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ピアノ協奏曲第1&2番・ツィマーマン弾き振り


購入したころにはあまり聴かなかったが、最近よく聴いているCDがある。クリスティアン・ツィマーマンがウィーン・フィルを弾き振りしたベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番と2番のCDがそれだ。


ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番・第2番

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番・第2番


ピアニストのツィマーマンが「弾き振り」しているのには理由がある。


ツィマーマンは、1989年9月にレナード・バーンスタインの指揮でベートーヴェンのピアノ協奏曲第3〜5番を録音している(オーケストラはウィーン・フィル)。この企画は、全曲録音の予定でスタートしたため、1番と2番の録音がそれに続くと見られていた。それほど遠くないうちに両者のコンビによる全曲録音が完成するはずだった。しかし1990年にバーンスタインが急逝し、先行きは不透明なものとなる。この企画は中断を余儀なくされる。


この時代、他にもまだまだスター指揮者が存命したが、バーンスタインに代わる指揮者はいない。残る1番と2番で、ツィマーマンは指揮者を立てずに、自ら指揮もピアノ演奏もする、弾き振りで録音することで、偉大な指揮者への敬意を表した。1991年の録音である。


最初、このCDを聴かなかったのは、バーンスタインとのコンビでの3〜5番の録音があまりに素晴らしかったためだ。バーンスタインの音楽づくりの大河のようなスケールの大きさと、ツィマーマンの深遠なピアノの相性が思いのほか良くて、この曲のベストと言っても過言でない、傑出した演奏だった。


それに比べると1番と2番のCDでは悪くはないものの演奏も小粒で、印象が薄いように思えた。


ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番・第4番

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番・第4番

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」


しかしいま。聴けば聴くほどにこの録音での音楽づくりの丁寧さと精神の真摯さに打たれる。オーケストラは虚飾のない、きわめて実直な演奏だが、ウィーン・フィルなので自然体でも美しさがある。ピアノの音色は水晶のように透明感にあふれ、テクニックも申し分ない。バーンスタインのような巨大なスケール感はないかもしれないが、これはこれで素晴らしい演奏だと思えるようになった。偉大な指揮者を偲んで自ら弾き振りするということにまず心を打たれるが、それを差し引いても、よくまとまった演奏だと思う。バーンスタイン的な音楽づくりではないが、欠点の少ない、質の高い演奏である。


それほど気に入ってなかった演奏が突如としてお気に入りのCDになることがある。こういう楽しみがあるのでクラシック音楽のCD収集をなかなかやめられない。


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