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ノリントンのハイドン・ロンドン交響曲集


年末から正月にかけて、しばらくずっと、ノリントンハイドンを聴いている。これが大変素晴らしい演奏で、繰り返し聴いても飽きない。



ノリントンは1970年代の後半に古楽器オーケストラ、ロンドン・クラシカル・プレイヤーという団体を設立し、古楽器演奏のブームの一翼を担った。1998年にシュトゥットガルト放送交響楽団の首席指揮者になると、高性能のモダンオーケストラに古楽器奏法を応用し、モーツァルトベートーヴェンといった古典派作曲派だけでなく、ブルックナーシューマンブラームスマーラーなどのロマン派へとレパートリーを拡大していった。その洗練された響きは新鮮で、センセーショナルだった。


中でも、ベートーヴェン交響曲全集は賛否あるもののかなりの評判となり、当時、一躍、クラシック音楽シーンの注目人物となったものだった。


Norrington Conducts Beethoven Complete Symphonies

Norrington Conducts Beethoven Complete Symphonies


そんなノリントンによるこのアルバムは2009年のハイドン・イヤー(没後200年)の締めくくりとして録音されたもので、ハイドン交響曲集としては、以前に紹介したアバド&ヨーロッパ室内管によるものと並ぶ質の高い演奏となっている(→『ハイドンの交響曲を聴く』)。CDは次のような構成のボックス・セットとなっている。

CD1
交響曲第93番ニ長調(Hob.I-93)
交響曲第97番ハ長調(Hob.I-97)
交響曲第101番ニ長調『時計』(Hob.I-101)
CD2
交響曲第94番ト長調『驚愕』(Hob.I-94)
交響曲第98番変ロ長調(Hob.I-98)
交響曲第102番変ロ長調(Hob.I-102)
CD3
交響曲第95番ハ短調(Hob.I-95)
交響曲第99番変ホ長調Hob.I-99 [21:47]
交響曲第103番変ホ長調『太鼓連打』(Hob.I-103)
CD4
交響曲第96番ニ長調『奇蹟』(Hob.I-96)
交響曲第100番ト長調『軍隊』(Hob.I-100)
交響曲第104番変ホ長調『ロンドン』(Hob.I-104)
 SWRシュトゥットガルト放送交響楽団
 サー・ロジャー・ノリントン (指揮)


もっとも驚きだったのは、ディスク2に収録されている、標題なしの98番、102番での熱演だ。是非一度聴いてみてほしい。


98番はとりとめのない、鬱蒼とした序奏で始まるが、中盤から美しいメロディの嵐で、全体を見渡すと均整がとれて、きれいにまとまる。良くできたオペラのアリアのような第二楽章、生命力が溢れる第三楽章もよい。第4楽章の仕掛けも面白い。何度も念押しするかのような変奏の連続と、大胆な転調に興奮する。素晴らしい。フィナーレの最後の最後に実演ではハイドン自ら弾いたと言われる鍵盤楽器が登場するのだが、ここではフォルテピアノの音がオルゴールみたいで、おまけをもらったみたいで嬉しかった。


102番は、熟達した交響曲作家の手腕が光る。モーツァルトのようなメロディの天才的な飛翔はないが、積み重ねられたフレーズが、一歩一歩進むごとに確固とした意味合いを持ってくるような、よくできたパズルのような作品だ。有名な曲ではないが、高いクオリティの作品である。ディズニーのアニメ映画の音楽ように愉快で可愛らしく幸福感に満ちた、フィナーレも聴きどころだ。


他の曲もどれも負けず劣らず素晴らしい演奏となっている。104番『ロンドン』は最後の交響曲にして最高傑作とも評価される作品。モーツァルトの『ジュピター』のように完結した世界を持つ作品。100番『軍隊』は煌びやかで、過去にこれほど「軍隊」らしかった演奏は他にはないだろう。101番『時計』は私が大好きな作品だ。期待は裏切られなかった。103番『太鼓連打』も豪勢である。


オーケストラは、この指揮者と共に音楽を奏でる喜びに溢れている。ポジティブな姿勢と明るく透明感のある響きは、昨今の闇をかき消すようだ。このスタイルは、洒落たユーモアと職人的で繊細な音楽作りを特徴とするハイドンにとてもふさわしいスタイルとなっている。


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