大阪クラシック・大植英次×大阪フィル
今週、大阪では「大阪クラシック」というイベントが進行中である。
大阪に住んでいて「幸せだな〜」とつくづく思えるときがある。
大阪の新世界で「ソース二度漬け不可!」の串カツを食べるという話ではない。
指揮者の大植英次さんが音楽監督を務める大阪フィルの演奏に日常的に接することができるからだ。
「大阪クラシック」は、大阪フィルの大植英次音楽監督がプロデュースするクラシック音楽のイベントで、今週毎日毎時間、大阪の御堂筋を中心としたエリアのいろいろなところで演奏会が行われている(「大阪クラシック」について詳しくはコチラ)。
私も、金曜日にシンフォニーホールにベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」を聴きに行く予定だ。
大植英次さんのプロフィールについては詳しく書かないが(→大阪フィルのページ)、ミネソタ管のレベルを飛躍的に引き上げ、日本よりもまずアメリカで先に認められた指揮者だ。世代としては、佐渡裕さんや、大友直人さん、大野和士さんと同じ、1950年代後半から1960年代前半生まれの指揮者だ。
日本人であるということは別にして、私が最も好きな指揮者の中のひとりだ。
大植英次さんは昨年、歴史上、東洋人として初めて、バイロイト音楽祭で、ワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』を振った。これは小澤征爾もできなかったことだし、サイモン・ラトルもゲルギエフもまだ成し得ていない。
どのくらいすごいことだったかというと、
日本人プロ野球OBがニューヨークヤンキースの監督になってワールドシリーズに出場するようなものだ。
(逆にわかりづらかったらすみません。)
その評価については、新演出となった舞台の斬新さなどもあって、はっきりと定まっていないように思えるが、足跡として大きな一歩であったことは疑いようのないことだ。
指揮者・大植英次―バイロイト、ミネソタ、ハノーファー、大阪 四つの奇蹟
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彼の凄さは、何よりも常人離れしたバイタリティーにある。
音楽をするためだけに生まれてきたと思えるほどの真摯な姿勢。
精力的なコンサート活動。しかも指揮は基本的に暗譜でこなす。
学校訪問やクラシックの裾野を広げるための社会的な活動にも意欲的だ。
そして肝心のコンサートはというと、
ただひとこと、とてつもなく感動的なのだ。
指揮姿は、ジャンプもしないし大げさなパフォーマンスなどもないのだが、生み出される音楽は緻密でロマンティックで、しかも大らかだ。
今年、私は、彼の振るブルックナーの交響曲第7番と、リヒャルト・シュトラウスの「英雄の生涯」を聴いたが、いま思い出しても感動が蘇るほどの至福の体験だった。その時は、あまりの感動にどうやって家まで帰ったのか記憶が定かでない。
大阪フィルも、大植音楽監督の就任以来、どんどん音色を変え、故・朝比奈隆さんが指揮者を務めていた時代とはまた違った魅力を生んでいる。
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大植英次×大阪フィルのコンビは今シーズンの残り、下記のようなプログラムを予定している。
第402回定期演奏会 10月10日(火)・11日(水) 大植 英次
ブラームス/ヴァイオリン、チェロと管弦楽のための協奏曲 イ短調 作品102
(独奏:長原 幸太、秋津 智承)
チャイコフスキー/交響曲 第5番 ホ短調 作品64
第404回定期演奏会 12月7日(木)・8日(金) 大植 英次
ヴェルディ/レクイエム
独唱:澤畑 恵美(S)、秋葉 京子(A)、佐野 成宏(T)、ロバート・ハニーサッカー(B)
合唱:大阪フィルハーモニー合唱団
マーラーの交響曲第6番「悲劇的」が昨シーズンのプログラムにあったが、今シーズンは9番。早々にチケットを買っているのでいまから待ち遠しい。
大阪に住んでいる方はもちろんだが、それ以外の方も一泊旅行のメインプログラムに大阪フィルのコンサートを加えた一夜を過ごしてみては?