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ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第2番


ラフマニノフは全部で4曲のピアノ協奏曲を書いた。

どれも違った趣を持っており、すべてが魅力的な作品だが、どういうわけか2番だけが突出した人気を誇っている。


確かにこの曲は名曲だ。

美しいとしかいいようのない曲で、

スケールが非常に大きく、

ロマン溢れる曲想といい、

哀愁を湛えたメロディといい、

クラシックにこれから親しもうという人が聴くならば、

クラシックってこんなに美しいのか!

そう思ってしまうこと必至の曲だ。


第一楽章。静かなピアノの和音が次第に大きくなっていく。オーケストラの登場とともにピアノは伴奏となり、主題が提示される。
第二楽章の表現はとても美しい。ロマンティシズムの極致だ。

第三楽章のフィナーレには、私は冷静さを保つことができない。


時間からも空間からも自由になって、ただ、音楽だけが傍にある。

そんな不思議な感覚に陥る。


◇  ◇  ◇


名演・名盤に事欠かない名曲だけあって、どれをセレクトするか本当に迷う。


チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調/ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調/ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調

まずは、リヒテルが演奏するCD。このCDはこの曲に期待するもの全てを持っている。これは昔からかなり定評のあるCDだった。しかし最近の演奏と比べてみると、土着的というか、「ロシア的」な味付けを施されているように感じる。かなり大胆にテンポを落としたりして、まるで「節」をつくっているかのようだ。チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番も併録されていて、こちらも大変に聴き応えがある。


「ロシア的」?


それは何?


いったい?


それは、ドストエフスキーの小説に登場してきそうな、サンクトペテルブルクの風景だ。

罪と罰』の主人公、ラスコーリニコフが歩いた雑踏。

職業意欲の薄い警官が昼間からウォッカを飲んでいて、

売春婦が街頭に立ち、

ごみ箱が倒れ、そこらじゅうにごみが散らかっている、

そんな薄汚れた町を学生ラスコーリニコフが野心を抱えて歩いている、

そんなイメージだ(行ったことはない)。

リヒテルの演奏はそんな空気を想像させてくれる。


アシュケナージ盤。これは、アシュケナージの弾き振りだ。リヒテル盤に比べると新しいだけあって、ピアノ、オーケストラともに素晴らしい録音だ。リヒテル盤に比べると土着的な雰囲気は減っていてモダンな感じを受ける。日常的に聴きたいのはこのCDだ。



そしてツィマーマン盤。指揮は世界の小澤征爾氏がつとめる。これは最も新しい録音だけあって、もっとモダンな表現だ。録音がピアノ寄りのバランスになっているので、オーケストラに埋もれがちなピアノパートがとても聴きやすい。ツィマーマンは相変わらず襟を正したカチッとした演奏をしているし、透明感のある音色は健在だ。リヒテルがロシア的とすれば、この演奏はインターナショナルだ。ピアノをもっと聴きたいときには、このCDがいちばんふさわしい。


どの演奏が「ロシア的」かといわれれば、

リヒテルアシュケナージ>ツィマーマンとなる。


しかし、感動の度合いは、

リヒテルアシュケナージ=ツィマーマンだ。

甲乙つけがたい。



どれが好きかと聞かれても、

リヒテルアシュケナージ=ツィマーマン。


私はこの曲、3枚のCDをその日の気分にあわせて聴く。

時間からも空間からも自由になれる、

そんな感覚を求めて。


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