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『寿司処 堺 弥助』


堺にある江戸前寿司の老舗『弥助』に行ってきた。『弥助』は、大正時代に大阪寿司の店として創業したが先代の時に江戸前に代わって、現在3代目。堺を代表する寿司屋の老舗である。


今日は大きな仕事が終わって、子供も義父母の家に預けることができたので久しぶりに夫婦での外食となった。


料亭のような入口は初めてだと大変躊躇する。こういう店って入るときにアウェーな気分を感じるのはなぜだろう。ずいぶん前には一度昼に行こうと思って近くまで行ったのだが、高級感が漂っていて敷居が高くて、気後れして入らず引き帰してきたことがあった。その後、予約をして一度行って、その時は料理の質、サービスの質、ともに一流なのにとてもリラックスして、楽しい時間を過ごすことができたのが印象的だった。


中はメインカウンター12席。プライベートカウンター6席。座敷2部屋。事前に禁煙を伝えておくとその部屋を完全禁煙にしてくれるのが嬉しい。


メニューはない。価格表もない。ガラスのネタケースもないので、こういう店にそれほど慣れていないので最初は不安だったのだが、職人さんたちは皆気さくなので、その日のおすすめを聞くとよいというのがわかった。コースもある。


「お客さん、2回目ですね。」一度行っただけなのによく覚えている。すごい。プロである。


好きなネタを好みで握ってもらうのが寿司屋の醍醐味だが、私は職人さんが熟考した順番で食べるのが好きなので、おまかせのコースを注文した。握りメインのコースは5770円から。以下に覚えている範囲で順番に挙げる。

・付きだし(青菜のゴマ和え)
スミイカ
・平目(昆布締め)
・大トロ
・タイラギ貝
・甘エビ
・煮ダコ
・玉子
・コハダ
・カイワレ
・マグロ赤身(漬け)
・炊き合わせ(湯葉、ふき、人参、ガンモ)
穴子
・ウニ
鉄火巻
・カッパ巻
・赤だし


どれもネタに一仕事が施してある。江戸前の仕事だ。寿司飯は人肌の温かさで口に入れると適度にほどける。私は随分前に東京の築地で寿司屋に行った時に人肌の温度の寿司飯を初めて食べた時に、「寿司のシャリって温かいんだ」と知ったことがあって、その当時は、シャリが冷たい宅配寿司や回転寿司しか知らなかったので、大変な驚きだった。それ以来、カウンターで握ってもらう寿司屋でも寿司飯が冷たい店もあるが、私は断然、「人肌」派だ。


関西の寿司屋は瀬戸内海に近いという土地柄もあって、白身がおいしい。今日の平目は素晴らしかった。獲れたての新鮮さを売りにする寿司屋も多いが、白身には適正な熟成期間というのがある。この平目は然るべき熟成期間を経た印象だった。コリコリで旨みたっぷりである。煮ダコの柔らかさ、溶ける穴子、絶品だった。そして、さっぱりとしたカイワレがアクセントになる。ウニは軍艦でなく握りで。これなんか、新鮮でないと崩れてしまうのでできない。


炊き合わせもしっかりしている。寿司屋には寿司は旨くても一品は全然ダメという店も多いが、かなりレベルが高い。京都の老舗料亭の水準である。


コースはここまで。寿司だけで12貫。巻き物も食べたので結構お腹もいっぱいになってきたのだが、もう少し入りそうだ。白身、光り物でお薦めを聞くと、鯛、河豚(フグ)、鯖(サバ)、小鯛(春子)があるということだった。

・鯛
・河豚(フグ)のちりにぎり
・小鯛(春子)


白身はやはりおいしい。鯛は感動的。河豚も感動的。小鯛は強めに締めている。光り物の魅力にあふれている。

イクラ
・煮ダコ
穴子


妻が好物のイクラを食べて、最後にコースに入っていた煮ダコと穴子をもう1貫ずつ食べて終了する。これだけ食べて二人で15,570円。高価ではあるが、このクオリティだ。同じものを仮に銀座で食べたら3倍はするだろう。


料理がおいしいことはもちろん、この店は雰囲気が最高だ。背筋が伸びるような凛とした清潔な和の空間で、気さくな職人さんと会話しながら、リラックスして楽しめる。高価ではあるが、下手な飲み屋でも5,000円くらいはすぐかかることを考えると、一流の職人さんがひとつひとつ自分たちのために握ってくれて、そんな空間で過ごす時間は、唯一無二のものだ。高価でもそれだけの価値があると思うのだ。


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