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4つの即興曲「D899(op.90)」と「D935(op.142)」


シューベルト即興曲を聴いている。


「D899(op.90)」と「D935(op.142)」。


4つの即興曲には、「D899(op.90)」と「D935(op.142)」の2つがあって、シューベルトピアノ曲の中ではかなりポピュラーな曲として知られている。


どちらも死の前年に書かれた最晩年の作品ではあるが、一部のピアノソナタにあるような、「不吉で救いがないような暗さ」はなくて、端的に言って、叙情的で美しい作品となっている。


ともに4つの独立した曲から構成され、それぞれ個性的で、シューベルトらしい、魅力的な作品ばかり。


特に有名なのが、D899の第2番と4番だが、他の曲にもそれぞれファンがいる。


D899(op.90)は散文的。個々の楽曲の関連は少ない。その分、いろいろな表情が見えて楽しい。暗示的で沈痛な1番、若ささえ感じさせる情熱的な2番、淡い気持ちが散りばめられたような4番。


D935(op.142)は、ソナタ的なまとまりがあり、1つの連続作品としても楽しめる。変奏曲風の3番などは夢見心地のような気持ちよさがある。


◇  ◇  ◇


以下のCDはどれを選んでも間違いがない。甲乙つけがたいレベルで拮抗していて、順位がつけられない。


内田光子

シューベルト:即興曲集

シューベルト:即興曲集

シューベルトの闇」にフォーカスを合わせたような、深く、沈んだ演奏。輪郭はぼんやりとしているが強靭な芯のある音色。入れ込み具合が尋常ではない、魂の演奏。物憂げで、悩みに沈むシューベルトを聴きたいときに。


田部京子

シューベルト:即興曲集

シューベルト:即興曲集

至極丁寧で、容易には達し得ない境地にあると思わせる一枚。とくに個性的というわけではないが、強弱、テンポ、音色、非常に考え抜かれていて、最高峰の演奏だと思う。音質は立体的で、生の演奏を聴いているようでもある。


■ラドゥ・ルプー

シューベルト:4つの即興曲

シューベルト:4つの即興曲

この曲の名盤といえばこれだった。ルプーの真骨頂を聴くことができる。DECCAレーベル特有の、やや人工的で乾いた音質。リリシズムあふれる演奏は感動的ではあるが、音質は最近の高音質のものと比べると平面的でやや分が悪いように思う。


マリア・ジョアン・ピリス

シューベルト:即興曲集

シューベルト:即興曲集

軽さと閃きのある演奏。繊細な表現、彩り豊かな音が聴きどころ。丁寧な演奏であることは言うまでもないが、それ以上に、ピアニストのキレを感じさせる印象。


クリスティアン・ツィマーマン

シューベルト:4つの即興曲

シューベルト:4つの即興曲

カラッと晴れて乾燥した空気みたいで、必ずしもシューベルト的な演奏とは思わないが、全曲、ツィマーマンの美学に貫かれていて、最高クラスの演奏となっている。硬質なガラスを思わせる、磨き抜かれた演奏は健在。この人は、ショパンでもドビュッシーでもラヴェルでもブラームスでも、何を演奏してもその曲のイメージを塗り替え、歴史に残る名演にしてしまうところがまったくすごい。



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