったため、建物は洋館風で、デザートにアップルパイのように洒落たものもある。



鴨の薫製。580円。私は鴨肉が大好きだ。



天ぷらの盛り合わせ。1,150円。シイタケ。信州の川魚。カニ身。トマト。南瓜、サツマイモなど。中でも良かったのは、みっちりと身が詰まった海老。獲れたてのように締まっている。良い素材を使っている。ここが内陸部であることを忘れてしまう。



そしていよいよ蕎麦が運ばれてくる。私が注文したのは「天恵そば」というメニューで、温泉たまご、小エビ、そば焼味噌、揚げたそば米、胡麻など、十種類の具が乗った冷たい蕎麦。1,260円。好みでつゆをかけて食べる。


この「天恵そば」をはじめ、蕎麦メニューには必ず「水蕎麦」というものが必ずついていて、これが凄い。水蕎麦とは、安曇野の湧き水に浮かべた少量の蕎麦で、本当に蕎麦だけの味しかしない。つまり、蕎麦だけの味と香りを楽しむために提供される。


蕎麦の道は深い。全然違う道から蕎麦打ちの修行の道に入る人がいるくらいなので、蕎麦の道というものはきっと抗えない魔力のある道なのだと思う。サラリーマンをやめたりしてそば職人を目指す人は、おいしい蕎麦を打つこと以外には、空気と水にしか興味がない人も多いはずだ。そういう人はそして駅前に店を構えるような野暮なことはしない。「辺鄙なところにある名店」(しかも平日の昼しか営業しないとか)ランキングをしたら、かなりの確率で蕎麦屋が入ってくる気がする。そのあたり、蕎麦というものの特殊性を物語っている気がする。


蕎麦を打つ人は、レベルが上がっていくと、「職人」から「アーティスト」へ、「アーティスト」から「仙人」へと深化の道を辿る。「職人」の店は客を呼べる。「アーティスト」の店はファンを呼べる。「仙人」の店は信者を呼べる。『そば処上條』は「アーティスト」以上の店だった。こういうレベルの高い店で食事ができてとても満足した。

≪そば処上條≫

住所:長野県安曇野市穂高5256-1
営業時間:昼11:00〜15:00
定休日:毎週月曜日(月曜祝日の場合は翌日


その後、大町温泉郷日帰り温泉に立ち寄った後、前日と同じように日用品と食材を買って、義母の別荘に帰った。日が暮れるまでにはまだだいぶ時間があったので、日頃なかなか時間をとれず、習慣から欠落した行為になってしまっていた読書をじっくりした。多忙を理由に何度も投げ出していた長い小説を読み始めた。半分くらいまで進んだ。


すっかり暮れた頃に夕食ができ、食べた後はまた読書をしたり、子供とかくれんぼをしたりして、長い夜を過ごし、風呂に入り、信州の最後の夜は終わった。


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