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フェルメールを観る『マウリッツハイス美術館展』


今日は一日休みだった。休みになると行動的になる。いま関西で開催中の注目の2つの美術展のうちのどちらかに行こうと思っていた。一つはフェルメールの作品が2枚来日している『マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランドル絵画の至宝』(以下、『マウリッツハイス美術館展』)で、もう一つは「西洋絵画の400年」というキャッチコピーで宣伝されている『大エルミタージュ美術館展』。


順当に選ぶと、会期が短く12月には終わってしまう『大エルミタージュ美術館展』の方だ。しかしいま観たい気分だったのは『マウリッツハイス』の方。『大エルミタージュ展』は秋の京都散策も兼ねて、11月に行くことに決めて今日は『マウリッツハイス美術館展』の方を選んだ。



『大エルミタージュ展』的な西洋絵画の歴史の分類で行くと、フランドル絵画を含む16世紀から17世紀のオランダ絵画の展覧会ということになる。私はこの時代のオランダ絵画が大好きだ。


折角の美術展なので、フェルメールについて書かれた本を持っていくことにした。美術に造詣の深い、フェルメール通でもあるジャーナリストの朽木ゆり子氏によるもので、世界に点在するフェルメール作品を現地に行って自分の足で歩いて確かめようという、ワクワクするような内容の本だ。


フェルメール全点踏破の旅 (集英社新書ヴィジュアル版)

フェルメール全点踏破の旅 (集英社新書ヴィジュアル版)


徐々に気分が高まっていく。



早めの昼食を済ませて、会場である神戸市立博物館に昼過ぎに着いたのだが、行列はなくスムーズに入館できた。フェルメールの作品の中でももっとも有名な『真珠の耳飾りの少女』が来ているので、相当な混雑を覚悟したが、予想ほどではなかった。館内の混雑は適度で、許容できる範囲。ただしこれは平日の話。公式サイトを観ると土日は待ち時間が発生するようだ。


真珠の耳飾りの少女』のコーナーだけ、間近で観たい人向けの列が作られ、並んで観賞するシステムだった。間近で観なくても構わないという人は、一切並ばずに最後まで行ける。私はこの絵を楽しみにしていたのでもちろん並ぶ。


http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/66/Johannes_Vermeer_%281632-1675%29_-_The_Girl_With_The_Pearl_Earring_%281665%29.jpg/335px-Johannes_Vermeer_%281632-1675%29_-_The_Girl_With_The_Pearl_Earring_%281665%29.jpg*1


この絵を観るのは、初めてではない。2004年8月にオランダのデン・ハーグに行ったとき、マウリッツハイス美術館で観た。そのときはアムステルダムに3泊したのだが、この絵を観るためにわざわざ普通列車に乗ってデン・ハーグまで出掛けて行ったのだった。懐かしかった。実物は青が鮮やかだ。簡素な背景が少女の複雑な表情を引き立てる。いろいろと想像力を掻き立てられるミステリアスな絵だ。


http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/af/Vermeer_-_Diana_en_haar_nimfen.jpg/522px-Vermeer_-_Diana_en_haar_nimfen.jpg*2


フェルメール作品はもう1枚ある。世界に30数枚しかないフェルメールを、2枚も観てしまっていいんだろうか。『ディアナとニンフたち』。この絵を観るのは初めてだ。デン・ハーグに行ったとき、この絵は無情にも貸し出し中だったのだ。


この絵にはよく知られたエピソードがある。この作品は19世紀末までは、ニコラス・マースの作品として扱われており、マウリッツハイス美術館においても、フェルメールの作品として買われたものではなかった。しかしマースの署名が偽のものであることがわかり、その下からフェルメールの署名が現われたことから、この絵をめぐる事情がホットになる。また当初は画面右上に青空と雲が描かれていたが、その部分も後世に加筆されたものであることが判明した。最近の修復によって、空がなかった元々背景に戻されている。


フェルメールの作品には真贋論争がされている作品がいくつかあるが、『ディアナとニンフたち』もそうした作品のうちの一つだ。別の画家の作品であるという説も依然としてある。確かにフェルメールらしさが薄いように見える。しかしフェルメールの初期作品の物語画に近いと言われれば、それもそうだと思える。真実は歴史が明らかにしてくれるだろう。私は、願望も込めて、余計なことを考えず、フェルメールの作品として観賞した。


他にも、オランダの風景画。風俗画。静物画など、点数は多くはないが充実した構成だった。フランツ・ハルス。ルイスダール。ヤン・ステーン。ヴァン・ダイク。ブリューゲルルーベンス。中でもレンブラントは、複数枚あってこれもまたすごかった。史上最高の画家の一人であるレンブラントは、一枚あるだけでも価値があるのに、それが複数枚。これは一つの事件だ。しかもレンブラント工房の弟子による作品だけではなく、レンブラント自身による一線級の作品が複数枚あった。贅沢なラインナップだ。


また雰囲気づくりという点から言っても、全体的にマウリッツハイスの格調高くしかも寛いだ雰囲気を出すように壁の色や照明などに工夫がされていた。巨大美術館の特別展のようなスケール感はなかったが、高いレベルの展覧会だった。




折角、三宮まで来たので、写真を撮ったり、デパートでウィンドーショッピングをしたりして半日を過ごした。



最後は元町の『たちばな』で玉子焼き(明石焼き)を食べて、家に帰った。そして別のフェルメールの本をめくりつつ、いまも余韻に浸っている。


謎解き フェルメール (とんぼの本)

謎解き フェルメール (とんぼの本)


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*1:画像はwikipediaより

*2:画像はwikipediaより