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マーラー「大地の歌」


共感できない人も多いかもしれないが、暑いときにマーラーは意外に合う。


うねるような旋律に背筋がゾクゾクする。逆に寒いときにマーラーを聴くと寂しくて凍えそうになる。


とくに「大地の歌」の第6楽章は、ひんやりとして夏にぴったりと思うのだ。


◇  ◇  ◇


「第九」を書いたらまもなく死ぬ。


過去の偉大な作曲家、例えば、ベートーヴェンブルックナーが第9交響曲を書いた後、10番目の交響曲を完成させずに死んだ「第九の凶兆」を恐れ、マーラーは9番目の交響曲に番号を与えず「大地の歌」という標題を与えた。


しかし、その後に書かれた交響曲が第9番と名付けられ、第10交響曲第1楽章のみを書いて未完のまま死んだことは、マーラーでさえ、この「第九」の不吉な運命から逃れられなかったことを示している。


大地の歌」は、テノールとアルトの独唱を伴う交響曲で、マーラーの歌曲と管弦楽作曲の集大成といえる曲だ。


歌詞は、李白、孟浩然、王維らの唐詩を自由に訳した(直訳・翻訳でない)、ハンス・ベートゲによるドイツ語訳中国詩集『シナの笛』がもとになっている。


どことなくオリエンタルな旋律には無常観があらわれている。仏教的な無常観だ。それは諦観ともとれる、浮き世に執心しない態度。マーラーの厭世的な気持ちや死生観や、別れの感情を色濃く反映する曲となっている。


この曲は、標題がついていることや歌曲入りということもあって、1番、4番、5番と並んで、マーラー交響曲がいまほど頻繁に演奏されていなかった頃から親しまれてきた。


第1楽章 大地(現世)の悲しみを歌う酒の歌

第2楽章 秋に寂しき者

第3楽章 青春について

第4楽章 美について

第5楽章 春に酔える者

第6楽章 告別


曲は上のように6つの部分で構成される。第5楽章までがそれぞれ5分程度と短いのに対し、最終楽章が30分弱という、独特な構成となっている。


◇  ◇  ◇


バーンスタイン

マーラー:大地の歌

マーラー:大地の歌

言わずと知れた名盤。アルト独唱の代わりにバリトン独唱が入る。バリトンは、フィッシャー=ディースカウだ。


ブーレーズ

マーラー:交響曲「大地の歌」

マーラー:交響曲「大地の歌」

叫びもしない、共感もしない、分析的なマーラー演奏の代表的な録音。丸みを帯びたウィーンフィルの音色が素晴らしい。それを操るのは裏も表も知り尽くした文人ブーレーズ。一言で言うと「枯れの極致」。枯山水の庭を思わせる、名工による作品だ。


テンシュテット

マーラー:交響曲「大地の歌」

マーラー:交響曲「大地の歌」

熱いマーラー演奏の代表的な録音。マーラーの、のたうちまわる感情のうねりを感じたいときはこれ。


■インバル盤

マーラー:交響曲「大地の歌」

マーラー:交響曲「大地の歌」

2008年から、ジェームズ・デプリーストに代わって東京都交響楽団の常任(プリンシパル・コンダクター)になる予定の、エリアフ・インバルによるマーラー。インバルのマーラーはどの曲も素晴らしい。職人的にまとめあげられたマーラーブーレーズほど冷たくなくて、テンシュテットほど熱くない。絶妙の立ち位置。


クレンペラー

マーラー:交響曲「大地の歌」

マーラー:交響曲「大地の歌」

私が一番好きなのはクレンペラー盤だ。マーラーの音楽というよりも、指揮者がスコアを解体して見せるようで、クレンペラー節が満載だ。噛んでみて吐いてしまうか、飲み込んでみるか。とにかく「濃い」一枚。


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