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『ベートーヴェンの交響曲』金聖響、玉木正之・著


講談社現代新書の『ベートーヴェン交響曲』を読んだ。


本書は現役の指揮者、それも気鋭の金聖響さんによるベートーヴェン交響曲の解説・鑑賞ガイド本だ。


音楽評論家でスポーツライター玉木正之氏が、指揮者の金聖響さんに尋ねるという形式をとっているため共著となってはいるが、本編の交響曲の解説は全て金聖響さんによるものである。


ベートーヴェンの交響曲 (講談社現代新書)

ベートーヴェンの交響曲 (講談社現代新書)

≪目次≫

第1番ハ長調 作品21 「喜びにあふれた幕開け」
第2番ニ長調 作品36 「絶望を乗り越えた大傑作」
第3番変ホ長調 作品55 『英雄』「新時代を切り拓いた『英雄』」
第4番変ロ長調 作品60「素晴らしいリズム感と躍動感」
第5番ハ短調 作品67 「完璧に構築された究極の構造物」
第6番へ長調 作品68 『田園』「地上に舞い降りた天国」
第7番イ長調 作品92 「百人百様に感動した、狂乱の舞踏」
第8番へ長調 作品93 「ベートーヴェン本人が最も愛した楽曲」
第9番ニ短調作品 作品125『合唱付』「大きな悟りの境地が聴こえてくる」


目次にあるとおり、9曲の交響曲全てについて解説がされている。指揮者ならではの視点で実感をもって書かれている点が類書と異なっていて新鮮で面白く、下記に挙げたような点が特に興味を引いた。


ベートーヴェンは「旋律」よりも「リズム」の人だということ。旋律を積み重ねて、積み重ねて、積み重ねて、建築物のように強固な構造を目指している(その傑作が5番「運命」)。そして変奏の名手であること。


・5番「運命」の完成度の高さはもの凄くて、これ以上「直しようがない」完成度を誇る作品だ。また、冒頭の入り方(タタタターンの部分)が難しく、振るときに神経を使う、など指揮するうえでの苦労も。


・6番「田園」は、5番「運命」と対をなす作品である。標題交響曲としてロマン派の扉を開いた。


・2、4、8といった、偶数番の交響曲にも光が当てられている。例えば、2番はその後の3番「英雄」があまりにも巨大で偉大な作品であるため過小評価されているが、3番「英雄」にも負けない画期的な傑作だと言うこと。


ハイドンに代表される古典派交響曲の傑作としての4番。そして同じ系列ではあるがさらに深化した作品としての8番。この曲をベートーヴェンはこよなく愛していた。


ベートーヴェンの宗教観が色濃く表われた第九「合唱」。


などなど、1〜9番までの全ての交響曲について偏りなく平等に解説されている。解説の中には指揮者ならではの現場の話もあって面白い。


「文字によるベートーヴェン・チクルス(全曲演奏会)」といえるような新書だった。今度の週末は、このガイドを片手に、片っ端からベートーヴェン交響曲全集を聴いてみようと思った。


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