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小曽根真『ロード・トゥ・ショパン』


今年はショパン生誕200年のショパン・イヤーなので、コンピレーションを含む様々なショパン・アルバムが発売されているし、過去の名盤もリマスタリングされて再販売されたり、ショパンをメインプログラムとするリサイタルも開かれている。クラシック音楽の作曲家の中でもショパンは特に人気のある作曲家なので、人気のある作曲家のメモリアルイヤーというのはこんなにも盛り上がるのかという感じである。


ロード・トゥ・ショパン

ロード・トゥ・ショパン


そんな中でも、クラシック音楽も得意とするジャズ・ピアニストの小曽根真さんによるショパンを題材にしたこのアルバムは一風変わったアルバムで、独自のアプローチでショパンに迫った意欲的な作品となっている。


まず、アプローチはジャズ寄りである。アルバムの中にはクラシック音楽そのものという演奏もあるが、多くの曲でジャズのアプローチでやっている。メロディはショパンだが、聴き手が身体を揺らしたくなるような躍動的なリズム感は明らかにジャズ・ピアニストのものだ。

小曽根真『ロード・トゥ・ショパン

1. ドゥムカ(あるべきもなく)
2. マズルカ 第13番 イ短調 作品17の4
3. ワルツ 第6番 変ニ長調 ≪子犬≫
4. 前奏曲 第4番 ホ短調 作品28の4
5. 練習曲 第4番 嬰ハ短調 作品10の4
6. 前奏曲 第15番 変ニ長調 作品28の15からの即興
7. マズルカ 第24番 ハ長調 作品33の3からの即興
8. ワルツ 第7番 嬰ハ短調 作品64の2
9. マズルカ 第40番 ヘ短調 作品63の2
10. ポロネーズ 第3番 イ長調 作品40の1≪軍隊≫
11. 夜想曲 第2番 変ホ長調 作品9の2
12. マズルカ 第2番-ポーランド民謡≪クヤヴィアック≫


このアルバムの中で、小曽根真さんはテクニックのあるジャズ・ピアニストが単にショパンを録音したという程度にとどまらず、ショパンの楽曲を完全に自分の中で見事に料理し、消化している。聴きなれたメロディを大胆に変えていく。どんどん変えていく。確信に満ちている。3曲目「小犬のワルツ」は少しも「小犬のワルツ」らしい始まりでないのに、「小犬のワルツ」になる。8曲目「ワルツ第7番嬰ハ短調」のアドリブはたいへんにキレがあって素晴らしい。ジャズのスタンダードになったシャンソンの名曲『枯葉』のように、ジャズっぽい。「これショパンだよね」と周りに確かめたくなるが、ショパンである。ショパンピアノ曲がジャズのスタンダードであるかのような錯覚を抱く。


前奏曲第4番ホ短調の演奏では、グレゴアー・マレというハーモニカ奏者が参加し、主旋律をハーモニカが吹く。哀愁が漂っていて、すごくよい。うらぶれた感じが原曲以上で、荒れ果てた光景が目に浮かぶ。聴く価値がある名演だ。また、ボーカル入りの曲もある。最初の曲と最後の曲がボーカル入りで、透明感のある声を持つ、アナ・マリア・ヨペックというポーランド人の歌手が歌っている。


以上、やりたい放題な感じもあるのだが、聴き終わった後に抱く印象は、「ああ、ショパンを聴いた」という気持である。こういうショパンもとても興味深い。


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