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小澤征爾・奇蹟のニューヨーク・ライブ


『奇蹟のニューヨーク・ライブ』と名づけられたこの演奏は 2010年12月14日に、ニューヨークのカーネギーホールで行われたライブである。指揮者の小澤征爾氏が癌を患い、1年半にも及ぶ休養を経て、久しぶりに登壇した演奏会の模様が収められている。


当時その様子はメディアでもかなり大きく取り上げられた。


奇蹟のニューヨーク・ライヴ ブラームス:交響曲第1番

奇蹟のニューヨーク・ライヴ ブラームス:交響曲第1番


収録されている曲はブラームス交響曲第1番。聴いてみて、まず感じたのはいままでの小澤さんの音楽づくりのスタイルがしっかりと踏襲されていたことだ。まるで全盛期を思い出させるような、スムーズでスタイリッシュな音楽づくりで、ブランクを感じさせない。小澤征爾という指揮者は、指揮者の天分に恵まれた、全身、センスの塊のような指揮者だと私は思っているが、この演奏にもその特徴が顕著にあらわれている。


サイトウキネン・オーケストラは各パートにソリスト級の奏者を揃えるだけあって恐ろしく巧い。アメリカの四大オケやヨーロッパの名門オーケストラと比べても遜色ない、ワールドクラスのオーケストラである。マエストロとの久しぶりの共演を喜び、興奮しているようでもある。


この演奏の中、特筆すべき点は、巧いオーケストラが指揮者と一体となって燃える点にある。第3楽章までも十分頑張ってはいるのだが、最終楽章に入ってから、ギアを上げたかのように集中力を増してくる。俄然、オケに力が入ってくる。終わってしまう時間を惜しむかのように一世一代の熱演を見せる。相当な燃焼度で、奇跡的なフィナーレを迎える。ただのスムーズな音楽ではなく、渾身の、魂の演奏となる。


ライブ録音でもあるし、確かに細部に粗はあるかもしれないが、その事を言ってはいけない。病気と戦いながら、音楽家として生きようとする姿。その姿グッとくる。私なら病気になったとわかったら、仕事はできない。自慢にならないが、まず最初に仕事からやめるだろう。しかし一流の音楽家は最後まで音楽家として生きようとする。気持ちが伝わってくる。心に訴えてくる演奏だ。


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