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熊野三山の旅(1)


7月に休みをとって、家族で和歌山県の熊野方面に旅行してきた。目的地は熊野三山熊野三山とは、熊野本宮大社(本宮)、熊野速玉大社(新宮)、熊野那智大社那智)のことを指す。熊野古道も少し歩きつつ、熊野三山に参拝して、夜は美味しいものを食べる。一泊だったらすぐに帰ってこなければならないので、二泊する。そんな旅行の計画を立てた。


和歌山県には時々出かけていくが、遠くと言ってもせいぜい白浜か高野山までで、三重県寄りの側にはいままで行ったことがなかった。熊野、とりわけその中心である本宮は、「日本人の心のふるさと」と言われることもあって、そういう場所に行って心を洗われるような時間を過ごしてみたかった。


大阪から熊野へは、阪和自動車道南紀田辺インターで降りて国道311号線をひたすら東に向かうルートか、南阪和道路で葛城インターで降りて五條市を経由し、国道168号線をひたすら南下するルートが一般的だ。距離でいうと前者の方が1.4倍くらいになり、あっち側の熊野に行きたいのにまるでこっち側の白浜に行くようなそぶりを見せていることから、損をしているような感じになる。しかし、高速を走る場面が多いため、実際は30分以上短縮できる。


行く前に参拝の順序にも迷った。例えば伊勢神宮は「外宮→内宮」というように参拝の順番が決まっている。熊野はどうなのか。ネットで調べてみた。参拝の順序は、「熊野本宮大社」→「熊野速玉大社」→「熊野那智大社」の順が正しい、という説もあれば、とくに決まりはない、というものもあった。熊野速玉大社の近く、新宮の神倉神社から参拝するのが正しいとする説もあった。歴史的に歩かれてきた道はあるが、伊勢神宮ほど決まっていないというのが正しい説なのかもしれない。私は阪和自動車道南紀田辺インターのルートを選び、そのルートから言って必然的に、熊野本宮にまず向かうことになった。


熊野本宮大社


紀ノ川サービスエリアで少し休憩をしたが、3時間強で本宮が見えてきた。ここに来るまでは、南紀田辺インターで降りてしばらく走った後左折し、国道311号線を延々と走ってきた。国道311号線は整備された、走りやすい片側1車線の道だが、それを並行するように山の中を熊野古道が続いている。途中には車を置いておける施設があるので、歩こうと思えば、熊野古道を歩くこともできる。


本宮のあたりは随分整備され、近代化もされているが、雰囲気としては旧宿場町のようである。熊野の概要と歴史を勉強できる和歌山県世界遺産センターが本宮近くにある。



私はお寺でも神社でも、門をくぐる時、いつも興奮している。神社やお寺によって、流れる空気は全然違っている。それは行ってみなければわからない。有名なお寺や神社の写真はネットでも見ることができるが、はっきり言って、写真だけでは、ほとんどわからないのと一緒だ。行ってみるとわかる。匂い。匂いが違う。私は霊感が強い方ではないが、行ってみて、「この神社は好き」と思う瞬間がある。好きな神社、嫌いな神社、好きなお寺、嫌いなお寺がある。熊野本宮大社は「好き」の側の神社だった。



主祭神は家都美御子大神(けつみみこのおおかみ)である。熊野神社という名前の神社は全国に3000社以上あるが、その熊野神社の本宮がこちらである。


熊野本宮大社の社殿は、出雲大社のように大きいものではないが、原始的で、ゴツゴツとした、ただならぬ雰囲気を持っている。現在、社殿屋根葺き替えを終え、新鮮な姿を見せている。


■大斎原(おおゆのはら)



明治のころまで、熊野本宮大社熊野川の中州にあった。明治22年の洪水により、社殿の大部分を流され、現在の場所に移る。熊野本宮大社があったこの地は、現在、大斎原と呼ばれている。今では小さな祠が残るだけだが、かつてここに熊野本宮大社があった。その姿は現在よりもさらに大きかった。想像するだけでロマンである。



大斎原の入り口には、日本最大の鳥居が置かれている。日はすでに高く、暑い一日だった。真夏の太陽は容赦なく肌を焼いた。こんなに無防備に日焼けするのなんて、いつ以来だろうか。




大斎原周辺の風景は、日本の原風景と言われる。山々に囲まれ。澄んだ川。冷たい水。


大斎原は行ってみてよかった。どこか懐かしく、温かみのある風景に溢れていた。小学生の頃、真っ黒になってセミを追いかけた頃を思い出した。


◇  ◇  ◇


熊野本宮大社から、熊野速玉大社へは、車で大体1時間強。山の中を走っていくと、唐突に市街地に入りこんだ。そこが新宮市だった。


新宮市の中心部にあるのでそのまま行っても良かったが、かなり空腹だったので、昼食を摂ることにした。『餃子の王将』や『すき家』もあったが、土地のものを食べようということになった。


めはり寿司


めはり寿司は、和歌山の郷土料理である。目を見張るほど大きかったからだと言われるが、現在は、現代人が食べやすい大きさに改良されている。見た目はおにぎりで、海苔の代わりに高菜で酢飯を巻いた巻きずしである。具も高菜である。高菜はタレに付け込んであるので、しょうゆを付けずにそのまま食べられる。



定食のおでんが味噌味であったことがショックであった。美味しかったが、和歌山県は関西なのに、新宮は関西の文化圏ではないのだった。


■熊野速玉大社


昼食後に熊野速玉大社に向かう。熊野本宮大社が山の中にあったのと対照的に、熊野速玉大社は都市部にある。



熊野速玉大社は、境内に駐車場がある。駐車場から社殿はすぐ。鮮やかな朱色が印象的だ。



熊野速玉大神(くまのはやたまのおおかみ)と熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)が主祭神である。


太地町くじら浜公園・太地町立くじらの博物館


親が楽しいばかりでは子供に悪いので、宿に向かう前に、太地町くじら浜公園に行った。捕鯨の歴史を学べる博物館や、水族館がある複合施設で、しかも公営のためこういう海洋アミューズメント施設として考えると、入場料が1,300円と安い(子供700円)。



博物館。クジラの種類や生態。骨格標本。それと捕鯨の歴史。太地町では古来より捕鯨が行われてきた。しかし近年、自然保護団体からの抗議や妨害を受け、捕鯨のやり方も、クジラが苦しまないやり方に改めたことなどがわかった。そんなことを勉強しつつ。



親が神社でエキサイトしていたように、水族館では子供がエキサイト。展示の規模はそれほど多くはないが、就学前の子供にはこのくらいがちょうどよいのだろう。何周も見ることになった。イルカショーもあり、親もじゅうぶん楽しめた。


あとは、クジラのショーも行っていた。クジラとはいっても小型のクジラだったのだが、イルカ並にジャンプするクジラを私は初めて見た。


◇  ◇  ◇


宿は那智勝浦町に取った。高価な宿ではなかったが、食事が凄かった。



マグロ。今日水揚げされた生のマグロだ。濃厚でねっとりしている。冷凍マグロとは違った新鮮さだ。



熊野牛。これは松坂牛などのブランド牛にも劣らない。柔らかくて、肉自体に甘味がある。



伊勢エビ。伊勢エビがあると一気にテーブルが華やかになる。こんなに贅沢していいんだろうか。



焼き物。大アサリと焼き魚。そして素麺。冷たくて口直しになる。



天麩羅。野菜の天麩羅というのが嬉しい。



釜飯が出て、汁物が出る。そして最後にデザートが出て終了。


食べきれないくらいの量だが、全部平らげて、部屋に帰ると、九時過ぎには家族全員、就寝していた。大阪〜熊野本宮〜新宮〜太地町那智勝浦。振り返ってみて、よくもまあ一日でこれほど遊びまわったものだと自分でも驚いている。疲れるわけだ。


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