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マリス・ヤンソンス&BRSOの交響曲全集


マリス・ヤンソンスバイエルン放送交響楽団(BRSO)によるブラームス交響曲全集を聴いた。このコンビによる全集としては、ベートーヴェン交響曲全集が屈指の演奏だったので、期待していた。ブラームスもそれに負けないくらいで、本当に素晴らしい出来栄えのものだった。


ブラームス:交響曲全集[3CDs]

ブラームス:交響曲全集[3CDs]


全集はCD3枚構成だ。全集盤だけでなく、単品でも販売されている。1番から4番まで、演奏の出来に甲乙つけられない。音色、響き、テンポ、テンション、どれも素晴らしくて、注文の付けどころがない。癖のない演奏で、スタンダードな名演として、万人に受け入れられる演奏だと思う。音質も素晴らしく、きちんとしたヘッドホンで聴けば、iPodでも、ホールの芳醇な音響が蘇る。バイエルン放送響のサウンドは繊細でかつ強靭、驚異的なレベルにまで高められており、オーケストラを聴く喜びに溢れている。


ブラームス:交響曲第1番&第4番

ブラームス:交響曲第1番&第4番


ブラームス:交響曲 第2番&第3番[SACD Hybrid]

ブラームス:交響曲 第2番&第3番[SACD Hybrid]


マリス・ヤンソンスの指揮者としての特徴を一言で言うなら、「オールマイティー」だ。何でもできる。すべての面で強い。レパートリーは広く、ベートーヴェンブラームスなどのドイツものもできるし、チャイコフスキーショスタコーヴィチは得意中の得意。マーラーもできるし、シベリウスもできる。ウィーン・フィルニューイヤーコンサートにも3回登場している。最近まで、世界的な二つのオーケストラ、ロイヤル・コンセルトヘボウ管と、バイエルン放送響の首席指揮者だった(ロイヤル・コンセルトヘボウは2015年で退任)。


ヤンソンスの音楽を聴いていつも感じるのは、ほとんどの演奏で、まず楽器の鳴りっぷりが素晴らしい、ということだ。コンディションの調整に成功したサッカーチームのゲームでの動きのように、調子の良さを感じる。あまりの音の良さに、演奏しているオーケストラのメンバーが嬉しくてたまらないのではないか。無理しているような窮屈さがなく、自然である。ヤンソンスのモチベーターとしての優秀さを物語るような、能動的なサウンドだ。バランス、響き、テンポは職人的に計算されている。奇を衒ったようなところもない。変な癖もない。そうした、音楽作りがベースにあって、魂もこもっている。ほとんどの演奏が「燃える」熱演となっている。


私がヤンソンスのCDを聴くときに密かに楽しみにしているのが、曲の中で複雑な部分や、凝ったリズム進行になっている部分を、注意深く聴くことだ。例えば、3番の第1楽章や4番の第3楽章などのように、素人の耳でも難しそうだと感じる部分を、どんな風に処理するのか、どんな風に進行していくのか、神経質な耳で聴こうとするのだが、その少し意地悪な聴き方は、裏切られる。どんな場面でもまったくよどみがなく、簡単な計算問題を解くように、涼しい顔でスイスイとこなしていくのだ。


オールマイティー」なヤンソンスベートーヴェン交響曲全集と同様、ブラームスも手放せない全集となっている。