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『ピアノの森』完結!


ピアノの森』の最終巻・26巻が発売され、ついに完結を迎えた。


ピアノの森(26)<完> (モーニング KC)

ピアノの森(26)<完> (モーニング KC)

「森に捨てられたピアノをオモチャ代わりにして育った、主人公・一ノ瀬 海(イチノセ カイ)。彼はかつて天才ピアニストと呼ばれた阿字野壮介や偉大なピアニストの父を持つ雨宮修平と出会い、その才能を伸ばしてきた。

17歳となったカイはワルシャワで開催されるショパン・コンクールに臨む。5年に一度のコンクールの参加者には実力者が揃うが、カイは予備予選、1次審査、2次審査と通過し、ついにファイナルでの演奏に臨む。「森の端」を飛び出して、日本を飛び出して、広い海を越えて、世界へ、カイのピアノを響かせるときがやってきた。」『モーニング』誌の公式サイトより


ピアノの森』は、1998年に連載開始されたが、度々、休載し、隔週連載となった。途中、連載誌が変わったり、さらに長期の休載を挟んだりもした。2006年12月に連載が再開された後も、隔週連載から不定期連載になった。




私がこの作品を読み始めたのは2006年の再開後のことで、当時発売済みだった1巻から15巻まで、何日間かかけて、岡山県マンガ喫茶で一気に読んだ。ブログにもそのころ、1回書いた。その後、しばらく読まなくなって、kindle発売後に、電子書籍で続きを読んでいった。既刊分は1日か2日ですぐに追いついたので、続きを待つ日々がとても長かった。私は連載を追っておらず、コミックで楽しんでいたが、時々、気まぐれで『モーニング』詩を開くと、載っていないことの方が多かった。


そして連載開始から18年。コミックス発売。2015年の年末。さらに、ショパンコンクールが開催された年に完結するという劇的なおまけがついた。長かったが、待っていてよかった。


私は昨日、夜に電子書籍版をダウンロードして静かに読んだ。1ページ1ページをこんなに大事にめくったのは久しぶりのことだった。途中、これまで読んできた記憶が走馬灯のように思い出された。いじめを受けた雨宮。阿字野先生との出会い。強烈な才能を「規格外」として落選させられた、初めてのコンクール。燃えてしまった森のピアノ。青年となったカイが初めてコンクールで賞を獲得し、世間に知られた日。雨宮との再会。世界的指揮者セローとの出会い。ショパン国際ピアノコンクールへの参戦。ライバルであるパン・ウェイの熱演、そしてカイの演奏。この作品の名場面が自然に思い出された。


前巻で明らかになったショパンコンクールの結果は、予想を良い意味で裏切ってくれて良かったが、最終巻ではこれまで気掛かりだったことも解消され、伏線がすべて回収される。そしてコンクール後が描かれる。最後は涙なしに読めなかった。


思えば、この作品を読み始めた時、最初は、主人公のカイに共感して読んだものだったが、いつしか、先生である阿字野の方に共感して読むようになった。阿字野にとって、カイは息子でもない。母子家庭のカイを何とか世の中に出そうと、教師としてだけではなく、後見人として、阿字野は奔走する。人に対して、これほど関わることができるのだろうか。人を育てるということはこういうことなのかと重く感じながら読んできた。だから私は、主人公はカイでも、私は実際には、阿字野の物語だと思っていた。


しかし教え子はいつしか成長し、若い友となっていた。最後はしっかりと、阿字野とカイの物語だった。『ピアノの森』はきっと歴史に残る作品となる。最後、あのような結末で本当に良かった。