ロンドン旅行(4)〜テート・ブリテンとテート・モダン
一言で言うと今回のロンドンは「美術・芸術満喫」の旅行だった。
■テート・ブリテン
テート・ブリテンは、ターナー、コンスタブルといった巨匠をはじめとして、レノルズ、ゲインズバラ、ホガース、ウィリアム・ホルマン・ハント、ロセッティ、ホイッスラーなど、イギリス絵画の宝庫ともいえる美術館だ。ナショナルギャラリーや大英博物館と同様に入館は無料(特別展は有料)。
コレクションは現代アートにまで及び、アイルランド出身のフランシス・ベーコンについても一室が設けられて、点数は多くないが大作が展示されていた。
しかしそんな中でも、テート・ブリテンのターナーのコレクションは質量ともに世界最高で、水と光の幻想的な世界を思う存分堪能できた。
(上記、画像はテート・ブリテンのサイトより)
なかでも水彩画には心を動かされた。下段の二点が水彩画。これはヨーロッパ各地を旅したターナーのスケッチで、油彩以上にその瞬間の旅の興奮が感じられた。炸裂する色彩。優れたジャズのアドリブのように、瞬間的なインスピレーションが光っていると思った。
◇ ◇ ◇
テート・モダンは、地下鉄サザーク駅を降りて、テムズ川の対岸へ、徒歩専用のミレニアムブリッジを渡ったところにある。近代以降から現代美術まで網羅する美術館だ。テート・ブリテンと同じく、入場は無料。
■ミレニアムブリッジからテート・モダンを望む
もともとは発電所だった建物を活用しているだけあって、外観は工場風だ。そびえるエントツが特徴的だ。
■テムズ川
どんよりと曇った天気。雨は時々降ったが傘は要らない程度の小雨ですぐ止んだ。寒さは思っていたほどではなく、日本の冬よりは暖かく感じられた。イギリスはサハリンと同緯度なのにそれほど寒くない。北大西洋の暖流の影響だと中学校の時に地理で習ったっけ。
■テート・モダン屋外のオブジェ
これも展示品のひとつ。蜘蛛のようなオブジェは、ルイーズ・ブルジョワ(Louise Bourgeois)作の『ママン(Maman)』。2000年にテート・モダン内部のタービンホール(後述)に展示されていたものの二度目の展示で、2008年の1月20日まで屋外に展示されている。
タービンホールはテート・モダンの西側エントランスから入ってすぐのところの巨大な空間だ。広大なスペースが毎年、大規模な展示のために利用される。
■タービン・ホール
少々見えにくいが、ホールの床を切り裂くように亀裂が走る。これも展示品で、2008年の4月6日までの期間限定の作品。ドリス・サルセド(Doris Salcedo)による『シボレス(Shibboleth)』。
近くから撮影。意外に深い。近くに「子供が落ちないように」という注意書きの看板があった。
館内は全7レベル(層/階)に及び、レストランやカフェ、ショップがある。そのうちレベル3とレベル5が常設展に使用され、入場無料のエリア。展示は季節ごとに変わるらしいので、以前訪れたときに見た絵とは違っていたはずだ。
展示は時代別や国別、アーティスト別にではなく、例えば「歴史/記憶/社会」や「風景/物質/環境」といった具合に、テーマ別に構成されている。私が行った2007年末2008年初は「Material Gestures」、「Poetry and Dream」、「Idea and Object」、「States of Flux」に分かれていた。
ざっと挙げると、ピカソ。ジョルジュ・ブラック。マティス。フェルナン・レジェ。
シュルレアリスム。マックス・エルンスト。ジョアン・ミロ。ダリ。マグリット。デ・キリコ。
(パウル・クレー、『ワルプルギスの夜』。以下も画像は全てテート・モダンのサイトより)
ジョルジュ・ルオー。ノルデ。マックス・ベックマン。カンディンスキー。モンドリアン。
ロイ・リキテンシュタイン。アンディ・ウォーホル。マルセル・デュシャン。マーク・ロスコ。ゲルハルト・リヒター。ジャスパー・ジョーンズ。
(ゲルハルト・リヒター、『抽象絵画』)
現代美術に混じっていきなりモネの『睡蓮』が1枚だけある。すごいセンス。
そしてよく知らない現代アーティスト。
現代アートに詳しくない私でもじゅうぶん楽しめた。理解できない絵も多かったが、自分なりに納得できた絵もあった。
◇ ◇ ◇
最後に、テート・モダンでの鑑賞を終えて、特に感心したのは、難解な現代美術の美術館なのに、人出がとても多いことだ。
それはどういうことかというと、大げさに言えば、この場所が社会から閉ざされた空間ではないということだ。ロンドンの美術館の多くについていえることかもしれないが、美術館にありがちな閉鎖性がないのだ。
観光客や美術愛好家だけではなく、地元の若い人。遠足?子供たち。そしてカップルも多い(絶好のデートスポットらしい)。無料と言うことも手伝ってか、ただ語り合っていたり、議論していたり、座っていたり、カフェでまったりしていたりと、思い思いの時間を過ごしているようだ。その気になれば模写だってできるし、学芸員の解説付きのツアーに参加することだってできる。
こういう場所で過ごす時間というのは、とても豊かな時間だし、若いときの感性を育む、貴重なものになるだろう(子供のときにテレビゲームで育った私とひどい違いだ)。
開かれたミュージアムは文化を作り出す。治安の問題などがあるし、住んでみると不便もあるのかもしれないが、私にとってはロンドンはとても良い環境だと思えた。
ちなみに「開かれたミュージアムぶり」はウェブページにも現れていて、ネット上で館内と同じ展示が全て見られる(特別展は見られない)。
■セントポール大聖堂
来たときと同じ経路でホテルに帰る途中、セント・ポール大聖堂がライトアップされていた。幻想的でとても美しかった。
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