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『 意味がなければスイングはない』村上春樹 (著)


まるでジェットコースターに乗っているかのようなめまぐるしさで月日が過ぎて行った。気がつくと3月。2月はブログを3回しか更新できなかった。


意味がなければスイングはない (文春文庫)

意味がなければスイングはない (文春文庫)


意味がなければスイングはない』(村上春樹・著/文春文庫)。


本書は、「一度音楽のことを、腰を据えてじっくり書いてみたいと前々から考えていた」という、村上春樹さんが大事な音楽について語るエッセイ集。文庫化されたのをきっかけに、買ってきて読んでいる。


村上春樹さんの小説は、高校生の時から読み続け、私はそれほどの村上ファンというわけではないが、『ノルウェイの森』は高校生の時だったし、大学の時にはいくつかをまとめて読んだし、『海辺のカフカ』は社会人になってからと、思い出すと、人生の様々な時期に読んできたものだ。きっとそんな人が多いから国民的作家といわれるのだろうな〜。


本書では、一つ一つのエッセイは割と長く、書き及ぶジャンルは、「洋ロック」から「ジャズ」、「シューベルト」、「スガシカオ」など多彩だ。


とくに、シューベルトピアノソナタ第17番二単調D850」。この話は面白かった。


シューベルトピアノソナタの特徴について書かれた個所を少し紹介すると、


「かなり長大な、ものによってはいくぶん意味の汲み取りにくい、そしてあまり努力が報われそうにない一群の作品」*1


「冗長さ」、「まとまりのなさ」、さらには「はた迷惑さ」。個人的にはすごくピッタリな表現だと思う。


そんなシューベルトピアノソナタには、「心の自由なばらけのようなものがある」ので、ある年代に差し掛かってから、愛好するようになったというエピソードが紹介されている。また、シューベルトに対して、ベートーヴェンの音楽の特徴を「近代的構築性(構築的近代性)」と表現し、モーツァルトを「完結的天上性(天上的完結性)」と名づける言語感覚も素晴らしい。


他のエッセイもすべて力作で、好きな音楽を通して語られているのはまさに村上春樹さん自身の姿である。珠玉の音楽エッセイ10篇。


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*1:「 」内、本文より引用。以下も同様