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ショスタコーヴィチの4番×チョン・ミュンフン


ショスタコーヴィチ交響曲の魅力は何かというと、屈折したものとか、鬱屈したものとか、「芸術的な感性を率直に爆発させていない部分」を噛み砕いていく楽しみがある点。暗号を解読するようでもあり、スルメを噛むようでもある。


これはショスタコーヴィチ全盛期がソ連という、自由がない特殊な時代・特殊な体制下にあったからだが、ごく普通の人間だったら、危険な作品を書かずに、簡単に政治体制に迎合してその中に組み込まれてしまったと思う。ヘタレでなかったというか、精神的に強靭な人だったのだ。


そんな、決してとっつきやすいとはいえないショスタコーヴィチ交響曲の中で、私は4番などはよく聴く方で、何も考えずにドライブする時などにCDをかけている。


爆発するオーケストラ(第1楽章冒頭と第3楽章冒頭はともに凄い迫力だ)。咽ぶような弱さ。アイロニー。パロディ。晦渋。雑音。不協和音。「声なき声の集合のような」傑作で、こうした音楽の圧倒的な存在感を耳にすると、気持ちが静かになってくるというか、不思議に心が澄んでくるのだ。


曲は長大な第1楽章と第3楽章が短い第2楽章を挟む、全3楽章構成になっており、マーラーからの影響も言われるなど、様々な工夫を凝らしたモダンな作品となっている。続く交響曲第5番が「暗」から「明」へと至り、勝利でフィナーレを迎える古典的な交響曲であるのと対照的である。


ショスタコーヴィチ:交響曲第4番

ショスタコーヴィチ:交響曲第4番


このCDは、第4番のみの収録で全3曲しか入っていないが、密度は濃い。情報量がものすごい。チョン・ミュンフンが生み出す、凄まじい音の洪水。音量は大体これくらいだろうなという予測のリミットをどんどん超えて、更新していく。オーケストラのあおり方、扇情的な音楽作りという点で、この人の右に出る指揮者はいないだろう。名人集団のフィラデルフィア管が、ヒステリックなまでに叫び、啼く。それでも崩れない。巧さも聴かせる。


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