ラン・ラン×ピアノ協奏曲「黄河」(『ドラゴン・ソング』より)
中国人のクラシック音楽ピアニスト、ラン・ラン(Lang Lang,郎朗,1982年6月14日-)のニューアルバムが発売された。
ラン・ランは、ともに中国出身のピアニストであるユンディ・リの好敵手である(生まれも同年)。
ユンディ・リは、第14回ショパン国際ピアノコンクール優勝者であり、キムタク似(!?)のルックスもあって日本での人気ではやや上回っているように思えるが、ラン・ランも、カーネギーホールやBBCのプロムスへのデビュー以来、ゲルギエフやバレンボイムなど世界の一流指揮者との共演も重ねており、実力・人気ともに負けてはいない。
- アーティスト: V/c
- 出版社/メーカー: Dgg
- 発売日: 2006/09/29
- メディア: CD
- この商品を含むブログ (3件) を見る
新しいアルバムは『ドラゴン・ソング』。
ピアノ入りの中国の音楽集だ。
なかでも聴きどころはピアノ協奏曲「黄河」だろう。
20世紀初頭の作曲家・洗星海「黄河大合唱」に基づいて、文化大革命の時代に4人の中国人作曲家が、ピアノ協奏曲に編曲したと、ライナーノーツにはある。
東洋的なメロディが、西洋の楽器・西洋クラシックのピアノ協奏曲というジャンルのなかで再現されていく点に戸惑いを覚えるが、これは他では考えられないリスニング体験だ。
「黄河」をモチーフにした曲なので、黄河を想像して聴くと良いのだろうか。
オリエンタルなメロディだが、きちんとクラシックの文法に則っている。
イタリア・ドイツに端を発したクラシック音楽というローカルな音楽ジャンルが、例えばフィンランドではシベリウスを、デンマークではニールセンを、ソ連ではショスタコーヴィチを、アメリカではガーシュウィンを、日本では武満徹を生んだように、周辺の世界で様々な音楽と化学反応を起こしながら広がっていく様子を、この中国の音楽の中にも見た。
ラン・ランの素晴らしさは、ピアノ協奏曲ではベートーヴェン、ラフマニノフやチャイコフスキー、ソロではシューマンやショパンなど、クラシック音楽の王道を、極めてオーソドックスなスタイル、ただし抜群のテクニックで、表現してくれる点だ。
奇を衒ったところはないが、安心して聴くことのできるクラシック。
このCDでもその姿勢は変わらない。
ピアノ協奏曲「黄河」は、シューマンの交響曲第3番「ライン」と比べてみたい。
まだ十分に聴き込んではいないが、楽しめそうなCDだ。